旧·過去拍手文

《コンプレックスがデカイ奴は成す仕事もデカイ》



近藤を自室に運び、布団に横にさせる。

コナンと平次は現場であるトイレを調べていた。


「どうや工藤?何か見つかったか?」

「いや、何も。神楽ちゃんも近藤さん以外誰もここに入ってきた人はいないって言ってたし、出て行った人もいないって言ってたな」

「窓は開けっぱなしやけど誰かが入った形跡も出て行った形跡も見当たらんなぁ。
まさかホンマに幽霊の仕業なんか?」

「バーロー、んなわけねーだろ」

「まっ、そりゃそうやな。けどそれやったらどうやってこの場から立ち去ったんや?」

「オレもそれを考えてんだけど…」

プ~ン

「あーうっとおしい!なんでこんなに蚊がいっぱいおんねん!?」

「確かに多いな。ゲッ、刺された!」

「アカン、いったん引くか」

「あぁそうだな……Σ!」


コナンがバッと後ろに振り返る。だが何もなかった。


「ん?どないした?」

「今、誰かに見られたような気がしたが…気のせいか…」

「コ、コナンく~ん…」

「平次、おるんか?」


外から蘭と和葉が声をかけてきたので二人共出る事に。


「もー!勝手にどこかに行かないでよー!」

「幽霊に連れ去られたかと思うたやん!」

「アホ、幽霊なんておるわけないやろ」

「けど近藤さん、赤い着物の女ってうなされてるんよ!きっと幽霊の仕業やって!」


四人は近藤の自室に戻る事に。

近藤の周りに土方と沖田、銀時や新八に神楽が座っていた。

コナン達も近くに座る。

和葉の言う通り近藤は赤い着物の女と魘されていた。


「…これはアレだ。昔泣かした女の幻覚でも見たんだろ」

「近藤さんは女に泣かされても泣かしたことはねェ」

「(残念なのか優しいんだか…ι)」

「じゃあアレだ。オメーが昔泣かした女が嫌がらせしにきたんだ」

「そんなタチの悪い女を相手にした覚えはねェ」

「じゃあ、何?」

「しるか。ただ、この屋敷に得たいのしれねーもんがいるのは確かだ」

「…やっぱり幽霊ですか?」

「あ~?俺ェなァ幽霊なんて非科学的なモンは断固信じねェ。
ムー大陸はあると信じてるがな」


そう言いながら銀時は神楽の頭を撫でてる。


「なぁ平次もう帰ろうや!こんな状況じゃあ稽古なんて出来ないんやからここにおったって意味ないって!」

「まぁ確かに稽古は無理やな。
けど俺らはまだ帰らへんで。幽霊騒ぎを起こして面白がってる犯人のツラをこの目で拝むまではな」

「俺らって…まさかコナン君もここに残るの!?」

「うん」

「ダメよダメ!絶対ダメ!!呪い殺されちゃうかもしれないでしょ!!」

「蘭ちゃんの言う通りや!そんな取り返しのつかない事になったらどないすんねん!?」

「せやから幽霊や呪いなんてもんはないって事を証明するんや」

「平次ぃ…」


和葉と蘭の反対を押しきろうとする平次とコナン。

銀時は呆れ、帰ろうと立ち上がる。


「アホらし、付き合いきれねーや。やりたきゃ勝手にやってろガキ共。オイてめーら帰るぞ」

「銀さん…
なんですかコレ?」


だが銀時は新八と神楽の手を握っていた。


「なんだコラ、てめーらが恐いだろーと思って気ィつかってやってんだろーが」

「銀ちゃん手ェ汗ばんでて気持ち悪いアル」


銀時の行動に怪しむコナンや平次。

すると


「あっ、赤い着物の女!!」

ガシャン


沖田が指を指してそう言うと、銀時は押し入れに頭から突っ込んだ。


「…何やってんスか銀さん?」

「いや、あの、ムー大陸の入り口が…」

「旦那、アンタもしかして幽霊が…」

「マジかいな…」

「なんだよ?」

「土方さんコイツは…アレ?」

「あそこ」


沖田が振り向くがそこに土方の姿がなく、コナンの指さした方に目を向ける。

土方は頭から壺に突っ込んでいた。


「土方さん、何をやってるんですかィ」

「いや、あの、マヨネーズ王国の入り口が…」


銀時と土方の行動で察した新八・神楽・沖田・コナン・平次は冷たい目で見ると後ろに振り向く。


「待て待て待て!違う、コイツはそうかもしれんが俺は違うぞ!」

「ビビってんのはテメーだろ!俺はお前、ただ胎内回帰願望があるだけだ!!」

「それはそれでかっこ悪いよ」

「わかったわかった。ムー大陸でもマヨネーズ王国でもどこでもいけよクソが」

「「なんだ、そのさげすんだ目はァァ!!」」


銀時と土方を冷たい目で見ていたが、二人の後ろのあるものに気付き、固まってしまう。


「なんだオイ」

「驚かそうたってムダだぜ、同じ手は食うかよ。
……オイしつけーぞ」

「いや…」

「アンタらの後ろ…」

ガバッ ガシッ

「「へ?」」

「「「「きゃああああああ/ぎゃああああああ!!」」」」

「オッ…オイ!!」


蘭がコナンを抱き上げ、和葉が平次の手を掴むと新八達と共に部屋から走って出て行った。


「…ったく、手のこんだ嫌がらせを」

「これだからガキは…」

「「ひっかかるかってんだよ」」


銀時と土方はイタズラだと確信し、後ろを振り向いた。




そこには逆さまの状態で二人を見てる赤い着物を着た女がいた。


「「こっ、こんばんは~」」


一方走って逃げる新八達。


「みっみっみっ見ちゃった!ホントにいた!ホントにいた!」

「いややーーー!!アタシら呪い殺されてしまうんやーー!!」

「まだ死にたくないーー!!」

「待て待て!アレホンマに幽霊か!?あんなハッキリ見えるもんなのか!?」

「何言(ゆ)うとんの!?よくドラマなんかでオバケがハッキリ映っとるやんか!」

「アホ!!アレは演出や!!」

「ねぇ、あの二人置いてきちゃったけどよかったの!?」

「銀ちゃああん!!」

「奴らのことは忘れろィ、もうダメだ!」

ドォン

「「「!」」」


後ろを振り向いてると障子が吹き飛び、銀時と土方が全力疾走で逃げてるのが見えた。


「「うおおおおおおお!!」」

「きっ…切り抜けて来た!」

「ちょ、ちょっと待って!」

「しょってる!?女しょってるであの二人!!」


コナンと平次の指摘に新八達は走るスピードを早めた。

暫くして、女の存在に気付いた銀時と土方が悲鳴を上げた。

その悲鳴は物置倉庫に隠れてるコナン達の耳にも聞こえた。


「やられた。今度こそやられた」

「しめたぜ。これで、副長の座は俺のもんだィ」

「言ってる場合か!」

「ど、どうしよ…銀さんと土方さんが…」

「へ、平次…二人共やられてもうたんか…?」


涙目で心配する蘭と和葉をどうにか安心させようと言葉を選ぶ平次。


「まぁあの二人も腕が立つんやから、なんとか切り抜けたんとちゃうか?」

「だといいんだけど…」

「オイ、誰か明かり持ってねーかィ?
あっ!蚊とり線香あった」


倉庫の中は暗く、沖田は持っていた蚊取り線香に火を付けた。


「(いや、火を持ってるなら蚊取り線香じゃなくてそれで良くね?)」

「しかし何者(もん)やあの女…音もなく急に現れよったな…しかも逆さまで」


平次とコナンが女の正体を考えていると、沖田がとんでもない事を打ち明けた。


「実は前に、土方さんを亡き者にするため外法で妖魔を呼び出そうとしたことがあったんでィ。
ありゃあもしかしたらその時の…」

「お前なんちゅー方法で上司を殺そうとしとんねん!?」

「アンタどれだけ腹の中まっ黒なんですか!?」


沖田の発言とやり方に平次と新八がツッコム。

話を聞いた神楽が沖田に掴みかかった。


「元凶はお前アルか!おのれ銀ちゃんの敵!」

「コラ、喧嘩しちゃダメ!」

「ほら離れや二人共!」


沖田と神楽の喧嘩を蘭と和葉が止めようとする。

すると新八が何かの気配に気付き、ふと扉の方を見る。


扉の隙間からあの赤い着物の女が覗いていた。


「ぎゃああああああああああ!!」

「Σな、何…きゃああああああ!!」

「きゃああああああ!!」

新八の悲鳴に他のみんなも女の存在に気付く。

平次やコナンは何か武器はないか首を回していると新八は土下座をして女に許しを乞い始めた。


「でっ…でっでで出すぺらァどォォォ!スンマッセンとりあえずスンマッセンマジスンマッセン!」

「し、新八兄ちゃん落ち着いて…」

「てめーらも謝れバカヤロー!」

ゴシャ×2

「人間、心から頭さげればどんな奴にも心通じんだよ、バカヤロー!!」

「待て待て、その二人気絶しよっとるぞ」


新八は神楽と沖田の頭を掴み、土下座をさせようと頭を地面に叩きつけた。

あまりの強烈さに二人共気絶をした。

しかし必死なあまり新八は気付いてないし聞いてない。

そして新八につられてか蘭も和葉も謝り始めた。

そうこうしてる間に鍬を手にした平次が扉の方に振り向く。

が、すでに女の姿はなかった。


「き、消えよった…!」

「な…なんで?」

「幽霊やからに決まってるからや!」

「もうイヤァ~~!」

「ま…まさかホンマに幽霊なのか?
なぁ工ど…あれ?工…ボウズ?」

「コ、コナン君!?」


平次がコナンに声をかけようとするが、さっきまでいたコナンがいつの間にかいなくなっていた。


「ま…まさかコナン君…あの幽霊に連れて行かれてしまったんじゃ…」

「そ…そんな…」

「待て待て、あのボウズの事や、追いかけて行ったに違いない!
志村!和葉とその姉ちゃん頼むで!!」

「平次!!」


平次は鍬を手に持ち、物置倉庫から出て行った。


一方コナンは、物置倉庫から出て道場へと向かっていた。

コナンはあの時、女は沖田が持っていた蚊取り線香の煙が顔にかかりそうになった時すごく苦しむ顔をして逃げたのを見ていた。

蚊取り線香の煙がかかりそうになったぐらいであそこまで苦しむのはおかしいと気付いたコナンは、道場に着くと隊士達の首や胸を見ていく。


「やっぱり……この人も…この人も、この人も、蚊に刺された後にできる腫れがある。
…フッ、やっぱり幽霊なんかいなかったんだ。あの女の正体は多分…」

「何しやがんだテメェェェ!!」

ドゴッ


「Σ! 銀さん!?」


外から銀時の怒鳴り声と大きな音が聞こえ、コナンは急いで道場の外へ出て声のした方へ向かう。

庭に着くと銀時だけが立っていて土方と女は倒れていた。(女の方は気絶している)


「銀さん!無事だったんだね」

「よォコナン、他の奴等はどうした?」

「みんな隠れてるよ。
ボク、この女の人の正体に気付いて確認しに来たんだ」

「正体?」

「おい工ど…ボウズ!こんなとこにおったんか!」


鍬を肩に担いだ平次とも合流し、土方も頭を抑えながら体を起こした。


「イテテ…万事屋テメー!」

「まぁまぁ土方さん」

「あ?なんでお前らここにいんだ?」

「俺はボウズを探しに来たんや」

「つーかよー、このちっこいメガネがこの女の正体がわかったとか言ってんだけど」


銀時がダルそうに言って、コナンに視線が集中する。

しかしコナンはものともせず自分の推理を披露する。


「さっき道場で寝てる隊士さん達の体を見に行ったんだけど、みんな蚊に刺されたような腫れがあったよ。
そしてこの女の人は沖田さんが持っていた蚊とり線香の煙ですごく苦しそうな顔をしてボク達の目の前から逃げたんだ。
つまりこの人は、蚊の天人だと思うよ」


言い切るのと同時に、ニヤリと笑って見せた。

その表情は子供らしからぬもので、思わず銀時も土方も黙ってしまう。


「なるほどなぁ、蚊ァやったら近藤さんが襲われたトイレの窓から飛んで出入り出来るし、モスキート音出しても蚊と思うて不思議に思われへんっちゅーわけか」

「明日この人から聞いてみたら?」

「「…そ、そうですね」」


自分達はただただ悲鳴を上げるだけで女の正体を探ろうともせず、しかもその最中に喧嘩まがいな事をしていた事に何も言い返す事なく、すっかり子供の表情に戻ったコナンの案に銀時も土方も素直に賛成した。


翌日、女を木に逆さ吊りにして取り調べる。

女はコナンの言う通り蚊の天人であった。

女は最近不倫をしてる会社の上司との間に子供が出来てしまったらしく、しかし上司には家庭があるからこっそり産んで自分だけで育てていこうと決心するもそれなりに疲労が溜まる。

力をつけようと血を求めて彷徨っていたら男性がわんさかいる真選組屯所(エサ場)を見つけ、今回の騒動を起こしたそうだ。

女の話を聞いて怒る人物が二人。


「元はと言えば奥さんいるのに不倫したその上司が悪いやん!」

「本当よね、不倫なんてしなければこの人もこんな苦労をかけずに済んだのに」

「…アナタ達…ずいぶん怖がっていたけど、同情してくれるの?」

「当たり前やん!」

「同じ女として当然です!」

「…あ、ありがとぅ…」


和葉と蘭の言葉に女の目から涙が落ちた。

そしてコナンや平次、近藤を始め真選組隊士達は好きな女性(幼馴染み)には絶対に大切にしようと思い知らされた。




終わり
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