いつかの形象
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*
「...おい」
『うぅ...』
「おーい」
『うぅぅ...ご、』
「おいってば!」
『ひえぇえっ!?ごご、ごめんなさいごめんなさい!勝手に殺しちゃって!』
「はっ?」
『...んあっ?』
布団にくるまれているかのような妙な温もりの中、私こと早瀬は覚醒致しました。え、というか意識飛んでたんですか?
飛んでるついでに場所も飛んでるんですが。ここ、何処ですか。
清々しい青空が映える一面の芝生の元で、私は...
「あのさぁ。とりあえず退いてくんないかなぁ。痴女さん」
『...ちじょ?』
「昼寝してる最中に上に乗ってくる奴、俺初めてなんだけど。痴女以外に何て言えっつーの」
『・・・・・・』
そう。そこで私は、もう気合いで山びこが返ってくるんじゃないかという程に、あらん限りの絶叫をかましました。
「~っ!何だよ、うるっせーなぁっ!」
『そそそ、そっちが勝手に下敷きになったんじゃないですかぁ!ち、痴女とか、そんな言い掛かりされたら、私...っ』
「何だよ。アリスでも使うって言うのか?だったら俺だって、この美声で...」
『...泣く!』
「え、なにそのタチが悪い攻撃ヤメテ」
ちょっと怯んだ様子を好機と言わんばかりに、距離を取りつつ、しげしげと何故か下敷きにしてしまったお方を見てみると。
制服からして、中等部の人であろう事は分かったのですが。能力系が違うせいか、初めて見るお顔です。
そのお顔は、普通に美少年様であります。ちょっと垂れ目気味な目は不愉快そうに潜められておりますが(私のせいですね。はい)
陽の光に透けて、赤みがあるように見えるその髪は猫っ毛なのか外側へ向かってはねています。
でもイケメンなお顔が手伝ってか、そんな髪型もオシャレに見えるから不思議なものです。
「じゃ、フツーに先輩でいーや」
『へっ?先輩って...』
「先輩でしょ?高等部の制服着てるんだから。俺、中等部だし」
『...あ"(そういえば副作用で成長したままだった...!)』
「...ね?先輩ってよく見ると、結構かわいー顔してるねーっ、とっ」
『んにぁっ!?』
急に引っ張られたと思ったら、何故かさっきの姿勢に戻されました。何故か。大事な事は以下省略。
背中をガッチリとホールドされているので、退きようがありません。
というか、そのせいで、お顔同士が至近距離なんですけど...っ!
しかもこの姿勢で人様を見下ろすのって、以外...でもないか。とりあえず恥ずかしいんですが!
「はは!何その猫みたいな声」
『ちょっ、あ、あのっ。な、何する...っ』
「え、それ敢えて聞いちゃうの?...さっきの続き、しようよ」
『はっ、はぁ?えっ、それって?え?意味が分からな...っ』
「まーたまたぁ、ウブなフリしちゃって。俺の事押し倒したくせに~」
『あっあれは!あれは多分事故で...!』
「普段と逆の立場っていうのも、新鮮でいいかも...ねぇ?」
『ひゃぅっ!?やっ、ちょっ、耳に息かけないで下さぁ...っ。お、お願いです、ちょっと、待って...っ』
「...何そのそそる反応。待たない」
『...っ!』
それこそ猫同士がじゃれるみたいにふざけてるのかと思ったら。唐突に美少年様が、まるで何かを狩るような狙った目付きになって。
そしてそれは間違いなく私に向けられていると理解した途端、頭の中で警鐘が聞こえた気がしたのですが逃げる術なんてある筈もなく。
一体どうなってしまうんだろうと、危機感をやっと持った瞬間です。
視界の端で、茂みがガサリと音を立てて揺れました。
「白昼堂々、何してるんだよ。レオ。しかも外」
「げ、鳴海先輩。普通ここは空気読んで出てこない所でしょー?」
『あ...っ!な...っ』
「何で俺がいちいちお前の都合に合わせなきゃならないんだ。大体そういう事するんだったら、空気読むのはそっち...」
『鳴海先生...っ!』
「...は?」
よく分からない場所に、面識のない人。その上に許容範囲が限界になりそうな展開の中、見知った顔が現れて思わず涙腺が緩みそうです。
思わず声を上げて呼んだら、何故か拘束されていた腕の力が抜けたので。そこから逃げるようにして、先生の元に駆け寄りました。
嗚呼。鳴海先生を見てこんなに安心したの、初めてかもしれませ...。
『...って、何で先生も制服着ちゃってるんですか!?朝ごはんちょっと取りに行って来るって言って、なんでそんな姿で戻ってくる展開に!?』
「はぁ?ちょっとアンタ待っ、」
『確かに先生は綺麗な顔立ちだから何をしても似合うと思いますよ?』
「俺の話、聞い」
『だからって私と張り合わなくても...というか、そんな場合じゃ、』
「...ぶはっ!あーはっはっはっ!もぉ無理~!」
『へっ、』
急に後ろから爆笑する声がして振り返ってみれば。先程の赤髪先輩が、寝転んだままお腹を押さえて笑い悶えていて。
笑われる意味が分からないと混乱していると、普段の鳴海先生からは想像も出来ない程の面倒くさそうな声が降ってきました。
「とりあえず人違いなんで。俺、間違っても先生じゃねーし」
『えぇ?何言ってるんですか。その外人まがいの金髪に泣きボクロ、間違いなく鳴海先生じゃ...』
「...何。人の事ジロジロ見ないでくれる」
『...何と言うか...』
改めて先生の姿を見ると、確かに妙な違和感を感じます。
ガリバー飴のせいで急成長してしまったので、定かではありませんが。鳴海先生の身長が何だか微妙に足りない気がします。
くくれる程に長かった髪の毛も、いつの間にか短くなってるし。
何より顔立ちが違うと言うか...。目付きが厳しいというか、座っているような?なおかつ、あどけないと言うか...そう!
『...若い!』
「......」
「ひーっ!は、腹いてーっ!何この子面白い...っ!」
「...アンタさ」
『ひやっ、なっ、何す...!』
「人の話、聞いてた?人違いだって言ってんのにさぁ」
やっと理不尽なホールドから逃げられたかと思ったら、今度は鳴海先生に強引気味に引き寄せられてしまったのですが...っ。
またしても、背中に腕ががっちりと回されて...私のキャパがクライマックスです。いや、本気で。
本当、何だって言うですか一体...!近頃の若人は、これぐらいのスキンシップが当たり前なんですか...って!
『にぇっ!?ちょっ、何で背中の肉をつまむんですか!』
「いや...さっきからムカつくから、いっその事ヤッちゃおうかと思って」
「え。鳴海先輩ってば、まさかの3人で?」
『(や、殺るって...!?)』
「ブラのホック外そうとしたんだけど、まさかノーブラだとは思わなかった」
『...は?』
唐突な下世話なネタでお目汚し、失礼致します。
確かに、流石にその類いの準備は無くて(むしろあったら逆に怖い)、そういった状態ではありますが。
さ、最近の若人は...!(以下略)
え、というか、そんなのわざわざ確認しなくても先生なら知ってるでしょうに何で...!
「マジで!?ちょっと待って!さっきその子が乗っかってきた感覚思い出すから...っ」
「お前って本当に時々アホくさいな、レオ...。着けてないのはちょっとビックリしたけど...まぁ、手間が省けたって事で」
『んひぁっ!?ちょっ、何処に手ぇ突っ込んで...っ!』
「え?制服の、」
『止めてください言わないで!』
「どっちだよ...」
『こっ、こんなの、こんな、質の悪い冗談、鳴海先生らしくないです...っ。なんで、こんな...っ』
「本当、アンタって人の話を聞かないんだね?さっきからよっぽど俺の事を、先生にしたいみたいだけどさ。そこまで俺の存在スルーされるとマジで腹が立つ。
だから...俺の事しか考えられないように、なれば?」
『ひゃぅ...っ!?』
「あ、ちょっと鳴海先輩ズルい...」
内緒話でもするかのように耳元に息を吹きかけられたせいで、声が勝手に出てしまいました。自分の体なのに言うことを聞かないのが、何だか怖い。
ふと鳴海先生を見ると、さっきの赤髪先輩と同じ目をしてました。まるで狩るような、あの目付き。
先生の手が動く度に、何か、こう、あれです。
心と体がバラバラになりそうです。心が反応する体に追い付かないというか。体が心を置いてけぼりにするというか...っ。私、もう...っ!
『...すか』
「は?」
『だから...っ。
私のキャパがクライマックスだって言ったじゃないですか馬鹿あぁぁぁぁっ!!!』
「はぁ!?そんな事いつ言っ」
「げぇえっ!?鳴海先輩蹴っ飛ばされたんだけど!ちょっ、はぁ!?回し蹴りの軌道に焦げ跡が残っ...!?」
『うわあぁぁん!!』
「しかも逃げた!!先輩生きてる!?」
「こ...」
「鳴海先輩!?」
「こんなにボコボコにされたの...柚香先輩以来、かもしれな」
「先パーイ!!」