一万だ記念!
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*
『鳴海先生って...』
「んー?」
『変わりましたね』
「えぇ?」
しばらくして。月明かりのみで照らされている談話室にて、私こと早瀬と鳴海先生は並んで座り込んでお話し中です。
本来なら、早く部屋に戻りなさいと言われる所なんでしょうけど。
多分、見透かされているのでしょう。
私がまだ自分のアリスに怯えているのを。
「変わったって...体重は別に増えてないけどなぁ」
『いえ、見た目の話ではなく...っ!中身、って言ったらいいんでしょうか...』
「中身?」
『えぇと...前はもっと、生徒の事情にいちいち踏み込まなかったですよね?一線どころか、ニ線も三線も引いて関わらないように、的な。
初等部の子に告白されて、断った理由をちゃんと話すなんて正直以外でした。大人の都合とやらで、てっきり誤魔化すもの、か、と...』
「......」
『は...っ!』
今の鳴海先生があまりにも話しやすくて、言ってからぶっちゃけ過ぎだった事に気が付きました。
どうしよう。曲がりなりにも先生なのに...っ。私ったら失礼なことを...!
腐っても先生。いや、鯛。
失礼千万は心の中だけで吐露するのがセオリーだったのに...!
悔やんでいたら、鳴海先生は何事も無かったかのように話を続行しました。
良かった...。あんまり気にしてない、のでしょうか?
「...そういう由香ちゃんは、よく人の事を見てるんだね」
『それって...私の言ったことは肯定ってことですか?』
「今日の由香ちゃんは、痛いところをズバズバ突くなぁ」
『ぁ、わわっ!ごめっ、なさ...!いや、あぁのっ。でもでもっ。私、今の鳴海先生の方が好きですよっ?
えぇと、何と言いますかねっ?その、つまり、ですね。前の鳴海先生だったら、多分、こうやってお話に付き合わずに、部屋に戻って寝なさいって先生らしい台詞を...』
「そっかー。由香ちゃんにとっては、今の僕は先生らしくないのかー」
『ぎや...っ!けけ決してそんな意味では...っ!』
いえ、教師らしくないとは常々思ってますけどね。
こういう時、口下手な自分が憎らしいです。伝えたい事を上手く伝えられないから。
ちょっとしょんぼりしていたら、慰められるみたいに頭をポンポンと叩かれました。
「本当に、よく見てる...」
『...?』
「ねぇ、由香ちゃん。僕がどうしてアリス制御装置を持たせたか、分かる?」
『わ、分かりません...』
「今の君は、全てに対してあまりにも怯えすぎている。だから何を目にしても見て見ぬふりをしてた。...君の言う、以前の僕のようにね」
『あ...』
「少し似ているなって感じたのがキッカケだったのかな。このままじゃ駄目だと思ったんだ。
僕はもっと君に知って欲しいんだ。確かに辛いことはあるけど、それだけじゃない。もっと沢山の出来事が君の目の前に広がっているって事を。
それらを全部拒絶して大人になったら、どうなるか...。僕を見れば分かるんじゃないかな」
『鳴海先生...』
「ねぇ、由香ちゃん。約束して欲しいんだ」
....月の光は、女性を綺麗にする。そんな言葉を何処かで聞いた事がありますが。それは嘘だったのかもしれないと思いました。
私に向けて柔らかく向けられた笑顔は、月光で彩られて更に綺麗に見えて。
それは心臓がドキリと高鳴ってしまう程でした。
うん。これはまぁ。何というか、確かにモテますわな...。
「今は自分のアリスが恐いままでもいい。でもその代わりに、色んな事を体験して、沢山の事を知って欲しいんだ」
『色んな、事...?』
「そう。周りから一線引かずに、関わっていってほしい。そうやって積み重ねた時間は、いつかきっと君の大切な力になるから」
『それが力になるんですか?』
「いずれ分かる時がくるよ。約束してくれるかな?してくれないと、イタズラしちゃうよー?なーんてね!」
『先生...。今、凄く大事な事を言ったのに、何だか色々台無しです』
「だって由香ちゃんってば、難しく考えすぎだよーっ。眉間にしわ寄せちゃって、ちょっと恐い顔だよ?」
『うぐ...っ』
「ようは、今をどんどん楽しんじゃえばいいって事だよ!分かった?」
『わ...分かりました...』
何だか最初に言ってた事と微妙に違くないですか?
そう突っ込みたかったけれど、鳴海先生がいい子だと言わんばかりにまた頭を撫でだして口をつぐみました。
もう少しだけ、先生のその優しさに甘えていたかったから。
久しぶりに自分のアリスのせいで恐い目をみたけれど、悪夢を見ずに眠れそうです。
でも鳴海先生にお礼を言うのは、何だかしゃくで。沢山助けてもらったのに、結局お礼は言えずじまいでした。
next→(オマケ)