涙色の空
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『はぁ...』
「桐ケ谷...」
クラスの女子達の前では毅然としていたが、流石に今回の事は堪えたかもしれない。
初めて見る桐ケ谷の悲しげな顔に、かける言葉が見つからなかった。
『日向君って一度見失うと、絶対見つけられないんだよなぁ...』
「は?」
『あーあ、ついてない!今さらトイレ戻ってもいるわけないだろうし』
ダメ元で今から戻ってみようかなーとぼやく、何処までも棗しか見えないその思考回路。流架は開いた口が塞がらなかった。
「棗バカ...」
『あはっ。そうかもね!じゃぁ私もう行くね。修羅場の仲裁入ってくれてありがとう。助かったよ』
思わず漏れた本音を、桐ケ谷は気にする様子が無かった。
実際気に止めていないのだろう。本人も認める程の、棗バカなのだから。
何事も無かったかのように立ち去る桐ケ谷だったが、何かを思い出したらしい。
ひらりと制服の裾を翻した。
『あ、そうそう。今の修羅場、いつから見てたかは知らないけどさ。勿論黙っててくれるんでしょう?』
ね、乃木君!...と。華やかで愛らしさすらある笑顔の桐ケ谷を見て、流架は思った。
女子怖い。
さっきのクラスの女子達もそうだったが、腹の中では何を考えているのか分かったものではない。
現に桐ケ谷から、その笑顔からは隠しきれない圧力のような、黒いものが滲み出ていた。
それは無意識なのか。はたまた意図的なのか。
結局桐ケ谷桜という人間は、一体何者なのか。謎が更に深まってしまった結果に終わってしまった。
まさしく骨折り損。そんな言葉が頭を過り、流架はため息を吐いた。
ふと、桜の花びらが目の前を過り顔を上げる。
桜の木は、既に緑の芽を所々で芽吹かせている。春が、終わろうとしていた。