夕焼けの記憶
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『祭りの後の、せわしさよー』
出だしが独り言で失礼致します。
私こと早瀬由香は、只今アリス祭大方付けの波に飲まれている真っ最中でございます。
不思議付き能力のお祭りでしたから、正に夢の国のような数日間でしたね。外部のお客を呼んだのもあってか、それは盛大に。
たが芋づる式に盛大な後片付けが待っているというなら、そんなロマンはひと欠片も要らない。
願わくば、最近益々遠退いてしまっている惰眠という名の心の平和をどうか私に。
『とりあえずお化け屋敷小道具(その他)は、とりあえず潜在系教室へぶち込む...っと。
というか、何ですか(その他)って。おまけに段ボール湿ってるような......
何でこんにゃく入ってるんだよ!?』
「てめーは一人でもうるせーのかよ。バカその2が」
『ひぎゃっ!?』
それは普通に捨てろよ!そう一人突っ込みして、華麗にオチを決め込もうとした所。
背後から突如現れた刺客...もとい、日向棗君に蹴り飛ばされました。
姿が見えなくとも分かりますとも。
出会い頭にこんな仕打ちをする人なんて一人しかいませんから。
何より呼び名が...。私、佐倉さんよりは長く学園にいるのですけど、その2ポジションなんですね。どうでもいいですが。
「......紐パンかよ。痴漢かてめーは」
『!?ちちちちち違っ、違いまっせ!いやっ、違う!!います!そういう飾り!飾りが付いてるだけですか...っ、むぎゅっ!?』
「ちょっと黙ってろ」
『むーっ!!』
物申さずにはいられないような事突っ込んどいて何言ってんですか、この人!
大体そういう所をちゃっかり見ちゃう人の方が変態じゃないんですか、どうなんですか!
...そう、訴えてやろうと思ったんですがね。
目殺されました。
造語ですがね。いや、本当に。マジでひと睨みされただけで殺されたのかと思いましたよ。
でもとりあえず生きてるみたいです。良かった。
「......」
『...むっ?』
「おい、いたぞ!こっちだ!」
「手間かけさせやがって...!」
私と日向君の姿が、誰かによって発見されたのかと一瞬思ったのですが。そうではないようです。何故なら目殺と共に物影へと押し込められましたから。
...多分、こういった状況に慣れているんでしょうね。
声の主から死角になっているであろう場所からこっそり覗くと、そこにいたのは中等部の男子生徒ズ。
ズって何って。複数なんですよ。おまけに何かを取り囲むかのようにしているんですが...。
その真ん中には、誰か入るんでしょうか。
「コイツ、聖陽一だろ。危力系の」
「棗の奴が気にしてるらしいじゃん。このガキさえ手玉に取れば、棗をギャフンと言わせてやれるぜ!」
「おい、アリス使われない内に押さえろ!」
「...チッ」
『むわっ!?』
影で事の成り行きを見ているかと思った矢先の事であります。私こと早瀬は、日向君の舌打ちと共に見事ポイ捨てされました。
自分を陥れる為に弟分をダシに使われる状況を見てしまったら、当然といえば当然かもしれないですが。
というか、ギャフンとか久々に聞いたな...。やっている事といい、先輩方の低俗さが伺えま...でなくて!
『ちょっ、ちょちょちょっ!待たれい日向君!』
「ぐっ!?...てめぇ...」
『...あー。えっとですね。勢いがつくと、大体はそれってあり余る感じじゃないですか?ほら、その上とっさの行動ですし!悪気はないです。全く!
大体その制服のリボン首から掛けてるだけ状態って、尚更つかみやすかったというか...。うん。だからそれを思い切り引っ張ったの事故!事故ですから!』
「先に逝きたければそう言え」
『おぉおお言葉ですがねっ!日向君っ。あの修羅場に単身突っ込んで、どうするつもりなんですか!?
アナタがひと暴れした日には、また警報鳴っちゃいますよ!それでめでたく罰則受けて、聖君はありがとうと微笑むとでも?馬鹿なんですか!?』
「だったらてめーには何か策があるってのかよ!」
『あるから言ってんですよ!この、バホー!』
「...あ?」
『ある人は言いました。目には目を。歯には歯を。そして...三流野郎には、三流の制裁を』
「...つまりてめーは三流なんだな」
この、最上級馬鹿が。...言葉にこそ出していませんが。もうね、瞳がそう訴えていましたよ。
彼はきっと目で物を言うタイプですね。眼力強いだけに。分かりますとも。
今にも爆発しそうだった(アリス的な意味含む)程の怒りが空振ってしまったせいで、日向君は最早呆れ果てておりますが。
まぁ、手痛いお仕置き食らわなくて良かったということで。前向きにとらえましょう。
そして日向君が大人しくなってくれて良かったです。
...私も今、大分頭にきている。
まず用意致しますのは、普通に処分して欲しかったこんにゃく。そしてそれと一緒に突っ込まれていたロングヘアーのカツラを装着。やけに湿っていたのは多分気のせいではないでしょう。
私こと早瀬は、野球選手のようにこんにゃくを振りかぶって...
「ぶへっ!?」
「何だよ!どうし...ヒイィィ!?何だコイツいつの間に!?さっ、貞○!?」
『...うーらーめーしーやー』
「冗談じゃねぇ!俺は逃げる!」
「馬鹿!置いてくな!俺も...っ」
「うわあぁぁ!」
『......』
確かに三流野郎とは言ったけれども...。
こんにゃくに気をとられている内に、長い髪をズルズル垂らして近付いただけでこれ程驚いてくれるとは。逆にビックリしました。
まぁ、聖君のアリスだと思い込んだのかもしれませんが。
因みに正義は勝つと言ってドヤ顔してみたら、調子に乗んな貞○野郎と日向君に罵倒されました。
「...アホねーちゃ」
『聖君、私の事をなんて呼び方してくれてるんですか!?』
「間違ってはいねぇ」
『日向君、アナタ確実に心の中でほくそ笑みましたね...!?』
「別に笑ってねーよ(笑)」
『こっ、こんの...っ!』
だったらその語尾は一体何だと言うんですか!全く!
来る来るきっと来ると歌いながら呪ってやりたい。この輩、人をコケにし過ぎです。
先程の三流野郎とさほど変わらない度胸で、実現出来ないであろう闘志に燃えていた時です。
くいくいと制服のスカートを引っ張る毒舌天使が。
「ありあと...」
『...あー、まぁ。その。困った時はお互い様と言うことで』
「おたがい?」
『うーん...。あれです。助け合えばいいって事です』
先程は辛辣な言葉を吐いた毒舌っぷりだったというのに...こっちが毒を抜かれた気分です。見た目が可愛らしいのもあって。
ふと聖君の足元に目をやると、膝を擦りむいてしまったのでしょうか。うっすらと出血していました。
こんな小さい子が、さっきの状況をひたすら耐えていたのかと思うと...何とも、やるせない気持ちです。
それだけ日向君を慕っているというのもあるのかもしれませんが。それでも、あまりにもこれは...。
『流石、男の子ですね。怪我しても泣かないなんて。でも...ていっ』
「うっ?ねーちゃ、何すりゅ...」
『その顔は、良くないです。いただけません。夫婦喧嘩を嫌う犬も食べようとは思わないでしょう』
「因みにその語学力のなさにも色々とやる気が失せる」
『ちょっと日向君は黙ってて下さいね』
泣かなかったイコール平気という訳ではないのでしょう。
聖君、物凄く眉間にシワを寄せてますから。片手で年の数を数えられる子が何ていう顔してるんですか。
その眉間をぐにぐにと押していたら、日向君に横槍入れられました。
ちょっとイラッとしてしまったので、つい黙っててなんて言ってしまいましたけど...。私、死なないですよね?
『"笑ってるのが、いい。何もかも笑い飛ばすくらいに明るくしてれば、自然に良いことがこっちに寄ってくるって"』
「...っ!」
『以上、お説教終わりです。さて、それよりも膝擦りむいてるみたいですけど。大丈夫ですか?』
「...いちゃい」
『じゃぁ、保健室に...』
「由香!お前...っ!」
『へっ!?な、何ですか日向君...っ。そんな怖い顔して...』
「その台詞...っ」
『え?』
「...。...いつまでそのカツラ被ってるつもりだよ」
『あ』
「...ねーちゃ、やっぱりあほ...」
どうにも日向君の態度が不自然な気がしたのですが。
自分の間抜けっぷりと幼児が吐いた毒舌に気をとられたせいで、結局その違和感を問い詰めることは叶いませんでした。
出だしが独り言で失礼致します。
私こと早瀬由香は、只今アリス祭大方付けの波に飲まれている真っ最中でございます。
不思議付き能力のお祭りでしたから、正に夢の国のような数日間でしたね。外部のお客を呼んだのもあってか、それは盛大に。
たが芋づる式に盛大な後片付けが待っているというなら、そんなロマンはひと欠片も要らない。
願わくば、最近益々遠退いてしまっている惰眠という名の心の平和をどうか私に。
『とりあえずお化け屋敷小道具(その他)は、とりあえず潜在系教室へぶち込む...っと。
というか、何ですか(その他)って。おまけに段ボール湿ってるような......
何でこんにゃく入ってるんだよ!?』
「てめーは一人でもうるせーのかよ。バカその2が」
『ひぎゃっ!?』
それは普通に捨てろよ!そう一人突っ込みして、華麗にオチを決め込もうとした所。
背後から突如現れた刺客...もとい、日向棗君に蹴り飛ばされました。
姿が見えなくとも分かりますとも。
出会い頭にこんな仕打ちをする人なんて一人しかいませんから。
何より呼び名が...。私、佐倉さんよりは長く学園にいるのですけど、その2ポジションなんですね。どうでもいいですが。
「......紐パンかよ。痴漢かてめーは」
『!?ちちちちち違っ、違いまっせ!いやっ、違う!!います!そういう飾り!飾りが付いてるだけですか...っ、むぎゅっ!?』
「ちょっと黙ってろ」
『むーっ!!』
物申さずにはいられないような事突っ込んどいて何言ってんですか、この人!
大体そういう所をちゃっかり見ちゃう人の方が変態じゃないんですか、どうなんですか!
...そう、訴えてやろうと思ったんですがね。
目殺されました。
造語ですがね。いや、本当に。マジでひと睨みされただけで殺されたのかと思いましたよ。
でもとりあえず生きてるみたいです。良かった。
「......」
『...むっ?』
「おい、いたぞ!こっちだ!」
「手間かけさせやがって...!」
私と日向君の姿が、誰かによって発見されたのかと一瞬思ったのですが。そうではないようです。何故なら目殺と共に物影へと押し込められましたから。
...多分、こういった状況に慣れているんでしょうね。
声の主から死角になっているであろう場所からこっそり覗くと、そこにいたのは中等部の男子生徒ズ。
ズって何って。複数なんですよ。おまけに何かを取り囲むかのようにしているんですが...。
その真ん中には、誰か入るんでしょうか。
「コイツ、聖陽一だろ。危力系の」
「棗の奴が気にしてるらしいじゃん。このガキさえ手玉に取れば、棗をギャフンと言わせてやれるぜ!」
「おい、アリス使われない内に押さえろ!」
「...チッ」
『むわっ!?』
影で事の成り行きを見ているかと思った矢先の事であります。私こと早瀬は、日向君の舌打ちと共に見事ポイ捨てされました。
自分を陥れる為に弟分をダシに使われる状況を見てしまったら、当然といえば当然かもしれないですが。
というか、ギャフンとか久々に聞いたな...。やっている事といい、先輩方の低俗さが伺えま...でなくて!
『ちょっ、ちょちょちょっ!待たれい日向君!』
「ぐっ!?...てめぇ...」
『...あー。えっとですね。勢いがつくと、大体はそれってあり余る感じじゃないですか?ほら、その上とっさの行動ですし!悪気はないです。全く!
大体その制服のリボン首から掛けてるだけ状態って、尚更つかみやすかったというか...。うん。だからそれを思い切り引っ張ったの事故!事故ですから!』
「先に逝きたければそう言え」
『おぉおお言葉ですがねっ!日向君っ。あの修羅場に単身突っ込んで、どうするつもりなんですか!?
アナタがひと暴れした日には、また警報鳴っちゃいますよ!それでめでたく罰則受けて、聖君はありがとうと微笑むとでも?馬鹿なんですか!?』
「だったらてめーには何か策があるってのかよ!」
『あるから言ってんですよ!この、バホー!』
「...あ?」
『ある人は言いました。目には目を。歯には歯を。そして...三流野郎には、三流の制裁を』
「...つまりてめーは三流なんだな」
この、最上級馬鹿が。...言葉にこそ出していませんが。もうね、瞳がそう訴えていましたよ。
彼はきっと目で物を言うタイプですね。眼力強いだけに。分かりますとも。
今にも爆発しそうだった(アリス的な意味含む)程の怒りが空振ってしまったせいで、日向君は最早呆れ果てておりますが。
まぁ、手痛いお仕置き食らわなくて良かったということで。前向きにとらえましょう。
そして日向君が大人しくなってくれて良かったです。
...私も今、大分頭にきている。
*
まず用意致しますのは、普通に処分して欲しかったこんにゃく。そしてそれと一緒に突っ込まれていたロングヘアーのカツラを装着。やけに湿っていたのは多分気のせいではないでしょう。
私こと早瀬は、野球選手のようにこんにゃくを振りかぶって...
「ぶへっ!?」
「何だよ!どうし...ヒイィィ!?何だコイツいつの間に!?さっ、貞○!?」
『...うーらーめーしーやー』
「冗談じゃねぇ!俺は逃げる!」
「馬鹿!置いてくな!俺も...っ」
「うわあぁぁ!」
『......』
確かに三流野郎とは言ったけれども...。
こんにゃくに気をとられている内に、長い髪をズルズル垂らして近付いただけでこれ程驚いてくれるとは。逆にビックリしました。
まぁ、聖君のアリスだと思い込んだのかもしれませんが。
因みに正義は勝つと言ってドヤ顔してみたら、調子に乗んな貞○野郎と日向君に罵倒されました。
「...アホねーちゃ」
『聖君、私の事をなんて呼び方してくれてるんですか!?』
「間違ってはいねぇ」
『日向君、アナタ確実に心の中でほくそ笑みましたね...!?』
「別に笑ってねーよ(笑)」
『こっ、こんの...っ!』
だったらその語尾は一体何だと言うんですか!全く!
来る来るきっと来ると歌いながら呪ってやりたい。この輩、人をコケにし過ぎです。
先程の三流野郎とさほど変わらない度胸で、実現出来ないであろう闘志に燃えていた時です。
くいくいと制服のスカートを引っ張る毒舌天使が。
「ありあと...」
『...あー、まぁ。その。困った時はお互い様と言うことで』
「おたがい?」
『うーん...。あれです。助け合えばいいって事です』
先程は辛辣な言葉を吐いた毒舌っぷりだったというのに...こっちが毒を抜かれた気分です。見た目が可愛らしいのもあって。
ふと聖君の足元に目をやると、膝を擦りむいてしまったのでしょうか。うっすらと出血していました。
こんな小さい子が、さっきの状況をひたすら耐えていたのかと思うと...何とも、やるせない気持ちです。
それだけ日向君を慕っているというのもあるのかもしれませんが。それでも、あまりにもこれは...。
『流石、男の子ですね。怪我しても泣かないなんて。でも...ていっ』
「うっ?ねーちゃ、何すりゅ...」
『その顔は、良くないです。いただけません。夫婦喧嘩を嫌う犬も食べようとは思わないでしょう』
「因みにその語学力のなさにも色々とやる気が失せる」
『ちょっと日向君は黙ってて下さいね』
泣かなかったイコール平気という訳ではないのでしょう。
聖君、物凄く眉間にシワを寄せてますから。片手で年の数を数えられる子が何ていう顔してるんですか。
その眉間をぐにぐにと押していたら、日向君に横槍入れられました。
ちょっとイラッとしてしまったので、つい黙っててなんて言ってしまいましたけど...。私、死なないですよね?
『"笑ってるのが、いい。何もかも笑い飛ばすくらいに明るくしてれば、自然に良いことがこっちに寄ってくるって"』
「...っ!」
『以上、お説教終わりです。さて、それよりも膝擦りむいてるみたいですけど。大丈夫ですか?』
「...いちゃい」
『じゃぁ、保健室に...』
「由香!お前...っ!」
『へっ!?な、何ですか日向君...っ。そんな怖い顔して...』
「その台詞...っ」
『え?』
「...。...いつまでそのカツラ被ってるつもりだよ」
『あ』
「...ねーちゃ、やっぱりあほ...」
どうにも日向君の態度が不自然な気がしたのですが。
自分の間抜けっぷりと幼児が吐いた毒舌に気をとられたせいで、結局その違和感を問い詰めることは叶いませんでした。