逃ゲテ。見ツケテ。



そして迎えた土曜日。スケボーで走らせてメモに描かれた所へ向かう。

到着した場所は葬儀屋。


「いらっしゃい。道に迷わなかった?」

「うん。ここって、葬儀屋・・?」

「そう。ここが私の実家。そのせいか霊が視れるようになっちゃって。
まぁ私のおじいちゃんが神社の神主で、祓い屋もやってるから対処法など教えてもらったの」

「だから詳しかったんだ」

「うん。で、キミに会いたいって人達はもう到着してるよ。ビックリするよー」

「?」


女に通されて葬儀屋に入り、事務所らしき場所まで来ると3人の人物がいた。

1人は日本人の女性、もう1人は外国人の男性、そして


「――!!」


銀色の短髪で14、15歳ぐらいの少年。だが、その顔つきはジンに似ていた。

正確に言えばジンが幼くなったような顔つきだ。


「こちら、あの女の子のご遺族の方、父親と母親、そしてお兄さんよ」

「(だからあの子、ジンに抱きついたんだ。自分の兄に似ていたから・・・・・って!いくら取り憑かれていたとは言えオレ、なんて恥ずかしいことを・・!!)」

「こちら、お話していた江戸川コナン君です」

「キミが・・・ゆかりを・・・。本当に、本当にありがとぅ・・!」


母親が涙声でコナンにお礼を言う。

そんな母親に肩を寄せて抱きしめる父親。

そして兄が膝を曲げてコナンと目線を合わせる。


「妹を助けてくれて、本当にありがとう。数ヶ月前から妹が学校から帰ってこなくて、警察に捜索願を出したんだけどなかなか見つからなくて・・・。
なのに、ようやく見つかったと思ったら、あんな形で再会するなんて思ってなくて・・・!」


話していくうちに兄の目にも涙が浮かんでいた。

別人だとわかっていてもコナンとしては顔が知ってる人で、真逆の性格に困惑してしまう。


「犯人が許せなくて、殺してやりたかった・・・。
でも、彼女から、キミが妹を見つけてくれたこと、勇気を出して犯人に立ち向かって捕まえたこと、そして、妹がお礼を言って成仏したと聞いたら、不思議と殺意が消えたよ・・・。
本当に、本当にっ、妹を見つけてくれてありがとう・・!」


兄はコナンに深々と頭を下げた。




ご家族を見送り、コナンと女だけが残った。


「よく幽霊とか信じたね、あの家族」

「私が葬儀屋で育ったから幽霊が視れるようになったこととか、妹ちゃんの外見の特徴を伝えたら信じてくれたよ」

「そっか」

「そう言えば、あのキモデブ男の部屋に怪しい物が落ちてたでしょ?どうやらあの道具で生霊を出し、操ってたみたい」

「生霊ってそんな簡単に出せるものなの?」

「少なくともあたしの知ってる限りではそんな簡単に出せるものではないし、生霊とリンクするなんて初耳。さらにあの男が1からその道具を作り上げたとは思えない」

「そっか・・・。
(じゃあ、あの男にその道具の作り方を教えた人物がいたということか・・?)」

「まぁあんな事はそうそう起こるものでもないから忘れて。今日は時間を取ってくれてありがとね」

「こっちこそ、助けてくれてありがとう」

「あと、1つ訊きたいことがあるんだけどいいかな?」

「なぁに?」

「以前出会ったあの3人の男性・・・あの中にキミと付き合ってる人はいるのっ?」

「・・・・・・・」


目をやたら輝かせて意味不明な質問をしてきた女にコナンが呆れた目を向ける。


「いないし、そんな関係じゃないから」

「いやいやいや、あの3人のキミを見る目は愛しい人を見る目だったよ。もしかしたらあの3人はキミのことを・・・!」

「だからそんなんじゃないってば!あの3人に限ってボクみたいな子供に興味ないよ!」

「ええー?そうかなー?」

「(あの時はそんな余裕がなかったけど、コイツちょっと、いやかなり変だ)」

「じゃあさ、キミはどうなの?あの3人の中で誰が気になってるの?お姉さんにこっそり教えて」

「だからいない・・」


ふと、コナンの脳裏に(正常ではなかっとは言え)あの3人に抱きついていたことを思い出した。

途端、恥ずかしさのあまり顔が赤くなってしまう。


「え?誰?今誰を思い出してるの!?ねえ!!」

「お、思い出してねえっ!!!」

「お願い教えて!!お姉さんに癒やしを頂戴!!!」

「癒やしって何!?意味がわかんねーーー!!」


葬儀屋の前で騒ぐコナンと女。その騒ぎに駆けつけた女の母親が現れ、女だけを叱った。

コナンは帰路に着くが、二度とあんな体験や女に会いたくないと思ったそうだ。




終わり
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