逃ゲテ。見ツケテ。



「・・まさか、いるのか?」

「はい。皆さんは車の中にいて下さい。絶対にドアや窓を開けないで下さい」

「どうする気だ?」

「祓ってきます」

「出来るのか?」

「・・はい」


女はカバンを持って、車から降り、男の生き霊に近付く。


「見ツケタ。見ツケタ見ツケタ見ツケタ見ツケタ見ツケタ見ツケタ見ツケタ見ツケタ!
僕ノ可愛イ子供。ソノ瞳、ソノ顔、ソノ身体、タマラナイ・・。

欲シイナァ・・・欲シイナ欲シイナ欲シイナ欲シイ欲シイ欲シイ欲シイ欲シイ欲シイ欲シイ欲シイ欲シイ!!!アノ子ハ僕ノモノダ!!!」



興奮したりうっとりしたり、自分勝手な事を言う生霊の声が、コナンの耳に入る。

いるはずがないのに耳元に話し掛けられてるみたいで、自分の耳を強く塞ぐ。

赤井はコナンを守るようにギュッと抱き締め、前方に目を向け睨む。

ジンも安室も、視えないがそこにいるであろう男の生霊を睨む。


「何デ逃ゲルノカナ?何デ他ノ男ト一緒ニイルノカナ?
イケナイ子ダナァ。

・・オ仕置キガ、必要ダ」


バサァ

「ヒギャアアアアア!!!」


男の生霊が言い切る前に塩を撒かれ悲鳴を上げた。

その悲鳴にコナンはハッと顔を上げる。

怯えつつも車の前方、赤井達の向く方向に振り向く。


「・・・・・・」

「・・ボウヤ、今何が視える?」

「・・・あのお姉さんの近くに、男が顔を抑えて苦しんでる・・」


生霊が視えない赤井達は女の行動やコナンの言葉でどうなっているのか想像する。

すると女がこちらに指を指し何か叫びだした。


「おい、何を言ってるんだあの女?」

「さぁ・・?あ、また塩を撒いた」


「ヒギャアアアアア!!!」


女が塩を撒いた事で生霊がまた悲鳴を上げる。

そのうるささにコナンはバッと耳を塞ぐ。

男の生霊がだんだん怒りの表情となり、女に襲い掛かろうとする。


「! 危ない・・」


聞こえるはず無いが、叫ばずにいられなかった。

しかし女が3度目の塩を撒き、膝を付いて苦しみ出した事で杞憂となった。

女はカバンの中から札みたいな物を取り出すと男の生霊に貼り付けた。

さらに手首に数珠を嵌め、掌を突き出すようにして札を貼り付けた額を思いっきり殴った。


バチンッ

「ギャアアアアア!!!」


生霊は断末魔を上げ、消えた。

それにより空気が軽くなり、コナンは耳から手を離し全身の力を抜く。




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