知らぬは当人ばかり
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次の日。朝のHR前の教室で、予想外の方に声を掛けられました。
「早瀬さん」
『へ...っ?あ、今井さん?えっと、おはようございま、』
「これ、あげるわ。良い物が撮れたお礼よ」
『ん...っ?』
挨拶もそこそこに、唐突に何かを手渡されたのですが...。
...。
手のひらサイズのペラペラしたそれは、どうやら写真のようです。
よくよく見ると、撮影場所は昨日行った飼育小屋でした。それに写っているのは...。
顔を赤らめて怒っている乃木君と、私によく似た女子...って、これまごうことなく私じゃないですか!?
「...案外、あなたも良い顔してたわよ」
『は...っ!?ちょっ、え、えぇぇえ!?』
「今井ーっ!」
「チッ...もう流架君に昨日の写真流れたのね。それじゃぁ早瀬さん、私急ぐから」
「もうHR始まるのに何処に急いで行くんだよ!?待てってば今井...!」
朝から教室を慌ただしくしたこのお二人様は、嵐のように教室を出て何処かへと去って行ってしまいました...。
そんな中、昨日の出来事を脳内で回想してみます。
あの時耳に届いた奇妙な機械音って。つまり、カメラだったということですか...?
それって...それって、とうさ...っ!?
まさかそれは、常に乃木君の周辺にいるのではと思い至った瞬間、思考をシャットアウトしました。
そんな事実、本人にはとても伝えられないし何より恐ろしすぎる。
『私って...こんな顔で笑ってたんですね...』
現実逃避するかのごとく、写真へと目を落とします。
顔を赤くしながら乃木君に叩かれている私は。いつものように相手の顔を伺うような愛想笑いではなく、まさしく素の笑顔で...。
「まるでただイチャイチャしてる恋人同士だよね~っ」
『うわぉぃっ!?こっ、ここ心読み君...っ』
「写真の売れ行きが好調だって喜んでたなぁ~、今井さん」
『ま、まぁ...確かにこの乃木君、普段あんまり見ない表情だもんね』
「へ、何言ってんの?早瀬さんもだって」
『......え、ちょっと何言ってるのか分かんない』
「最近眼鏡キャラ止めたり、髪型変わったりして雰囲気変わったって結構言われてるからねぇ~っ。
ひっそりと早瀬さんの写真持ってる子、わりとい、」
私は最後まで心読み君の話を聞くことなく、ネガを取り戻すためHR前の教室を飛び出した。
どうして最近、こうも慌ただしいのが日常になってきているんでしょうか...そんな泣き言を胸に抱えながら。