いつかの形象
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*
『朝起きれば勝手に元の姿に戻ってるか、あわよくば夢オチ展開を期待してたんですが...』
「まぁ、現実ってそんなに甘くないよね。あ、由香ちゃんとりあえずこれ着といて。サイズはちょっと合わないと思うけど...」
『あ...すみません、ありがとうございま...っ!?』
朝起きても、残念ながら成人女性の姿に変わりはありませんでした。
因みに昨日の先生方のその後も、残念ながら存じ上げません。目が覚めたら、既に二人とも起きていたので一緒に夜を共にしたのかどうかは定かではないです。
それよりも。
鳴海先生に差し出された、コレ。
先生の物である為なのか、確かにサイズが大きめなのですが...問題は...。
『こ、高等部の制服...っ?...女子用の』
「ごめんねーっ。僕用にサイズ合わせしてあるから、大きくなった由香ちゃんが着てもブカブカしちゃうだろうけど...」
『あれ。この人、今さりげなく凄い台詞言った気がする』
昨夜食事に出掛けた時に、鳴海先生によって化粧を施されたのですが。その時のメイク道具といい、一体...いえ、これ以上はやめておきましょう。
大人の世界には、知らないでいた方が良い事がいっぱいのようです。
「鳴海。病院の受付が始まる前に、俺は一度部屋へ戻らせてもらうぞ」
「あ、岬先生おはよー。じゃぁ僕は由香ちゃんに朝ごはんでも持ってきてあげようかなっ」
『な、何か昨日からお騒がせしてすみません、先生方...』
「いや、気にするな早瀬。発端の原因は俺にもあるしな」
「そうそう!あんまり深く考えないのーっ」
「鳴海はもう少し気にしろ」
そんな漫才のようなやり取りをしながら、先生方は部屋から出ようとしていたのですが。
何かを思い立ったのか、鳴海先生は振り返ってこう言い残して行きました。
「あ、そうだ。もし誰かが来ても、僕が戻って来るまでは絶対にドア開けちゃ駄目だよ?万が一バレちゃったら大騒ぎになっちゃうから」
『わ、分かりました』
「よしよし、良い子だね。それじゃぁ、あでゅー!」
「いちいち朝からうっとうしい奴だな...」
「岬先生は朝から冷たいな~っ。大体さー...」
ただでさえも忙しい朝の時間。そんな時に誰かが来るだなんて考えにくいです。
おまけに朝食を取りに行って帰って来るまでの間なんてあっという間でしょう。
よってドアを開けざるを得ない展開なんて有り得ませんって。万が一第三者にでも見つかったら目立つし。
この後の展開(病院へ受診)が憂うつなので、せめて今だけでも呑気にさせてもらおうじゃありませんか。
*
『そう...思ったんですけど...』
鳴海先生、どうやら去り際にいらぬフラグを立てていってくれたようです。
何が起こったのかといいますと、それはですね。先程、ドアの向こう側から...。
うにょん うにょん ペッ!
うわあぁぁぁぁ...
ドゴォ!ベシャッ ゴキィ...ッ
死ーン......
いや、何だよ死ーンってダジャレ通り越して死語だよ。
理解の範疇からかなりはみ出た、謎の音はもうこの際置いておいて。
骨が折れたような嫌に鈍い音を最後に、何も聞こえないのが恐ろしすぎるんですが。
声の主の方は、無事ですよね...!?
少し...そう。少しだけ。
うっすらとドアを開けて、廊下の様子を伺うくらいならきっと大丈夫ですよね?
そう言い聞かせながら、私はいらぬフラグを立ててくれた鳴海先生を呪う思いでドアノブに手をかけ、そして...。
『はぁ...!?』
扉を開けた先には、体格からして多分男の人であろうお方が倒れていらっしゃいました。
なんて言い表したらいいのか激しく戸惑いを覚える体勢で。
えぇ。思わず疑問符を付けたくなる程の。実際にお見せできないのがとても残念です。本当に。
そんな面白体勢をしているおかげで、顔が見えませんが...とりあえず。
『い、生きてます...よね?』
果たしてあんな状態で気道は確保できているんでしょうか。とにかくそんな不安を抱かせる倒れ方であったとだけ言っておきましょう。
...生存確認だけなら、ちょっと部屋を出ても大丈夫ですかね?でも、結局部屋から出ざるを得なくなったこの状況に激しく嫌な予感がするのですが。
あぁ...。それでもですよ?朝っぱらから、自分が居る部屋の前で死亡事故でも起きたら後味悪いですし。...よし。
『ぁ、あのぉ~...も、もしも、』
「...はっ!いけない!」
『ひぃっ!生きてた!!』
「君!巻き込まれるから早く離れて!制御ブレスが急に上手く作動しなく...っ!」
『...えっ?』
嫌な予感というのは、なぜこうも的中してしまうのでしょうか。
ただその予感というのは、私の想像からかなり越えたものだったようです。
急にテレポートのような妙な浮遊感がしたと思ったら、何と辺りの景色がみるみる歪んでいって。
果たして思わず上げた悲鳴は、誰かに届いたのでしょうか...。
そんな的外れな事を考えながら。全く求めていないフラグを立てやがった鳴海先生を、心の底から呪ってやりました。