それってつまり
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*
最初はただ綺麗な子だなっていう印象だった。あと、近寄りがたい冷たい雰囲気。
理由は分からないけど、頑なに周りを拒否してる感じというか。
でもアリス持ちって、色んな事情を抱えて学園に皆来るものだから。乃木君や日向君の態度を、今までそれ程疑問に思わなかったんだけど。
最近、それが変わってきた気がするのは‥‥。
『やっぱり蜜柑ちゃんの影響なのかなぁ』
「佐倉がどうかした?」
『ほわあぁぁ!?』
「っ!?」
放課後。お天気な日は見晴らしの良い場所でスケッチをしていくのだけれど。
気もそぞろな感じで描いていたら、すぐ隣に人がいるのに全く気が付かなくて。かなり大げさな声を上げてしまった。
ただでさえ、それだけで恥ずかしいのに。見られた相手が‥‥。
『びっくりした‥‥かなりびっくりしたよ、流架君』
「うん‥‥俺もびっくりした。かなり」
よりによって、流架君だなんて。何だか今日は変な所ばかり見られてる気がする。
女の子は恋をすると綺麗になるだとか聞いたことあるけど、嘘だと思う。だって今の私、絶対みっともない。ちょっと泣きそう。
『ごめんね、ちょっとぼんやりしちゃってたみたい。それで、どうかしたの?』
「いや‥‥。いつもは集中して描いてるのに。何だか、あんが何だかやけにぼんやりしてたから。そしたら、佐倉がどうとかって」
『あぁ‥‥そう、なんだ』
気を持ち直そうとして、良さげな笑顔を浮かべようとしたけど。やっぱり駄目だった。
流架君の口から別の女の子の名前が出ただけで、こんなにも気が重くなるだなんて知らなかった。
「ごめん。聞いたら駄目だった?」
『ううん、そんな事ないよ!蜜柑ちゃんが学園に来てから、流架君の雰囲気って変わったなぁって。しみじみ、考えていたというか』
「俺の事考えてたの?」
『え!?えぇっと、ううんっ。棗君も!流架君と、棗君っ、2人ともだよ!』
「ふーん‥‥棗も、ね」
そんな相づちをする流架君は、ムスッとした顔になってしまって。
私、何か言い方間違えちゃったのかな。反応的に間違えた感は凄くある。理由は分からないけど。
折角一緒に話せてるのに。空回っちゃって、上手くいかないや。
「そんなに変わったかな。よく分からないや」
『凄く変わったよ!前より話し掛けやすくなったし。それに‥‥』
蜜柑ちゃんが来てから、今まで知らなかった流架君を見るようになった。
照れてしまうと、つい怒っちゃう所とか。困ってる子をみると、何だかんだ放っておけない所だったり。
‥‥動物にはメロメロなのを、蛍ちゃんに暴露されたり。
私が今まで思っていた事とは、全く違っていたのに驚いて。目が離せなかった。本当はどんな人なんだろう。他にはどんな所があるんだろう。もっと知りたいって、思って。気が付いたら。
『(好きだなって)』
「それに‥‥何?」
『えっ。えぇっと、うん。蜜柑ちゃんは凄いなって』
「あれ。そんな話だった?」
『うん。蜜柑ちゃんだから、流架君の事沢山知れたんだと思うよ。私だったらきっと‥‥何も、知らないままだった』
私ではなくて、蜜柑ちゃんが。
その言葉を自分で言ったくせに。勝手に苦しくなってしまった私は、自然と視線が下へと向いてしまった。
私だって、あの子みたいに。周りを明るく出来るような、何かを持っていれば良いのにな。そうすれば、流架君にもっと近付けたのかもしれない。
そんな事、出来るわけが無かったから。私は。
「あんも変わったと思う。確かに最近、絵を練習している時間が増えたよね」
『そんなにあからさまだったかなー‥‥』
「それは‥‥ほら、あれだよ。席があんの真後ろだから。今井が言ってたように、俺も知りたいな。急に、そんなに頑張るようになった理由」
『えっ!?えっと、それはあの‥‥っ!』
「もしかしてさ。自惚れだったら恥ずかしいんだけど。‥‥その絵と、関係あったりしないかな。なんて」
『‥‥えっ?』
そう言って指差された先にあるのは、言わずもがなスケッチブック。問題は、それに描かれたものであって。
青空の下で、笑いあってる二人の男の子。‥‥棗君と、流架君。
よりによって、張本人に見られてしまい。二度目の奇声を上げるまで、もう間も無く。
*
『‥‥見た?』
「そうだね。見たよ」
『無かったことには‥‥』
「ならないかな。さっきの質問、答えて欲しいし」
人当たり良さげな笑顔を浮かべている流架君だけど。逃げ道を一つずつ確実に無くしてくるものだから、逆に怖い。
黒い笑顔って、こういう事だよって言われたら物凄く納得する。
「それで?」
『えっ?』
「理由、教えてよ。‥‥俺には、言うのが嫌?」
『嫌っていうか‥‥!どうしてそんなに私なんかの事、聞いてくるのかなって』
ある意味嫌なのかもしれない。自分の気持ちが知られるのが怖いから。
やっと少しだけ近付けたこの関係を崩したくない。自分は逃げ腰なくせに。蜜柑ちゃん‥‥人の事ばかり羨ましがる所が、凄く醜く思えてしまって。
必死に隠そうとしたけれど、流架君は許してくれなかった。
あれ。意外と優しい人なんだなって、最近思ったばっかりだったんだけど。あれ‥‥?
「そんなの‥‥あんの事、もっと知りたいから」
『へ‥‥っ!?何で、私っ?』
「あんって案外卑屈な所あるんだな。一個、発見。‥‥それで?」
『えっ?』
「え、じゃないでしょ。俺も一個答えたんだから。いい加減答えてよ、あん」
『なっ、な!?何で、いきなりほっぺたつつくの‥‥!』
「えー‥‥あんが答えたら俺も答える」
追い詰められた上に、急に触られて。さっきからあからさまに動揺させようとしてくる気がする。
あれ?優しいって、なんだっけ?
何だか頭が混乱してきたけど。逃げるという選択肢は残されていないようなので。これは‥‥正直に、言うしかないようで。
『‥‥流架君、蜜柑ちゃんと話してると楽しそうで。羨ましかったの!でも私は、蜜柑ちゃんみたいに出来ないから。だから‥‥アリスを使えば。私にだって』
自分の力で、流架君を笑顔にさせてみたかったの。
最後の言葉は、感情が高ぶりすぎたせいなのか。何だか震えて上手く言えたのか分からない。
追い詰められたからとはいえ、物凄く正直に言ってしまった‥‥。反応が物凄く怖い。後悔しても、遅いのに。
「‥‥この絵。どうして、俺と棗の二人なの?」
『え?それは‥‥。二人は、いつも一緒だから。流架君が笑ってる時ってどんなだろうって、考えたら。隣で、棗君も笑ってるんじゃないかなって』
「俺の事を考えたら?」
『うぇ!?何か流架君、さっきから意地悪だ‥‥っ!』
「えー?だってさー‥‥。はー‥‥。もう駄目だ‥‥何この可愛い生き物‥‥」
何だかブツブツ言っているのは分かったけど、うつむいてしまったから。聞き取れなかった。
とりあえず、理由は話したので。これ以上気持ちを暴露する前に逃げてしまおうかな。理由を言った時点でアウトなんだろうけど‥‥!
そんな気配を感じたのか。今日の流架君は、とことん逃がそうとはしてくれないようで。
「あん」
『えっ、と。あの、流架君?何で、その。急に手握って‥‥』
「嫌?」
『や‥‥じゃない、です』
「ふふ、何で急に敬語なの」
『ふぇっ。だからっ、何でほっぺたつつくのっ』
「だってあん、真っ赤なんだもん」
『それはっ、流架君が!』
「俺のせい?っていうか‥‥俺だからって、思っていい?
あんが今こうなってるのも。苦手な絵を猛練習するようになったのも。全部俺のせいって」
『~っ!!流架君って何か、思ってたよりずっと意地悪‥‥っ!』
自分が好きだと思った人の予想外な一面があったとしても。
じゃぁその恋心は無かった事になるのかと思ったら、むしろその真逆。加速するばかり。
「そういう俺は嫌い?」
『きっ、嫌い、なんかじゃ‥‥!』
「じゃぁ‥‥どう思ってる?俺はね。あんの事が可愛くてたまらなくて、それから‥‥」
『かわ‥‥っ!?』
「それから‥‥そうだな。この先は、あんからさっきの質問答えたら俺も言おうかな」
『質問っ?何か、もう、えっ?何か聞いた?』
「はいはい。動揺し過ぎな所も可愛いよ。さっき何聞いたかって。俺の事をどう思ってるのか。‥‥ね?聞かせてくれるよね」
繋がれた手は、とても熱くて。緊張の余り、心臓の音が伝わっているんじゃないかと心配になってしまう。
逃げ道を完全に絶たれたせいか、彼との距離は今、とても近い。
核心の言葉を言わされるまでに彼に追い詰められるのは、もうすぐ。
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るかぴょんは紳士的なイメージがあります。それがどうしてこうなった…?
好きな子程いじめたい男子の図じゃねぇか。テンションおかしくて迷走しましたが、楽しかった。
リクエストありがとうございました!
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