初等部B組探偵団!
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事の始まりは、朝の登校時間。場所は校舎の下駄箱で...。
『...これは』
靴を履き替えようとしたら手紙が入っていたので、とりあえず閉めてみました。
そして下駄箱を再確認。はい。どうやら自分の場所は間違えてはいないようです。
見間違いかと思って再度開けてみたのですが、やっぱり幻覚ではなかったようです。
手にとって見ると、白いシンプルな清潔感のある便箋。差出人は書いていないようです。
えぇ。もう一度言っておきましょうか。事の発端は下駄箱に謎の置き手紙が発見されて、そして...。
「おはよー!由香ちゃん、どないしたん?そんな所でぼーっとして...」
『あ』
「それ...もしかして」
『佐倉さ、』
「ラブレターやー!由香ちゃんがラブレター貰ったー!!」
『ちょ...っ』
よりによって、歩く拡声器のような人に運悪く目撃されたのがもう一つの大きな要素。
とりあえず黙っていて欲しいと頼もうとしたけれど、既に時遅し。
朝っぱらから、馬鹿デカい佐倉さんの声が玄関の外にまで響き渡りました...。
「それで、だ。一体誰が由香の靴箱に手紙を入れたのか、この場を借りて真剣に推理しようと思う!」
「翼先輩カッコいい!探偵みたいやー!」
「ふふ...そうかっ?」
「(由香ちゃん...)」
能力別授業の時間の筈なのに、今現在私こと早瀬由香がいるのは特力系クラス。
ほっしゃんさんが気の毒そうに見守る中、本人抜きで話を進めていくこの展開。前にもあった気がします...。
そして私の心情は、ただ一言。
『どうしてこうなった』
「そんなの、由香がラブレターを貰ったなんて聞いたら黙っていられないだろ!俺の目が黒い内は、由香は渡さない!」
「アンタのその保護者っぷり、ウザいんだよ翼ぁ!」
「ぐぇっ!ちょ...っ、美咲やめろ...!」
『別校舎の中等部にまで知られてるとか...どんだけ話の広まるの早いんですか!?怖い!歩く拡声器怖いです!』
「歩く拡声器ってなんの事や?」
あなたの事です、佐倉さん。
本日も私の毒舌っぷりは絶好調であります。勿論心の中で。
「それで?中身はもう読んでみたのー?」
『それがまだ...ってちょっと待って下さいよ。何で心読み君がここに?』
「凄く面白そうだから来ちゃった」
『語尾にハートマークが付きそうなぐらいにウキウキしてるね、心読み君』
「ついでに早瀬さんの手紙に興味がありそうな子達にも、全員声掛けておいたよ!」
『うわぁ、歩く拡声器がここにも!』
振り向くと、顔馴染みの面子が次々によくもまぁ揃いに揃いやがって...。
というか、今って一応授業中ですよね...?
「おー、結構揃ったなぁ。さしずめ、初等部B組探偵団って所か?」
『......』
「な、なんだよ由香、そんなに睨むなって」
「由香ちゃんは、アンタの事ウザいってさ」
「え!?」
原田美咲先輩の言葉に対して、あからさまにショックを受けた顔をしてましたけど知りません。だって事実ですから。
その後。安藤先輩が必要以上に動揺したり、集まった初等部メンバーが騒いだりと。落ち着くまでに暫くの時間を要しました...。
「今日のいつ頃に、早瀬さんの下駄箱に手紙が入れられたのか。それが分かるだけでも、人物はかなり絞られると思うの」
「蛍...カッコいい...!」
『あの、今井さん?ノリノリな所悪いんですけど...。そもそもこういうのを大勢の前で暴露するのって、モラル的に』
「流架君は確か、いつも登校時間が早い方よね。今日はどうだったのかしら」
『まさかのスルー!?』
「え...っ、俺?今日は授業前に動物達と会っておきたくて。先に荷物を置いておいてから飼育小屋に行こうと思って、早めに登校したけど...特に変わった事は無かったよ」
「流架君が違和感を持たなかった...つまり犯人は、初等部生徒の可能性が高いという事なのかしら...」
「異議あり」
どうあってもこの話は、胸の内にそっとしまっておいてはくれないようです。止める人なんて一人もいませんでした。どんだけ。
今井さんに至っては、瞳がランランと輝いているように見えますし...。というか、犯人てアナタ...事件じゃあるまいし。
そんな今井さんの推理に、異議を唱える声が上がりました。それは。
『あなたは...』
「誰」
「ロリコンだー」
「え、変態?」
「日和見ジジイ...」
「殿内だっ!!」
それぞれの台詞が誰なのかは、ご想像にお任せします。
それにしても最初はいなかった筈なんですけど、いつの間に来ていたんでしょうか。殿内先輩。
無駄にカッコつけて登場したのにも関わらず、初等部組の正直すぎる言葉のせいで思いきり出鼻を挫かれていました。ざまぁ。
「殿先輩、蛍の完璧な推理の何処がおかしいんや?」
「違和感を持たなかったという点なら、それは初等部の教員にも同じ事が言えるんじゃないか?」
「た、確かにそうや...!」
「それは教師が生徒に対して恋文を、ということかしら?どこぞの隠れアイドルオタクならまだしも、非現実的だと思うわ」
「おぉっ、蛍の言う事も確かにそうや...ん?」
佐倉さんの疑問の声を最後に、静まり返る教室。
今井さん、とんでもない爆弾発言を落としましたよね?あまりにもさりげなくだったので、うっかり聞き逃すところだったんですけど。
真実を確かめるには、当人としてはあまりにも勇気のいる...。
「ねーねー今井さーん」
「何かしら、心読み君」
「隠れアイドルオタクって、誰の事ー?今井さんの言い方だと、先生達の中の誰かって事だよね?」
『(当人じゃないからあっさり尋ねるパターンキター!)』
「本人の名誉もあるだろうから、発言は控えさせてもらうわ。...そう。発言は、ね」
一度静まった反動なのか、教室内は再び秩序を失いました。
隠れアイドルオタクの先生がいるという事実も、十分に衝撃的なのですが。今井さんの言い分だと、まるでその方が私に好意を寄せてると...いえ、これ以上は考えるの止めましょう。
ただでさえも朝からテンパってるのに。キャパオーバーしそうです。
一方で私と似たような結論に至った人が居るみたいですけど。スルーったらスルーです!
「ね、ねぇ棗...。今井の言い方だと、教師の中で早瀬の事が気になってる人が居るって事だよね?誰なんだろ...」
「...さぁな」
『(というか、どうして日向君まで居るんですか...)』
「そ、その情報、こっそり教えてくれねー?新聞部の速水辺りに高く売れそうなんだけど」
「その時点で広める気、満々じゃないですか。ロリコン先輩」
「だから殿内だ!周りから冗談として笑って流せそうにないあだ名は止めてくれ!」
「ねーねー話が逸れてるからそろそろ戻そうよー」
再び教室が静かになったのは、心が一つになったからだと思います。では一緒に突っ込みましょうか。心の中で。
諸悪の根源のお前が言うな。心読み。
しかもどうしてかは分かりませんけど、やけにすっきりした顔しています。腹立たしい。
凄く解せないですけど、話が進まないので放置しましょう。解せませんが。
閑話休題。
「話を戻すとだな。俺の異論はもっと簡単な理由で説明できるって事だ」
『(さっきまで今井さんに軽くあしらわれてた人が今更カッコつけて仕切り直そうとしても...ねぇ、ほっしゃんさん)』
「(由香ちゃん...もうちょっと静かにしないと聞こえちゃうよ...)」
「そこの女子みたいに可愛い男子!」
『やっぱあんたロリコンで間違いないじゃないですか!!』
「異議なし」
「(由香ちゃん、声!声に出ちゃってるよ!)」
「も~っ。いちいち話逸らしちゃ駄目やで由香ちゃん。棗!あんたもやで!何さりげなく異議なしとか言ってるんや!ウチも言ってみたい!カッコよく!」
「知るか」
我慢できずに、思わず話の腰を折ってしまいました。反省です。
それにしても、再度浮上したロリコン発言に対しての佐倉さんのスルースキル...。特力系では日常茶飯事なのかもしれませんね。良かった。ここの系統じゃなくて、本当に良かったです。
「それで?もしかして可愛い男子って流架君の事を言ってるの?」
『え。正田さんまでいるんですか』
「何よ。文句でもあるの?」
『イエ、ベツニ』
「あ、そうだそうだ。名前は流架だっけか。最初に尋問されてたお前だよ。今日はたまたま早く登校したとか怪しい事言ってたけど、それを証明してくれる奴はいるわけ?」
「...居ないけど。教室に着いたのは、俺が一番最初だったみたいだし」
「だったら犯人はお前なんじゃねー?早めに登校したのは、飼育小屋に行ってたからじゃない。本当は誰にも見られずにラブレターを下駄箱に入れる為だろ?」
「...流架君が」
『え、ちょ、しょ、正田さん?』
「流架君が、早瀬さんにラブレタァ?」
あ、あれ。おかしいですね。風なんて吹いてないのに、正田さんの髪がユラユラと波打つように揺れてます。
外は明るい筈なのに、目元も光って見えるんですが。
『のの、乃木君。何でもいいから早く異議を唱えてお願いだから』
「え、確かにあるけど...何で」
『このままじゃ私の命が危ぶまれる!』
「わ、分かったから。えっと、その先輩が言ってる事は事実とは違います」
「な~んだっ。そうよねっ!流架君が誰かにラブレターだなんてぇ~」
コロっとご機嫌が直って、正田さんが巻き付くように腕を組んできたせいで。乃木君、ちょっと迷惑そうですが。
個人的には正田さんの怒りの矛先がこちらにこなくて何よりです。
ありがとうございます、乃木君。貴方という尊い犠牲は忘れません。
「そんな事言っても、アリバイがないんだろ?」
「それは...動物達が、」
「動物達が証明するって?喋ってくれたりすんの?」
「...っ」
『...ところで、心読み君?』
「何かな、早瀬さん」
『あなた学園祭で動物の心を読み取っていたような気がするのですが』
「もう少しこの現状を楽しみたいから、そんなの出来ないという事にする」
『私の身が再び危ぶまれるかもしれないというのに...!こんの裏切り者があぁ!』
「あはは、早瀬さんってばおもしろ~い」
何処がじゃ!!
そう突っ込みたかったけれど、後方からそこはかとなく寒い空気が。あれ、マジでまた私危なくないですか?
絶体絶命という言葉がよぎったその時。天の声ともとれる、乃木君のお言葉が降ってまいりました。
「...あ、そういえば。俺の前に学校に来てた奴、いたかも」
『え!?何なにそれ誰なんですか早く申し上げて下さいっ、さぁ!』
「テメーさっきからうるせぇんだよ。あと近すぎる」
『痛いっ!?だが断ります!色々な瀬戸際に落ち着いてられる方がおかしいですから!』
「棗、俺なら大丈夫だから...。教室に荷物を置いた後、下駄箱付近で見かけたんだけど...」
「ルカぴょん、それって最重要容疑者やん!何で黙ってたん?」
「いや...それが...」
何故か困ったように視線を逸らす乃木君。
不思議に思って視線の先を辿ると...。ぺー、と緊張感の欠片も無い鳴き声が初等部組集団の何処かから聞こえました。
「ルカぴょんの苦し紛れの言い訳かとも思ったけど...。蛍ねーさんの作ったロボットなら、手紙を代わりに届けさせるなんて簡単に出来るだろうしなぁ」
「ルカぴょん言うなっ。このハゲっ。あ、いや、違った...か、カゲっ」
「因みに名前はペンギーよ。カゲ」
「失礼しました、蛍ねーさま」
「ぺー?」
温度差が。今井さんと乃木君がカゲっていう同じ言葉を使ってる筈なのに。
凄みが全く違うのは...はい。まぁ置いておきましょう。
視線を落とすと、不思議そうに首をかしげるペンギン型のロボットと目が合いました。どうにもこの呑気さ、誰かを彷彿とさせます...。
「でもそれだとちょっとおかしな話になるわね」
「え?どゆことなん、パーマ!」
「だってそのロボット、返品されたとかで今の持ち主が今井さんの筈でしょ?そうなると、手紙を届けさせたのは今井さんっていうのが自然な流れになっちゃうけど」
「...蛍の、」
『げ、』
「蛍の浮気者ーっ!!」
「佐倉さん、うるさいわよ!だからおかしな話になるって、前もって言ったじゃないの!」
「田舎者のウチよりも、都会のピチピチな子の方がやっぱりいいんやーっ!」
そう言って思いきり泣き声を上げる佐倉さんの横には、もらい泣きをしたのか一緒にピーピー騒いでいるロボットが一体。
わー似た者同士が集まると、うるさいのが倍増だーすごーい。これカオスだわー。
誰が止めるんだろうと思っていたら、今井さんがすかさずバカン砲で追撃して黙らせていました。物凄い音だったので、文字どおり暫くは黙っていると思います。
...もう帰りたい。
『...これは』
靴を履き替えようとしたら手紙が入っていたので、とりあえず閉めてみました。
そして下駄箱を再確認。はい。どうやら自分の場所は間違えてはいないようです。
見間違いかと思って再度開けてみたのですが、やっぱり幻覚ではなかったようです。
手にとって見ると、白いシンプルな清潔感のある便箋。差出人は書いていないようです。
えぇ。もう一度言っておきましょうか。事の発端は下駄箱に謎の置き手紙が発見されて、そして...。
「おはよー!由香ちゃん、どないしたん?そんな所でぼーっとして...」
『あ』
「それ...もしかして」
『佐倉さ、』
「ラブレターやー!由香ちゃんがラブレター貰ったー!!」
『ちょ...っ』
よりによって、歩く拡声器のような人に運悪く目撃されたのがもう一つの大きな要素。
とりあえず黙っていて欲しいと頼もうとしたけれど、既に時遅し。
朝っぱらから、馬鹿デカい佐倉さんの声が玄関の外にまで響き渡りました...。
*
「それで、だ。一体誰が由香の靴箱に手紙を入れたのか、この場を借りて真剣に推理しようと思う!」
「翼先輩カッコいい!探偵みたいやー!」
「ふふ...そうかっ?」
「(由香ちゃん...)」
能力別授業の時間の筈なのに、今現在私こと早瀬由香がいるのは特力系クラス。
ほっしゃんさんが気の毒そうに見守る中、本人抜きで話を進めていくこの展開。前にもあった気がします...。
そして私の心情は、ただ一言。
『どうしてこうなった』
「そんなの、由香がラブレターを貰ったなんて聞いたら黙っていられないだろ!俺の目が黒い内は、由香は渡さない!」
「アンタのその保護者っぷり、ウザいんだよ翼ぁ!」
「ぐぇっ!ちょ...っ、美咲やめろ...!」
『別校舎の中等部にまで知られてるとか...どんだけ話の広まるの早いんですか!?怖い!歩く拡声器怖いです!』
「歩く拡声器ってなんの事や?」
あなたの事です、佐倉さん。
本日も私の毒舌っぷりは絶好調であります。勿論心の中で。
「それで?中身はもう読んでみたのー?」
『それがまだ...ってちょっと待って下さいよ。何で心読み君がここに?』
「凄く面白そうだから来ちゃった」
『語尾にハートマークが付きそうなぐらいにウキウキしてるね、心読み君』
「ついでに早瀬さんの手紙に興味がありそうな子達にも、全員声掛けておいたよ!」
『うわぁ、歩く拡声器がここにも!』
振り向くと、顔馴染みの面子が次々によくもまぁ揃いに揃いやがって...。
というか、今って一応授業中ですよね...?
「おー、結構揃ったなぁ。さしずめ、初等部B組探偵団って所か?」
『......』
「な、なんだよ由香、そんなに睨むなって」
「由香ちゃんは、アンタの事ウザいってさ」
「え!?」
原田美咲先輩の言葉に対して、あからさまにショックを受けた顔をしてましたけど知りません。だって事実ですから。
その後。安藤先輩が必要以上に動揺したり、集まった初等部メンバーが騒いだりと。落ち着くまでに暫くの時間を要しました...。
*
「今日のいつ頃に、早瀬さんの下駄箱に手紙が入れられたのか。それが分かるだけでも、人物はかなり絞られると思うの」
「蛍...カッコいい...!」
『あの、今井さん?ノリノリな所悪いんですけど...。そもそもこういうのを大勢の前で暴露するのって、モラル的に』
「流架君は確か、いつも登校時間が早い方よね。今日はどうだったのかしら」
『まさかのスルー!?』
「え...っ、俺?今日は授業前に動物達と会っておきたくて。先に荷物を置いておいてから飼育小屋に行こうと思って、早めに登校したけど...特に変わった事は無かったよ」
「流架君が違和感を持たなかった...つまり犯人は、初等部生徒の可能性が高いという事なのかしら...」
「異議あり」
どうあってもこの話は、胸の内にそっとしまっておいてはくれないようです。止める人なんて一人もいませんでした。どんだけ。
今井さんに至っては、瞳がランランと輝いているように見えますし...。というか、犯人てアナタ...事件じゃあるまいし。
そんな今井さんの推理に、異議を唱える声が上がりました。それは。
『あなたは...』
「誰」
「ロリコンだー」
「え、変態?」
「日和見ジジイ...」
「殿内だっ!!」
それぞれの台詞が誰なのかは、ご想像にお任せします。
それにしても最初はいなかった筈なんですけど、いつの間に来ていたんでしょうか。殿内先輩。
無駄にカッコつけて登場したのにも関わらず、初等部組の正直すぎる言葉のせいで思いきり出鼻を挫かれていました。ざまぁ。
「殿先輩、蛍の完璧な推理の何処がおかしいんや?」
「違和感を持たなかったという点なら、それは初等部の教員にも同じ事が言えるんじゃないか?」
「た、確かにそうや...!」
「それは教師が生徒に対して恋文を、ということかしら?どこぞの隠れアイドルオタクならまだしも、非現実的だと思うわ」
「おぉっ、蛍の言う事も確かにそうや...ん?」
佐倉さんの疑問の声を最後に、静まり返る教室。
今井さん、とんでもない爆弾発言を落としましたよね?あまりにもさりげなくだったので、うっかり聞き逃すところだったんですけど。
真実を確かめるには、当人としてはあまりにも勇気のいる...。
「ねーねー今井さーん」
「何かしら、心読み君」
「隠れアイドルオタクって、誰の事ー?今井さんの言い方だと、先生達の中の誰かって事だよね?」
『(当人じゃないからあっさり尋ねるパターンキター!)』
「本人の名誉もあるだろうから、発言は控えさせてもらうわ。...そう。発言は、ね」
一度静まった反動なのか、教室内は再び秩序を失いました。
隠れアイドルオタクの先生がいるという事実も、十分に衝撃的なのですが。今井さんの言い分だと、まるでその方が私に好意を寄せてると...いえ、これ以上は考えるの止めましょう。
ただでさえも朝からテンパってるのに。キャパオーバーしそうです。
一方で私と似たような結論に至った人が居るみたいですけど。スルーったらスルーです!
「ね、ねぇ棗...。今井の言い方だと、教師の中で早瀬の事が気になってる人が居るって事だよね?誰なんだろ...」
「...さぁな」
『(というか、どうして日向君まで居るんですか...)』
「そ、その情報、こっそり教えてくれねー?新聞部の速水辺りに高く売れそうなんだけど」
「その時点で広める気、満々じゃないですか。ロリコン先輩」
「だから殿内だ!周りから冗談として笑って流せそうにないあだ名は止めてくれ!」
「ねーねー話が逸れてるからそろそろ戻そうよー」
再び教室が静かになったのは、心が一つになったからだと思います。では一緒に突っ込みましょうか。心の中で。
諸悪の根源のお前が言うな。心読み。
しかもどうしてかは分かりませんけど、やけにすっきりした顔しています。腹立たしい。
凄く解せないですけど、話が進まないので放置しましょう。解せませんが。
閑話休題。
「話を戻すとだな。俺の異論はもっと簡単な理由で説明できるって事だ」
『(さっきまで今井さんに軽くあしらわれてた人が今更カッコつけて仕切り直そうとしても...ねぇ、ほっしゃんさん)』
「(由香ちゃん...もうちょっと静かにしないと聞こえちゃうよ...)」
「そこの女子みたいに可愛い男子!」
『やっぱあんたロリコンで間違いないじゃないですか!!』
「異議なし」
「(由香ちゃん、声!声に出ちゃってるよ!)」
「も~っ。いちいち話逸らしちゃ駄目やで由香ちゃん。棗!あんたもやで!何さりげなく異議なしとか言ってるんや!ウチも言ってみたい!カッコよく!」
「知るか」
我慢できずに、思わず話の腰を折ってしまいました。反省です。
それにしても、再度浮上したロリコン発言に対しての佐倉さんのスルースキル...。特力系では日常茶飯事なのかもしれませんね。良かった。ここの系統じゃなくて、本当に良かったです。
「それで?もしかして可愛い男子って流架君の事を言ってるの?」
『え。正田さんまでいるんですか』
「何よ。文句でもあるの?」
『イエ、ベツニ』
「あ、そうだそうだ。名前は流架だっけか。最初に尋問されてたお前だよ。今日はたまたま早く登校したとか怪しい事言ってたけど、それを証明してくれる奴はいるわけ?」
「...居ないけど。教室に着いたのは、俺が一番最初だったみたいだし」
「だったら犯人はお前なんじゃねー?早めに登校したのは、飼育小屋に行ってたからじゃない。本当は誰にも見られずにラブレターを下駄箱に入れる為だろ?」
「...流架君が」
『え、ちょ、しょ、正田さん?』
「流架君が、早瀬さんにラブレタァ?」
あ、あれ。おかしいですね。風なんて吹いてないのに、正田さんの髪がユラユラと波打つように揺れてます。
外は明るい筈なのに、目元も光って見えるんですが。
『のの、乃木君。何でもいいから早く異議を唱えてお願いだから』
「え、確かにあるけど...何で」
『このままじゃ私の命が危ぶまれる!』
「わ、分かったから。えっと、その先輩が言ってる事は事実とは違います」
「な~んだっ。そうよねっ!流架君が誰かにラブレターだなんてぇ~」
コロっとご機嫌が直って、正田さんが巻き付くように腕を組んできたせいで。乃木君、ちょっと迷惑そうですが。
個人的には正田さんの怒りの矛先がこちらにこなくて何よりです。
ありがとうございます、乃木君。貴方という尊い犠牲は忘れません。
「そんな事言っても、アリバイがないんだろ?」
「それは...動物達が、」
「動物達が証明するって?喋ってくれたりすんの?」
「...っ」
『...ところで、心読み君?』
「何かな、早瀬さん」
『あなた学園祭で動物の心を読み取っていたような気がするのですが』
「もう少しこの現状を楽しみたいから、そんなの出来ないという事にする」
『私の身が再び危ぶまれるかもしれないというのに...!こんの裏切り者があぁ!』
「あはは、早瀬さんってばおもしろ~い」
何処がじゃ!!
そう突っ込みたかったけれど、後方からそこはかとなく寒い空気が。あれ、マジでまた私危なくないですか?
絶体絶命という言葉がよぎったその時。天の声ともとれる、乃木君のお言葉が降ってまいりました。
「...あ、そういえば。俺の前に学校に来てた奴、いたかも」
『え!?何なにそれ誰なんですか早く申し上げて下さいっ、さぁ!』
「テメーさっきからうるせぇんだよ。あと近すぎる」
『痛いっ!?だが断ります!色々な瀬戸際に落ち着いてられる方がおかしいですから!』
「棗、俺なら大丈夫だから...。教室に荷物を置いた後、下駄箱付近で見かけたんだけど...」
「ルカぴょん、それって最重要容疑者やん!何で黙ってたん?」
「いや...それが...」
何故か困ったように視線を逸らす乃木君。
不思議に思って視線の先を辿ると...。ぺー、と緊張感の欠片も無い鳴き声が初等部組集団の何処かから聞こえました。
*
「ルカぴょんの苦し紛れの言い訳かとも思ったけど...。蛍ねーさんの作ったロボットなら、手紙を代わりに届けさせるなんて簡単に出来るだろうしなぁ」
「ルカぴょん言うなっ。このハゲっ。あ、いや、違った...か、カゲっ」
「因みに名前はペンギーよ。カゲ」
「失礼しました、蛍ねーさま」
「ぺー?」
温度差が。今井さんと乃木君がカゲっていう同じ言葉を使ってる筈なのに。
凄みが全く違うのは...はい。まぁ置いておきましょう。
視線を落とすと、不思議そうに首をかしげるペンギン型のロボットと目が合いました。どうにもこの呑気さ、誰かを彷彿とさせます...。
「でもそれだとちょっとおかしな話になるわね」
「え?どゆことなん、パーマ!」
「だってそのロボット、返品されたとかで今の持ち主が今井さんの筈でしょ?そうなると、手紙を届けさせたのは今井さんっていうのが自然な流れになっちゃうけど」
「...蛍の、」
『げ、』
「蛍の浮気者ーっ!!」
「佐倉さん、うるさいわよ!だからおかしな話になるって、前もって言ったじゃないの!」
「田舎者のウチよりも、都会のピチピチな子の方がやっぱりいいんやーっ!」
そう言って思いきり泣き声を上げる佐倉さんの横には、もらい泣きをしたのか一緒にピーピー騒いでいるロボットが一体。
わー似た者同士が集まると、うるさいのが倍増だーすごーい。これカオスだわー。
誰が止めるんだろうと思っていたら、今井さんがすかさずバカン砲で追撃して黙らせていました。物凄い音だったので、文字どおり暫くは黙っていると思います。
...もう帰りたい。