知らぬは当人ばかり
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「今日も精が出るな。早瀬」
『岬先生...。花壇の花に水あげてるだけなのに、その言い方は何だか大げさに聞こえます。畑作業やってるわけじゃあるまいし...』
「ん?何だ、野菜を育てるのにも興味があるのか!?それだったらお勧めがあるんだが...」
何処をどう解釈したらそう聞こえるんだよ。
初っぱなから暴言で失礼致します。
私こと早瀬は、本日も日課の水やりを遂行中です。
アリス制御装置であった眼鏡粉砕事件があってから、暫く経つのですが。
粉砕した当人である罪悪感からなのか、岬先生とはあれから話す機会が増えたように思います。
「ところで早瀬。その、あれから眼鏡をしなくなったようだが...。まさか、直せない程酷かったのか?」
『え"。えぇっとぉ、それは~...』
「金額の方は大丈夫なのか?壊した責任もあるし、やはり俺が...」
『あぁーっとぉ!そそ、そう!これを機にコンタクトにしちゃいなよって鳴海先生に言われたから、思い切ってコンタクトにしたんですよぉー!』
「...鳴海が?」
『そう!鳴海先生が!あははははー』
その場しのぎの真っ赤な嘘ですがね!
平均をまっしぐらに行くのが、私でありますからね。裸眼でも人並みには見えます。
こうでも言わないと、ただでさえも責任感が強そうな岬先生はいつまでも気にしそうです。とはいえ、咄嗟に嘘をついてしまいました...。
でも悪いのは絶対鳴海先生。諸悪の根元あれだから。うん。私悪くない!
むしろ今現在尻拭いしてやってんだから、感謝し敬いなさい!
『あっ、そういう岬先生の方こそ精が出てますよねっ!その大荷物、どうしたんですかー?』
「あぁ。これか?干し草なんだがな。飼育係の子達が、動物の寝床に必要だと言ってたから...」
『へぇーっ。そんな事までするんですかぁ?岬先生凄いですねぇーっ!』
「そ、そうか?」
話を逸らしたい気持ちが有り余り、何故かテンションが高くなってしまいました。何これ自分で言ってて露骨過ぎる。
まぁ、でもいいか。頭をポリポリかいてる岬先生は、満更でもなさそうですし。引いてる訳ではない...筈。多分...。
「これを持っていこうと思っていたら、ちょうど早瀬を見掛けたからな。最近は元気でやってるのかと思っ...ん?」
『岬先生、何だか変なブザーみたいな音がしませんか?』
「...これは」
『心なしか、何処かで聞いた事があるような...はっ』
先生がポケットから取り出した小型機械を見て思い出しました。
ちょっと前の出来事の筈ですが、今はもう遠い昔の事のよう。
私が謎の生命体を追って、温室に無断侵入した時です。岬先生、似たような物を持っていたように思います。
多分、謎の生命体達...いえ。先生の大事な愛息子もしくは愛娘を守る為の侵入者対策...って。
『こっ、小型カメラ付き...!?何か機能が進化してませんか!?』
「あぁ...。問い詰めても白々しくとぼける奴がいるんでな...約一名」
『あー...はい。約一名ですよね。意図的にそんな事する人は』
「早瀬」
『ぴゃっ、ひゃいっ!?』
「悪いがこれを動物小屋まで届けてくれないか。急ぎの用事が出来た」
『みみ、みたいですね...ははっ。お気をつけてー...』
「悪いな」
次の瞬間、突風を起こす程の俊足で岬先生は走り去ってしまいました...。
その背中からは明らかな殺気がにじみ出ております。えぇ。手に取るようにして分かりますとも。
ふと足元に目をやると、初等部の私が抱えていくにはちょっと荷が重いであろう枯れ草。失礼、干し草。
これだけの量を運ぶのは、少し骨が折れそうです。
...。
一度本当に死んでくればいいと思います。
死んでその性格を直してこいや。初等部担任。