逃ゲテ。見ツケテ。
「いけない子だなぁ・・・勝手に人の家に入るなんて・・・」
「あの、だから・・・」
「悪い子には・・・」
男が手をこちらに伸ばしてきた。
このままでは本気で危ないと危機を覚える。
「江戸川君!」
「「Σ!」」
声のした方に振り向けば灰原達が庭に入っていた。
「この家の人ですか?ボールを飛ばしてしまって、勝手に入ってごめんなさい」
「「「ごめんなさい!」」」
「ほら、江戸川君」
「あ、・・あぁ・・・」
男に気を付けながら灰原達の元に急いで駆け寄る。
もう一度頭を下げてコナン達は家を出た。
「・・・チッ」
その場に男の舌打ちが響いた。
「家の人がいたんだね」
「ああ。けどよ、あの兄ちゃん?すっげぇデブだったよな?」
「それに、言っては悪いですがオタクっぽかったでしたね」
「・・・江戸川君?」
「え、な、なんだ?」
「どうしたの?さっきから黙りこんで?」
「まさかアイツに何かされたのか?」
「いや、何も・・。大丈夫だ」
そう言って安心させるように笑みを浮かべるコナンだが、灰原には無理に笑みを作ってるようにしか見えなかった。
現にコナンはボールをギュッと抱き締め顔が強ばっている。
何も起こらなければいいが・・・、と灰原はそう願った。
2日後
「バイバイ!コナン君!」
「じゃーな!」
「おう」
授業が終わり、蘭に買い物を頼まれている為少年探偵団と別れ1人商店街に向かうコナン。
買う物は1つだった為難なく済ませ、帰路に着こうとする。
そう、このまま何事も無く探偵事務所に着くだろうとこの時のコナンはそう思っていた。
角を曲がり、そのまま進んで行くと突然角から人が出てきた。
その人物を見た途端、疑問と言い様の無い恐怖がコナンを襲う。
「―――!!」
「見ぃつけた」
ニィィ、と歯を見せるように口の両端を上げて笑うのは一昨日の男。
「(何で、この男がここに・・!?てか、何でオレ、この男にビビってんだ・・!?)」
「一昨日の事はもういいんだ。今日は君に面白いモノを見せてあげようと思ってね。君にだけ、特別にね。お菓子やジュースもあるから、一緒に行こ」
典型的な誘い言葉に、いつものコナンなら呆れるか馬鹿にするのだが、そんな余裕が無かった。
ただ単に、この男は危ない、逃げなければいけないと頭の中でいっぱいだった。
「・・ぃ、行かない・・・。帰らなくちゃいけないから・・・」
声を振り絞って、1歩2歩と後ろに下がる。
「そんな事言わないでさ・・・さぁ」
男は気味の悪い笑みを浮かべたまま、一昨日と同じように手を伸ばしてきた。
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