(右へ)

では、本能に従って右へと続く道へといざ！そう思って意気揚々と突き進んで、間もなくの事です。



『うん...？地震？』



さっきから地面が規則的に揺れてるんですが。いや、これ...何かの足音でしょうか？

ドスンドスンと、何かが歩いてる音が...これ、近づいてません？
何だか嫌なフラグが立ちそうな前に、早々にここを立ち去って...。



『...ぎにやあぁあぁぁ！？』



お約束展開もうやめて下さいよおぉぉ！
急に日が陰ったなーと思って空を見上げたら、何で視界におさまらない程のでっかいひよこ！？

え、しかもこっちに向かって屈んでません！？私、補食対象ですか！？
こんな状態から逃げられるわけないです...っ。逃走不可の負けイベだなんて鬼畜だ...っ！



『ひょいぃやあぁぁ！？離...っ、されると、多分死ねるからそっと降ろして下さいぃぃ！！』

「由香！？何でここに...」



服の端っこをくちばしで捕まれて、そりゃぁもう木よりも高く持ち上げられてマジ終わったと思った矢先。

何やら聞き覚えのある声が。



「...なに遊んでるんだ？」

『何処がどうなってそんな解釈に！？助けて下さいよ、安藤先輩いぃぃ...っ』



というか。安藤先輩が軽く小人に見えそうな高さを改めて実感すると、こう、血の気が...。もしこのひよこ？が、面白半分にこの高さから私を落としてしまったら？

...。

限界です。



『も...無理...』

「由香！？」



頭からサーッと血の気が引いてしまったせいでしょうか。目の前の景色が白く塗りつぶされていくのと一緒に、意識も薄れていきました。

完全に気を失う前に、安藤先輩のようやく焦った声が聞こえたような気がしました。







...。
何だろう...。うるさい。周りはやけに騒がしくて。おまけに、やたら生ぬるい風がもろに当たる...。



「ぶひっ」

『！？うひやあっ』

「あ、由香ちゃん気が付いた？」

『ぶぶ、豚が喋った！？』

「ぶはっ！」

『！？あ、安藤先輩っ？』



よく見たら、私の目の前にいる豚の向こう側には原田先輩がいました。
その隣には、お腹抱えて笑い倒れている安藤先輩が。

状況がよく飲み込めませんが...。私は気を失った後、どうやら動物小屋に連れてこられた見たいです。

というか、さっきの生ぬるい風はもしや...。と思った矢先。
今度はヒュッと切り裂くような風が。



「くぉら、翼ぁ！」

「ぎゃあぁぁぁ！！」

『は』

「由香ちゃん気絶させておいて、てめーは何笑ってんだよ！このっ！」

「ちょっと、待て待て！マジで！」

「問 答 無 用」

「腰は、そんな方向には曲がら...な"っ！.........」

『あああの！私が見目麗しい原田先輩を豚と見間違えるとか、そもそもそういう事やっちゃったのが悪かったんです！それはもう百パーどころか、１３割にものぼる程に！ねっ！？
だっ、だからそれ以上あり得ない方向に腰曲げないで下さいっ。

動物小屋で殺人事件が起こる前に！！』



動物小屋のど真ん中で格闘技が炸裂して、私たちどころか動物達も含めてもう大混乱です。

落ち着きを取り戻すまでに、暫くの時間とかなりの労力を消費することになりました...。

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