(それでも立ち向かえるのは、-下-)
「リングマ、アームハンマーだ！」
『エネさんねこだましを！そのまま体当たりです！』
「グマー！」
「ニァ...っ！」
『...っ。エネさん、頑張って...！』



「確実にダメージを与えられる指示を、ユカはよく考えてる。だが...」
「そうは言うけどタケシ、正直私もう見てられないよ...っ。悔しいけどシンジの言う通り、攻撃があんまり通用してないみたいだし。これじゃぁ...っ」
「ユカー！いいぞ、その調子だ！」
「サトシ...」
「どれだけ不利なでも、それをひっくり返してきたバトルを俺は何度も見てきたんだ。あんま心配するなよ、ヒカリ！ユカが諦めさえしなければ、絶対に...！」



「そんなものか」
『...』
「予想の範囲内だ。そもそもそのポケモンは大した威力もないから、バトル向きでは...」
『なめないで、下さい』
「...何？」
『この子とは出会って間もないけど、それなりに見てきたつもりです。パワーは確かに劣るかもしれません。でも、その代わりに...』
「御託はコイツを倒してからにしろ。リングマ、とどめだ！はかいこうせん！」
『エネさん、距離を取って避けて下さい！』

指示通りにかなりの距離をあけてくれたので、辛くも避けることに成功しました。
あんな派手な攻撃、近ければ直撃は免れませんから。かなり離れてしまったけれど。でもエネさんなら、きっと。

『エネさん、スピードスターで石のつぶてを巻き上げて下さい！』
「そんな目くらまし、通用などするものか！」
『目くらまし？いいえ！チルさんが集中して攻撃した、足元へそのまま全て当てて下さい、エネさん！』
「何...っ！？」
「グ、グマ...っ！」

例えどれ程距離がひらこうが、狙った場所へ必ず命中させる。攻撃は確かに軽いかもしれませんけれど。これまで一緒に過ごしてきて見つけたエネさんの得意分野が、これだったんです。
そう。チルさんには同じ場所へダメージを重ねるよう戦ってもらったんです。あとは存分に、エネさん得意な戦い方をすれば好機になると踏みました。
有利な立場であると、正直なめきっていたであろうシンジさんを動揺させる事が出来たようですし。これは、チャンスです。

「ちっ！リングマ、体制を立て直...」
『逃しません！エネさんもう一度スピードスター！...の星に何とか乗って！』
「ニァ！」
「な...っ！」
『そのスピードに乗ったまま...ありったけのたいあたりを！』
「ニィアーっ！」

これ程までダメージを重ねても倒れないタフなクマだったらどうしようかと思ったのですが。
エネさんの渾身のたいあたりで、その巨体は地響きがこちらの足元にまで届くんじゃないかと思う程の振動を残して横たわりました。
間もなくシンジさんのポケモンの戦闘不能の判定の声が上がって、私は...。

『エネさん、ありがとうございます...っ。チルさんも。チルさんが頑張ってくれたからとれた一勝ですね...』
「ニァ！」
『それでもって、や、本当にもう...あの巨体倒すので何かもういっぱいいっぱい過ぎになったというか。あと一戦あるとか。嘘でしょ...？』
「ペース配分がなってないな。使えない」
『あれ今白星ひとつ上げたの私の筈なのに、何ですこの敗北感』