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『あんどうせんぱい...』
「んー?どしたー、由香」
『わたしはもう、ベアのこやがある方角に足をむけてねれません...っ』
「お前大げさ!よっぽどベアの気遣いが身に染みたわけか」
当たり前です!
結局。私をこのままの状態にする訳にも、日向君も放置しておく訳にもいかないという訳で。
安藤先輩が私を連行する係と、ベアが日向君を捕獲する係と二手に分かれました。
聞いて下さいよ、ベアったら!
ついでに食料も持っていってくれたんですよっ。何て気が利くクマ!
何から何まで、本当に頭が上がりません。
『ありがたすぎるから、ついでにおがんでおこ...』
「なーにブツブツ言ってんだよ、由香。しっかりつかまってないと落ちるぞ?」
『にぁ...っ!だだ、だから、じぶんで歩けるからおろして下さいってば...っ』
「だーめ。また転んだらどうするんだよ。大体、お前の歩調に合わせてたらいつ帰れるか分かんねーし。
黙っておんぶられてればいーの」
『ふぐぅ...』
またしても的を射た意見に、うなるしかありません。
私こと早瀬は、只今安藤先輩におんぶされちゃってる感じです。
見た目は五才児でも、中身までそうではありません。恥ずかしいから止めてほしいのに。
どうしようもないようです。
落ち着かないし、何となく居心地が悪いなぁと思う中。
対する安藤先輩は、鼻歌まで歌っちゃうくらいにご機嫌なようです。
『...せんぱい、なにかいい事でもあったんですか?なにやらうれしそうですけど』
「嬉しい?...あー、そうなのかもな」
『...?』
「なぁ、由香。ちょっと前にさ、能力別授業の後にこうやって二人で帰った時の事覚えてるか?」
『あー...特力へきょうせい的に連れてかれた時ですね』
「その時にした話は?」
『...どしゃぶりの雨のはなし』
後にきっと黒歴史になると思うのですが。
私が学園アリスに転校した初日の事。
どしゃぶりの雨の中、大泣きしました。色々な事が、もう限界で。
それをたまたま、安藤先輩が目撃したらしい...。確か、先輩とはそんな話をしました。
「あの日から、ずっと後悔してた。何ですぐに駆け寄ってやれなかったんだろうって。
ちょっと目を離したすきに、お前を見失っちまったんだ」
『雨で視界もわるかったですし、しかたないですよ』
「でもさ。今日は泣いてる由香を、真っ先に見つけることが出来た。こうやって側にいて、一人にさせないでいられるのが...嬉しいのかもな」
『......』
ご機嫌な理由を聞いて、あ然としました。そんな理由で...嬉しくなってたんですか?
そういえば先輩って...。あの日、一目しか見てない私の事がどうして分かったんでしょうか。
まさか...何十人といる初等部生徒の中から調べあげたんでしょうか。
ご機嫌な理由といい、ここまで来ると、私を気にかけてくれているのが過剰じゃないかと感じます。
『あんどうせんぱいは...どうして、そこまでわたしのこと気にかけてくれるんですか?』
「うーん、どうしてって言われるとハッキリ答えらんねーけど...ただ、」
『ただ?』
「由香に、笑って欲しかったんだ。見てるこっちが痛くなるぐらいに、大泣きしてたからさ。何とかしてやりたくて、あれから必死にお前の事探したんだぜ?本当に」
『ひとめ、見かけただけでそんなに...?』
「そーなの。何かせずにはいられない何かがあったの」
『ハッキリこたえられないとは言ったけど...なにかなにかって連呼しすぎです。せんぱい』
思わず突っ込みいれてしまうと、だまらっしゃいと怒られてしまいましたが。
声は全然怒ってなくて、思わず笑ってしまいました。
私、さっきまで泣いてたのが嘘だったんじゃないでしょうか。それくらい自然に笑顔が出ました。
「出来れば俺が泣いてるの止めさせて、俺が笑顔にしてやりたかったけど...。お前って、案外強いな」
『つよい?わたしが?』
「俺がやっとの思いで由香を見つけた時には、ちゃんと笑ってたからさ。だから俺は見守る方に回ったわけ」
『カゲつかいがカゲながらに...』
「...お前って時々オヤジくさいこと言うのな」
どうして気にかけてくれているのか、ハッキリとした答えはもらえなかったけれども。一つ、分かったことがあります。
笑っていてほしいからという理由だけで、私の事をずっと見守ってくれている人がいること。...それは
「ん?どしたー、由香。いきなりしがみついてきて」
『せんぱい...わたしは、しあわせものです』
「こんなんで幸せとかお前キャパ狭すぎ!そんなんじゃこの先持たねーぞ?
今が幸せなら、これからもっと幸せになって、あの大雨の日の事なんて帳消しにしちまえ。
だから泣くな。由香」
『は...はい"...っ』
おんぶされてるから、顔は見えない筈なのに。どうしてか泣いてたのがバレてしまいました。
ずっと私を見守ってくれていた安藤先輩には、きっと何もかもがお見通しなんでしょうね。
鼻水つけるなよー?だなんて、先輩が茶化すように言うもんだから。
泣きながら、笑ってしまいました。
ふと空をあおぐと、そこには。
いつか二人で帰った時のような、優しい夕焼け色が広がっていました。
next→(オマケ)