旧·過去拍手文



“モビーディッグ号”の少し広い甲板に、ある男が居た。


その男はそこに白くて丸いテーブルとイスを置き、ポットにお湯と紅茶の葉を入れて砂時計を逆さまにして暫く置いた。


その間カップの方にお湯を入れて暖めておく。


紅茶が出来るまでその男はイスに座り本を読み始めた。








「ねーねーマルコおじさーん」


「なんだよい」


「お腹すいた~」


「これが終わったらおやつ持ってきてやるから、もうちょっと待てよい」



マルコの部屋にて、マルコは書類整理をし、しんのすけは床でゴロゴロしている。



「コラ!床でゴロゴロするなよい。汚れるぞよい」


「ねーーお腹すいたお腹すいたお腹すいたーー!」


「もうちょっと待てよい」



さっきからこのやり取りの繰り返しだった。


マルコは早くこの書類整理を終わらせおやつを持ってきてしんのすけを黙らせゆっくりしようと書くペンを早めた。


そんなマルコの心情を知らず、しんのすけは我慢の限界で、マルコに気付かれないようそっと部屋を出た。



初めて一人で“モビーディッグ号”を歩いていくしんのすけ。


目指すはおやつがある食堂。



「ついでにマルコおじさんの分も持ってってあげよー。
そんでもって半分もらおー。

ん?くんくん・・・・いいにおい・・・」



歩いていくと良い香りがしてきた。


しんのすけは香りのする方に足を向ける。


すると少し広い甲板のところに出た。


そこには湯気が出ているポットやショートケーキが置いてある白くて丸いテーブルに一人の男がイスに座っていた。



「くんくん・・・ほほう、これまたいいにおいですなぁ」


「ん?お前は確か、しんのすけと言ったか?」


「ん?おじさん誰?なんでオラの名前知ってるの?」


「クルーたちが言っていたからな。お前、今じゃこの船の中じゃちょっと有名なんだぞ」


「いや~~それほどでも~~」



照れて後ろを向いて頭を掻くしんのすけにその男はフッと笑う。



「ところでおじさん誰?

立派なおひげ生やしてるけど」


「これはこれは、お褒めの言葉頂きありがとう」



その男は自分の髭を指で撫で付け、紳士的な言葉遣いでお礼を言う。



「申し遅れた、俺は白ひげ海賊団五番隊隊長、“花剣のビスタ”って言うんだ。よろしくな」




「“花瓶のひぐま”?」


「“花剣のビスタ”ッ!!」



はっ、イカンイカン、こんな小さな子供に怒鳴っては。この子もわざと間違えた訳じゃねぇんだ。(多分。)とビスタは頭を振って冷静になる。



「すまんしんのすけ。一人か?マルコはどうした?」


「マルコおじさんは部屋でお勉強してたよ」


「(勉強・・・?あぁ書類整理か)

それで、お前はなんでこんなところにいるんだ」


「そうそう、オラお腹すいちゃったてさ~。マルコおじさんはお勉強がなかなか終わらないからオラ一人でおやつを貰いに来たんだぞ」


「そうかそうか。

どうだ?俺と一緒にアフタヌーンティーを過ごさないか?」


「あふたー・・・何?」


「アフタヌーンティー。簡単に言えば午後の紅茶だ。紅茶を飲みながら一時を過ごすのも悪くないぞ。
なんなら俺のショートケーキを一口やるぞ」


「本当!だったら参加する!!」



イスをもう1つ用意し、更にクッションか何かをのせ、そこにしんのすけを座らせた。



「ほらフォークだ。一口だけだぞ、あとでお前はおやつ貰うんだから」


「ほーい」



しんのすけはフォークをケーキに刺し、そして



「あーーん」


パク



大口を開けてケーキ丸ごとをその大口に入れた。



「――――――――!!!?」



ビスタはしんのすけの行動に口をあんぐりと開けた。



「一口は一口だぞ」



モクモグと食べながらしんのすけは平然と答えた。



ここは怒るべきところなんだろうか納得すべきところなんだろうか呆れるべきところなんだろうか、とビスタは悩んだ。


それからようやく書類整理を終えたマルコがしんのすけを探しに甲板にやって来た。


そして悩んでるビスタをそのままにし、食堂へと向かいおやつを食べた。




終わり




後書き


ビスタは紳士的な人だと思います。(いきなり。)


今回はビスタ登場!


隊長の誰かのケーキを一口だと称して全部食べちゃうしんちゃんを書きたかったが為に書いちゃいました。



さてさて、次回は誰が出るのやら。
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