『かなめ...』

「どうしたの？シズク。突然病室に来たかと思えば、人のシーツで涙と鼻水拭いて」

『翼が、美咲に告白したって』

「...知ってるよ。本人が報告しに来てくれたから」

『私、あと何回こんな事やればいいのかなぁ...っ？
いつになったら翼を見てもドキドキしなくなって、どれだけ時間が経てば美咲と一緒にいるのを見ても胸が痛まなくなるの？』

「......」

『でも、でも...そうやって一個ずつ諦めるみたいにするのも、辛くてどうしたらいいか分かんないよ。
だってそうやって諦めていったら、この苦しい気持ちすら消えちゃうの？最初から無かったみたいに。私...私、まだこんなに翼の事』

「シズク。...いいよ。それ以上言わなくて。そうやって自分を追い詰めないで」

『う...っ、うぅー...っ』


かなめは優しいね、とシズクは言ったけど。
ただその言葉の先を聞きたくなかったから、さえぎっただけ。自分は卑怯だ。

もしも自分の体がこんな状態じゃなければ。
シズクの事を泣かせてばかりの奴なんか止めて、僕を選びなよと言えただろうか。

今までも、散々泣いただろうに。それでも枯れることのない涙が、せめて少しでも早く笑顔に変わりますように。
そう願いながら、僕は側にいることしか出来なかった。

彼女に触れてしまえば、これ以上自分の気持ちを隠せそうに無かったから。