改造計画番外編
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(時期不明)
ピチョンと滴り落ちる水音に、ハッとして目が覚めました。
...目が覚めた?私、眠ってたんでしたっけか。思い出せない。
まだぼんやりする頭で辺りを見回すと、何故か真っ暗です。夜...とは、違うような。だって月明かりだとか、都会でも微かに見える星空すら何も見えないから。
異様な雰囲気に身を固くすると、何かをギュッと握りしめている感覚がしました。いつの間にか、何かを持っていたようです。
視線をそれに落としてみれば、暗闇の中で金属製の物がキラリと鈍く光りました。...刃、だ。
明かりは何もない筈なのに。そこから滴り落ちる色がとても鮮やかに見えたのです。これは...赤い、
「お前が殺した」
耳が痛くなる程に静かで、何の気配も無かったのに。真後ろから、全身が粟立つ程の冷たい声が静かに。けれども私の心には大きく響きました。
途端に胃から何か込み上げてきて、ぐっと苦しくなって...その上寒くもないのに、壊れたおもちゃみたいに体がガタガタと震え出して...止まらない。
「お前が殺した」
『ち...っ、違う...っ』
「お前が」
『違う...!』
逃げ出すことも、振り返る勇気もなく、その場に立ちすくんでいると。後ろから刺すように冷たい指先が伸びてきて、うつ向いていた視線を前に戻してきた。
その先には、さっきはいなかった筈の何かがあった。
ソレはうつ伏せになっていて、腹部からあり得ない程の出血をしていて...とても大きな、赤い、水溜まりをつくっていた。
『あ...あ...っ!』
「お前が殺したんだ」
『嫌だ...っ』
「この...」
『止めて...!』
「シ ニ ガ ミ」
『私じゃない!!』
「...早瀬さん?」
大声を上げたのと同時に、ガタンと大きな音が聞こえた気がします。
ふと後ろに視線を向けると、見事にひっくり返った椅子。前へと向き直れば、そこにいたのは不思議そうな顔をした心読み君。
そして辺りを見回すと、ここは寮の談話室であるのが確認出来ました。
どうやらうたた寝をしてしまったようなのですが...問題はそこではなくて。
「大丈夫?」
『え、と...』
あらん限りの大声を上げてしまったせいで、変に注目を浴びてしまってる上に...どうしてくれましょう。この何とも言えない微妙な空気。
『...しくじりました。寝ぼけてたとはいえ...。佐倉さんが楽しみにとっておいたホワロンを、こっそりつまみ食いしたのを自白する羽目になるだなんて...っ』
「嘘やろ由香ちゃん!?」
「...全く。寝ぼけ過ぎでしょー早瀬さん」
いえ、真犯人はお腹を空かせた今井さんだったりするのですが。それを明かす機会は今後ないでしょうね。
佐倉さんのノリの良いツッコミのおかげで、いつもの空気に戻ってくれた事の方が重要ですから。いやぁ。今だけはその性格に感謝です。普通に失礼?うん。知ってる。
心読み君も、苦し紛れの私の嘘に乗っかってきてくれましたし。
とりあえず、良かった。
「ウチ...っ。ウチ、お小遣い貯めて、それでやっと買って楽しみにしてたのに~っ!」
「アンタの場合無駄遣いし過ぎなのよ...」
「大食らいの蛍に言われた無いわー!!」
「それにしても、魔が差したのかしら。ねぇ?早瀬さん?」
『う...っ、ま、まぁ、そ、ですね...。あ、佐倉さん。食べちゃったからには、ちゃんと買い直すんで...っ』
「ホンマ!?」
『ホンマですホンマ。あ。ちょ、ちょっと、私、お手洗いに...っ!』
私が佐倉さんのお菓子をつまみ食いした事が嘘なのは、真犯人の今井さんにはお見通しの筈なのですが。
どうして黙ってくれているのでしょうか。食べられた恨みを買って出てくれて幸いとでも思ったのでしょうか。
それとも、貸しが一つ出来てやっぱりこれ幸いだと...。
うん。どっちにしろ、怖いですね。
とにかく談話室を出て、一人になれる何処かへ退散したいです。
...まだ震えが止まらないのは、上手く隠せたのでしょうか。
「......」
「追いかけないのかしら?心読み君」
「今追いかけて問い詰めても、さっきみたいな適当な嘘で逃げられちゃうからなー。逃げ道が無くなる位に周りを固めてから攻めようかと思ってー」
「悪どいわね」
「今井さんに言われたく無いかなー?...全く。早瀬さんて、馬鹿だなぁ。何かあったなら言えばいいのにさ」
「蜜柑とはまた違った種類の馬鹿さ加減ね、あれは」
「あぁ...確かに。佐倉さんは何でもうっかり口を滑らせる感じの、真逆なタイプ?」
「そうね」
「よく分からんけど、とりあえずウチの目の前でウチをけなすの止めてくれへん!?泣くで!」
一人になりたい時に限って、どうにも視界に誰かがいるのが入るものだから困ったものです。
時間帯が放課後なものですから、そりゃぁ廊下でうっかり井戸端会議のように話し込んだりする時もあるんでしょうけど。
勝手ながら、今はご遠慮願いたいのですが。
ヤバいかも、です。夢見が悪かった上に、急に動いたもんですから。体がふらつく...。
『...え?あれ...』
「平気か」
『日向、君?』
「他に誰だっつーんだよ」
ヤバいと感じた時にはもう手遅れで、体が後ろへと倒れてひっくり返るかと思ったら。
多分日向君が受け止めてくれました。何で多分かって。
ぶつかった相手に喧嘩を売るんでなく、心配するとか。実は良く似た偽物なんじゃ...。
「燃やすか」
『アナタ普通に恐いですよ!読心術でも使えるんですか!?』
「チッ...」
『その上舌打ち!まごうことなき本物ですね。本日も清々しい程の通常運転です!』
「あぁ?」
『すみませんでした』
貧血起こしかけた割には、意外にもおちゃらけた類いの会話が出来るようです。私。
思ったよりも大丈夫かもしれな...。
『え』
「何だよ」
『支えていただいているのを離すどころか、あの、何で私は更に捕獲されているのでしょうか...』
「うるせぇ。黙って抱かれてろ」
『いっ、異議あり!その言い方は、あらぬ誤解を生んで被害こうむるので(主に自分に)止めていただきたいです!』
「うるせぇって言ってるんだよ、ゾンビ野郎」
『私、まさかの人でなし扱い!?むぎゅ...っ』
「何度も言わねぇ。大人しくしてろ。体ガタガタさせながらアホな事ばっか言ってんじゃねぇよ」
それは日向君が無駄に怖いからじゃぁ...という言い訳は、ちょっと通りそうにもありません。
いえ、むしろ言ったら本当に燃やされそうなので口に出すわけありませんけど。
ゾンビと例える程の顔色をしているのであれば、体調不良だと解釈するのが普通ですからね。
人ではない例えをしたのは、きっとそういう事ですよね?はい。絶対に。私はそう信じてますよ...日向君。
「由香」
『はい?...えっ!?あ、はい!』
「テメー面倒くさいんだよ」
『...はい?』
日向君に名前呼びされて地味に驚いた次の瞬間、何故かけなされました。
介抱していただける優しさを垣間見たかと思えば、暴言吐かれるとか。
今更彼の気まぐれには驚きやしませんが。もう、本当どっち。
「事あるごとに、いちいちぶっ倒れるな。一人で何とか出来ねぇなら、最初から言え」
『私、そんなに言う程倒れて...』
「この頭を締めれば思い出すか」
『めちゃめちゃぶっ倒れてますね、私』
「別に全部を吐けとは言わねーよ。ただ...こうしてるだけでも」
そう言って、ぎゅっと腕の力がこもったのが伝わりました。
今現在の私こと早瀬由香。その腕にちょうど頭がすっぽりと回されて、日向君の胸元に押し付けられている姿勢なのですが。
位置的に、規則的な心臓の音が良く聞こえて来る上に...ぬくいです。
冷や汗も出たせいで、思ったよりも体が冷えてたようですね。
人肌に触れて、規則正しい音を聞いていると、次第に震えが収まるのを感じました。
「違うだろ」
『...はい。あの、ところで...』
「何だよ」
『あの、何故に頭をそんなにポンポンするんでしょうか...?世話のかかる子供的な...?』
「しつけのなってねぇ動物的だな」
『私の存在って、どうあっても人外なんですね...!』
燃えカスだったり、ゾンビだったり。本当にろくでもないですね。
そのくせ抱きしめる腕とか、頭を撫でる手は優しいものだから。憎まれ口(と、くくっていいかは謎だけど)を叩きつつも、全身で守られてるような感じがして、否応なしに安心してしまいます。
ここは、人目を気にする所な筈なのですが。何だかどっと疲れが来てそこまで考えられそうもないです。
まぶたがしょぼしょぼと降りてくるのは分かっていても...ちょっと、逆らえそうにありません。
『ひうが、くん...ありが...』
「...?おい」
『...ぐぅ』
「話してる途中で寝るか、普通...。どんだけ気ぃ張ってたんだよ」
『むにぃ...』
「バカ由香。...あんま、ヒヤヒヤさせんな」
後ろにひっくり返りそうな所を日向君に助けてもらったのって、偶然じゃ無い気がします。
談話室での私の様子を見て、わざわざ着いてきてくれたんじゃないでしょうか。後ろから。
普段は怖いけど、何だかんだいって優しいんですよね。今みたいに。
だからお礼を言いたかったんですけど、ちゃんと最後まで伝えられたんでしょうか。
今度は。夢も見ないほど、深く眠れそうです...。
そしてこの時の私は、知るよしもなかったのです。
次に目覚めた場所が、日向君のベッドの上で。大絶叫した後に一騒動が待ち構えていることを...。
何で、なんでこう、和やかなオチで終われないんですかコンチキショー!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
早瀬さんの後日談(プチ捕捉)
よくよく考えてみれば、日向君が私なんかの部屋の場所を知ってる訳ありませんでした。
でも、でもさぁ...っ。だからって、自分の部屋へ連れ込むとか。後の展開がどうなるか、もう少し考え(長くなりそうな為、割愛させていただきました)
ピチョンと滴り落ちる水音に、ハッとして目が覚めました。
...目が覚めた?私、眠ってたんでしたっけか。思い出せない。
まだぼんやりする頭で辺りを見回すと、何故か真っ暗です。夜...とは、違うような。だって月明かりだとか、都会でも微かに見える星空すら何も見えないから。
異様な雰囲気に身を固くすると、何かをギュッと握りしめている感覚がしました。いつの間にか、何かを持っていたようです。
視線をそれに落としてみれば、暗闇の中で金属製の物がキラリと鈍く光りました。...刃、だ。
明かりは何もない筈なのに。そこから滴り落ちる色がとても鮮やかに見えたのです。これは...赤い、
「お前が殺した」
耳が痛くなる程に静かで、何の気配も無かったのに。真後ろから、全身が粟立つ程の冷たい声が静かに。けれども私の心には大きく響きました。
途端に胃から何か込み上げてきて、ぐっと苦しくなって...その上寒くもないのに、壊れたおもちゃみたいに体がガタガタと震え出して...止まらない。
「お前が殺した」
『ち...っ、違う...っ』
「お前が」
『違う...!』
逃げ出すことも、振り返る勇気もなく、その場に立ちすくんでいると。後ろから刺すように冷たい指先が伸びてきて、うつ向いていた視線を前に戻してきた。
その先には、さっきはいなかった筈の何かがあった。
ソレはうつ伏せになっていて、腹部からあり得ない程の出血をしていて...とても大きな、赤い、水溜まりをつくっていた。
『あ...あ...っ!』
「お前が殺したんだ」
『嫌だ...っ』
「この...」
『止めて...!』
「シ ニ ガ ミ」
*
『私じゃない!!』
「...早瀬さん?」
大声を上げたのと同時に、ガタンと大きな音が聞こえた気がします。
ふと後ろに視線を向けると、見事にひっくり返った椅子。前へと向き直れば、そこにいたのは不思議そうな顔をした心読み君。
そして辺りを見回すと、ここは寮の談話室であるのが確認出来ました。
どうやらうたた寝をしてしまったようなのですが...問題はそこではなくて。
「大丈夫?」
『え、と...』
あらん限りの大声を上げてしまったせいで、変に注目を浴びてしまってる上に...どうしてくれましょう。この何とも言えない微妙な空気。
『...しくじりました。寝ぼけてたとはいえ...。佐倉さんが楽しみにとっておいたホワロンを、こっそりつまみ食いしたのを自白する羽目になるだなんて...っ』
「嘘やろ由香ちゃん!?」
「...全く。寝ぼけ過ぎでしょー早瀬さん」
いえ、真犯人はお腹を空かせた今井さんだったりするのですが。それを明かす機会は今後ないでしょうね。
佐倉さんのノリの良いツッコミのおかげで、いつもの空気に戻ってくれた事の方が重要ですから。いやぁ。今だけはその性格に感謝です。普通に失礼?うん。知ってる。
心読み君も、苦し紛れの私の嘘に乗っかってきてくれましたし。
とりあえず、良かった。
「ウチ...っ。ウチ、お小遣い貯めて、それでやっと買って楽しみにしてたのに~っ!」
「アンタの場合無駄遣いし過ぎなのよ...」
「大食らいの蛍に言われた無いわー!!」
「それにしても、魔が差したのかしら。ねぇ?早瀬さん?」
『う...っ、ま、まぁ、そ、ですね...。あ、佐倉さん。食べちゃったからには、ちゃんと買い直すんで...っ』
「ホンマ!?」
『ホンマですホンマ。あ。ちょ、ちょっと、私、お手洗いに...っ!』
私が佐倉さんのお菓子をつまみ食いした事が嘘なのは、真犯人の今井さんにはお見通しの筈なのですが。
どうして黙ってくれているのでしょうか。食べられた恨みを買って出てくれて幸いとでも思ったのでしょうか。
それとも、貸しが一つ出来てやっぱりこれ幸いだと...。
うん。どっちにしろ、怖いですね。
とにかく談話室を出て、一人になれる何処かへ退散したいです。
...まだ震えが止まらないのは、上手く隠せたのでしょうか。
「......」
「追いかけないのかしら?心読み君」
「今追いかけて問い詰めても、さっきみたいな適当な嘘で逃げられちゃうからなー。逃げ道が無くなる位に周りを固めてから攻めようかと思ってー」
「悪どいわね」
「今井さんに言われたく無いかなー?...全く。早瀬さんて、馬鹿だなぁ。何かあったなら言えばいいのにさ」
「蜜柑とはまた違った種類の馬鹿さ加減ね、あれは」
「あぁ...確かに。佐倉さんは何でもうっかり口を滑らせる感じの、真逆なタイプ?」
「そうね」
「よく分からんけど、とりあえずウチの目の前でウチをけなすの止めてくれへん!?泣くで!」
*
一人になりたい時に限って、どうにも視界に誰かがいるのが入るものだから困ったものです。
時間帯が放課後なものですから、そりゃぁ廊下でうっかり井戸端会議のように話し込んだりする時もあるんでしょうけど。
勝手ながら、今はご遠慮願いたいのですが。
ヤバいかも、です。夢見が悪かった上に、急に動いたもんですから。体がふらつく...。
『...え?あれ...』
「平気か」
『日向、君?』
「他に誰だっつーんだよ」
ヤバいと感じた時にはもう手遅れで、体が後ろへと倒れてひっくり返るかと思ったら。
多分日向君が受け止めてくれました。何で多分かって。
ぶつかった相手に喧嘩を売るんでなく、心配するとか。実は良く似た偽物なんじゃ...。
「燃やすか」
『アナタ普通に恐いですよ!読心術でも使えるんですか!?』
「チッ...」
『その上舌打ち!まごうことなき本物ですね。本日も清々しい程の通常運転です!』
「あぁ?」
『すみませんでした』
貧血起こしかけた割には、意外にもおちゃらけた類いの会話が出来るようです。私。
思ったよりも大丈夫かもしれな...。
『え』
「何だよ」
『支えていただいているのを離すどころか、あの、何で私は更に捕獲されているのでしょうか...』
「うるせぇ。黙って抱かれてろ」
『いっ、異議あり!その言い方は、あらぬ誤解を生んで被害こうむるので(主に自分に)止めていただきたいです!』
「うるせぇって言ってるんだよ、ゾンビ野郎」
『私、まさかの人でなし扱い!?むぎゅ...っ』
「何度も言わねぇ。大人しくしてろ。体ガタガタさせながらアホな事ばっか言ってんじゃねぇよ」
それは日向君が無駄に怖いからじゃぁ...という言い訳は、ちょっと通りそうにもありません。
いえ、むしろ言ったら本当に燃やされそうなので口に出すわけありませんけど。
ゾンビと例える程の顔色をしているのであれば、体調不良だと解釈するのが普通ですからね。
人ではない例えをしたのは、きっとそういう事ですよね?はい。絶対に。私はそう信じてますよ...日向君。
「由香」
『はい?...えっ!?あ、はい!』
「テメー面倒くさいんだよ」
『...はい?』
日向君に名前呼びされて地味に驚いた次の瞬間、何故かけなされました。
介抱していただける優しさを垣間見たかと思えば、暴言吐かれるとか。
今更彼の気まぐれには驚きやしませんが。もう、本当どっち。
「事あるごとに、いちいちぶっ倒れるな。一人で何とか出来ねぇなら、最初から言え」
『私、そんなに言う程倒れて...』
「この頭を締めれば思い出すか」
『めちゃめちゃぶっ倒れてますね、私』
「別に全部を吐けとは言わねーよ。ただ...こうしてるだけでも」
そう言って、ぎゅっと腕の力がこもったのが伝わりました。
今現在の私こと早瀬由香。その腕にちょうど頭がすっぽりと回されて、日向君の胸元に押し付けられている姿勢なのですが。
位置的に、規則的な心臓の音が良く聞こえて来る上に...ぬくいです。
冷や汗も出たせいで、思ったよりも体が冷えてたようですね。
人肌に触れて、規則正しい音を聞いていると、次第に震えが収まるのを感じました。
「違うだろ」
『...はい。あの、ところで...』
「何だよ」
『あの、何故に頭をそんなにポンポンするんでしょうか...?世話のかかる子供的な...?』
「しつけのなってねぇ動物的だな」
『私の存在って、どうあっても人外なんですね...!』
燃えカスだったり、ゾンビだったり。本当にろくでもないですね。
そのくせ抱きしめる腕とか、頭を撫でる手は優しいものだから。憎まれ口(と、くくっていいかは謎だけど)を叩きつつも、全身で守られてるような感じがして、否応なしに安心してしまいます。
ここは、人目を気にする所な筈なのですが。何だかどっと疲れが来てそこまで考えられそうもないです。
まぶたがしょぼしょぼと降りてくるのは分かっていても...ちょっと、逆らえそうにありません。
『ひうが、くん...ありが...』
「...?おい」
『...ぐぅ』
「話してる途中で寝るか、普通...。どんだけ気ぃ張ってたんだよ」
『むにぃ...』
「バカ由香。...あんま、ヒヤヒヤさせんな」
後ろにひっくり返りそうな所を日向君に助けてもらったのって、偶然じゃ無い気がします。
談話室での私の様子を見て、わざわざ着いてきてくれたんじゃないでしょうか。後ろから。
普段は怖いけど、何だかんだいって優しいんですよね。今みたいに。
だからお礼を言いたかったんですけど、ちゃんと最後まで伝えられたんでしょうか。
今度は。夢も見ないほど、深く眠れそうです...。
そしてこの時の私は、知るよしもなかったのです。
次に目覚めた場所が、日向君のベッドの上で。大絶叫した後に一騒動が待ち構えていることを...。
何で、なんでこう、和やかなオチで終われないんですかコンチキショー!
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早瀬さんの後日談(プチ捕捉)
よくよく考えてみれば、日向君が私なんかの部屋の場所を知ってる訳ありませんでした。
でも、でもさぁ...っ。だからって、自分の部屋へ連れ込むとか。後の展開がどうなるか、もう少し考え(長くなりそうな為、割愛させていただきました)