(寮に向かう)

今日の鳴海先生…。上手く言えないんですが、こう、圧力がですね。

基本的に逆らえない人ではあるんですけどね。アリスの餌食になるのがオチですから。
けど、特に今日は言う通りにした方が良さそうです。

大人しく従おうねと言わんばかりの、笑顔ではカバーしきれなかった黒いオーラがただよっていましたからね。

…思い出したら、身震いしてしまいました。



『と、とにかく。花だんのお花たちには申し訳ないけども、水やりは明日の朝イチに行きましょう…っ。
今は一刻も早く寮に向か、』

「さっきからかなり大きい独り言連発だけど…。何してんの早瀬さん。こんな所で」

『ほんにゃっ！？こ、ここ心読み君…！？』



どうやら、いつの間にか心の声がそのまま声に出ていたようです。
後ろから声を掛けられて振り向くと、呆れ顔な心読み君が。
でもパッと見、その表情は笑顔にしか見えません。

…うん。
盛大な独り言を聞かれてしまったのが、心読み君でまだ良かった。
他の人よりは気心知れてますし。



「早く行かないと、ハロウィンパーティー遅刻だよー」

『…やっぱり心読み君にも声が掛かってたんだ』

「というか、クラスの子みんなだったよー。鳴海先生の言い方だと、自由参加だけど絶対来いやって感じだったー」

『更にやっぱりそう思ったのって、私だけじゃなかったんだ…！』

「まぁいいんじゃないの？タダ飯だし」

『…止めてもらっていいかな、その言い方』



タダ飯うんぬんを気にするだなんて、一体どんな小学生ですか。
何というか、うん。シュールだ…。

心読み君の口からそんな言葉が出たかと思うと、余計に。



「あ、そうだー。早瀬さん早瀬さん」

『ん？どうかしたの、心読みく、』

「トリックオアトリート！」

『…は？』

「あれー？もしかして早瀬さん、知らない？
ハロウィンではお決まりの台詞で、お菓子をくれなきゃイタズラするぞっていう…」

『いやいや、知ってるから…。実際にやったことはないけど、大体は知ってるから』



むしろつい先程、一足お先に体験させてもらったと言うか。…いや。

笑顔と言う名の脅迫でした。

そして、鳴海先生からもらったお菓子が早くも活躍しそうな予想外展開。
お菓子をあげれば、多分この場は収まるんでしょうけど…。
ノーマルかどうか非常に疑わしいブツなんですよね、これ…。

もしアブノーマルだったら、この場はしのげたとしても後の展開が怖い気がする。それがあの心読みだと、尚更です。

どうも今日は二者択一を迫られる日のように思います。
とりあえず、どうしましょうかね？



お菓子をあげてしまう→8p

良心が痛むので、イタズラを覚悟する→9p