新たな道連れとともに
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(これから)
「そのチルット、出てきてくれたんだ!?うわぁ~っ、かわいい可愛い!...あ、またユカの頭に隠れちゃった」
「あんま怖がらせるなよなーヒカリ」
「え、もしかしてあたしのせい!?うぅ...ごめんなさい~っ」
「ポチャポチャ」
逆にヒカリさんの方がポッさまに世話をやかれてしまう姿は珍しくないのですが、まさかサトシさんにも突っ込まれるとは...。
ヒカリさん、大分昨日の事が堪えていたみたいですからね。少しでも心を開いてくれたのが嬉しかったんでしょう。
『ずっと心配してくれていたんですよ。怖がらなくて大丈夫ですから...』
「...チル...」
「~っ!かっ、可愛い...っ!」
「ちょっと落ち着けってヒカリ」
「だってサトシ!ユカの頭から、顔だけちょこんって出てるんだよ!?」
『それだけ聞くと、妖怪の親父殿を頭に飼っている気分になりますね』
「え、何それ?」
『いえ、こちらの話です』
「やっぱりユカは今日も分かんねーなー」
「ピカピカ」
えぇ。髪を針のように飛ばせることは出来ないのです。すみません。ちょっとふざけすぎました。
朝の食卓は、昨日とうって変わって明るく和やかなものでしたけれど。だからと言って、全ての問題が片付いたのかと言われたら、決してそうではなく...。
「昨日より進歩があったのは良い事なんだが...」
「何で浮かない顔してるんだよ、タケシ」
「今後の事を考えるべきじゃないかと思ってな」
「え?ユカがゲットしちゃえばいいじゃない!凄くなついてるみたいだし」
『いえ。これはなついていると言うより、たまたま逃げた先に私の頭があったっていうだけじゃないですか...?』
私の言い分にいまいち納得出来ないヒカリさんはさておき。
根無し草の旅をする身としては、この先どうするかという問題は嫌でも付きまとう訳でして。
「チルット。お前はどうしたいんだ?もし群れに帰りたいんだったら、俺達から言ってみるけど」
「チル...」
「それが嫌なら、ヒカリの言う通り俺達と旅をしてみるか?」
「チル...」
「うーん、イマイチどっちもいい反応じゃない気がするー...」
「確かに困ったかもなー、これは」
そう言って、私の頭部に注目したままサトシさんとヒカリさんはため息をひとつ。
どうにもそれが私に向けられている既視感がして、何とも言えない気持ちにさせてくれますね。
「ユカ」
『はい?何ですか、タケシさん』
「ユカはどう思う?」
『私は...そう、ですね』
見上げるようにして頭上に視線を巡らせても、話題の主の様子どころか姿すら確認出来ない訳ですが。
自分そっくりの臆病なこのポケモンを目の当たりにしていると、それなりに思う所がある訳でして。
『...力』
「ちから?」
『この子、多分力が足りないんだと思います』
「それって体力的な事を言っているのか?」
『そう...ですね。それもあると思います。体が小さい分、スタミナもあまりないでしょうし...』
「まどろっこしいなーユカは。もっとハッキリ言えって!」
「お前はもう少し忍耐力を付けような、サトシ!」
「いてっ」
『はは...ありがとうございます、タケシさん。私、どうにも昔からこう、自分の意見を口に出すのが苦手で...』
「いや、いいよ。それで?」
サトシさんを押さえ込んで優しく先を促すタケシさんの姿は、今の私にとっては本当にありがたいです。
料理も出来て包容力もあるのに、残念ですね。モテないのが。いえ。すみません。逸れてる場合じゃありませんでした。
『その...。生きていく為には、狩りが必要でしょう?食料を手に入れる為の、物理的な力。それから...。群れの中で生活するのであれば、お互いの優劣が何処かしらある筈なんです。それに立ち向かう対抗心。何より...生きようと思う精神力』
「生きようと思うって、どういう意味?」
『え...と。ヒカリさんの場合だと、次のコンテストバトルに向けて毎日練習頑張ってるじゃないですか』
「うんうん。ポッチャマもね!」
『その頑張ろうって思える、やる気の源とでもいうんでしょうか...。心が元気じゃないと...色んな事が上手くいかなかったりするから』
「...もしかしてそれが、そのチルットの体が小さい原因になってるんじゃないかって事?」
『少なくとも関係しているとは思います。この小さな体で悪循環をぐるぐる繰り返しているんじゃないかって...』
「はーっ、ユカって色々考えてるのねー!」
「でも、だからって結局どうするんだよ?」
堪えきれずに結論を急ぐサトシさんは、またタケシさんにたしなめられていましたけど。
確かに、結論は大事ですよね。それがこの子にとってどう感じるものであったとしても。
『早い話が、この子が力を蓄えて生きていけるようにサポートしてあげればいいんじゃないかと』
「なぁんだ!じゃぁやっぱり、ユカがゲットしちゃえばいいじゃないの」
『...私。...私、は』
「...?どうかしたの」
『あの時...。メタさんをゲットした時は、周りに流されてしまったけど。私は、いつか帰らなければならないんです。元いた場所に。この子達を連れて行けないぐらいに...遠くへ』
「え...」
予想外の返答だったのか、皆言葉を失ってしまったようです。
唯一事情を知っているサトシさんも、何故か一緒になって。何でだよと突っ込みを入れそうになったけれど。今はとりあえず、いい加減結論を出しましょうかね。
『だから私と一緒にと言っても...時間が限られてます。それでも一緒に行く事を選んでくれれば、全力でサポートするつもりです。けど...どうしますか?』
「......」
「うーん、ユカの説得でもだんまりか...」
『そりゃそうですよ、タケシさん』
「え?」
『どんなに酷い目に遭っていたとしても、今まで生きてきた自分の棲みかを離れるのはためらいがあると思います。
オマケに一緒に行こうと言った当人はずっとではないけどねと無責任な事を言い出すし。ひとりになってしまったら、自分の帰る場所は何処にあるって言うんですか。怖いんですよ。きっと。とどまるのも。進むのも』
「会って間もないのに、よくそこまで心情察することが出来るな...」
『多分似てるんです。私と』
「うん?それって臆病な所がか?」
少なからず、境遇の部分も。その言葉は、喉の奥に無理矢理押し込みました。
口にしてしまえば、今度はこの場が凍りついた空気になりそうでしたから。
『例え別れる時が来たとしても。君とここにいる人達の縁は、繋がったと思うんです。一度繋がったものは、簡単に切れるものじゃない。孤独になってしまうという事だけは、無いです。絶対に』
「......」
『言ったでしょう?ここにいる人達は絶対に君を傷付けたりはしない。...顔見知りでもない迷子を、面倒見るんだっていうお人好しさんもいるぐらいですから。だから...』
「...チルッ」
『...あ』
小さな羽音と一緒に、頭が軽くなるのを感じました。
もしかして、このまま何処かへ飛んで行ってしまうのではという不安がよぎったけれど。着地点は私の目の前でした。
ちょこんという可愛らしい効果音付きで。
『...え?』
「チルッ」
『...これって、ナンパ成功ですかねタケシさん』
「その言い方は俺への当て付けと受け取っていいのかユカ」
「何でもいいから、そこはモンスターボールでしょ、ユカ!」
「何でも...だと...!?」
独りうちひしがれる青年は捨て置きまして。ヒカリさんの言われた通りにモンスターボールを取り出すと...。
チルットさんは自分からついばむようにボールをタッチして、赤い光に包まれて中に吸い込まれていきました。
「新しい仲間が増えたね!ユカ!」
『はい。...よろしくです、チルさん』
「それにしてもビックリしたー!故郷に自分のポケモンを連れて行けないだなんて!ねぇねぇ、ユカって何処出身なの?」
『え?え、えぇと。と、とにかく、ここからは凄く遠い所です。ポケモンもあんまり(というか、全く)いない所で...(先祖らしき生き物はいるけど)』
「へぇ~っ!確かにユカって、色んなポケモンに出会う度に大袈裟にビックリしてたよね...あと...」
「...サトシ?どうしたんだ。ぼんやりして」
「いや。何で忘れてたんだろうって思って。アイツ...ユカは。いつか帰っちゃうんだよな...元の世界に」
「...元の世界?それって、」
「サトシー!タケシー!早くしないと置いてっちゃうわよー?」
「あぁ!今行く!行こうぜ、タケシ」
「...思ったよりもややこしそうだなー、あの二人。暫くは見守っ...いや。うん。元からだな。それは」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
妙に気になるフシがあるように思えたから、少し注意してサトシとユカを見守ろうと思ったんだけど。よくよく考えてみれば、見守るという名の傍観は最初からやってたんだな。これが。
だからまぁいいか、別にこのままでも。大体、リア充空気に当てられて知るかっていう部分もあるんだよ正直(以上、タケシの微妙な補足)
「そのチルット、出てきてくれたんだ!?うわぁ~っ、かわいい可愛い!...あ、またユカの頭に隠れちゃった」
「あんま怖がらせるなよなーヒカリ」
「え、もしかしてあたしのせい!?うぅ...ごめんなさい~っ」
「ポチャポチャ」
逆にヒカリさんの方がポッさまに世話をやかれてしまう姿は珍しくないのですが、まさかサトシさんにも突っ込まれるとは...。
ヒカリさん、大分昨日の事が堪えていたみたいですからね。少しでも心を開いてくれたのが嬉しかったんでしょう。
『ずっと心配してくれていたんですよ。怖がらなくて大丈夫ですから...』
「...チル...」
「~っ!かっ、可愛い...っ!」
「ちょっと落ち着けってヒカリ」
「だってサトシ!ユカの頭から、顔だけちょこんって出てるんだよ!?」
『それだけ聞くと、妖怪の親父殿を頭に飼っている気分になりますね』
「え、何それ?」
『いえ、こちらの話です』
「やっぱりユカは今日も分かんねーなー」
「ピカピカ」
えぇ。髪を針のように飛ばせることは出来ないのです。すみません。ちょっとふざけすぎました。
朝の食卓は、昨日とうって変わって明るく和やかなものでしたけれど。だからと言って、全ての問題が片付いたのかと言われたら、決してそうではなく...。
「昨日より進歩があったのは良い事なんだが...」
「何で浮かない顔してるんだよ、タケシ」
「今後の事を考えるべきじゃないかと思ってな」
「え?ユカがゲットしちゃえばいいじゃない!凄くなついてるみたいだし」
『いえ。これはなついていると言うより、たまたま逃げた先に私の頭があったっていうだけじゃないですか...?』
私の言い分にいまいち納得出来ないヒカリさんはさておき。
根無し草の旅をする身としては、この先どうするかという問題は嫌でも付きまとう訳でして。
「チルット。お前はどうしたいんだ?もし群れに帰りたいんだったら、俺達から言ってみるけど」
「チル...」
「それが嫌なら、ヒカリの言う通り俺達と旅をしてみるか?」
「チル...」
「うーん、イマイチどっちもいい反応じゃない気がするー...」
「確かに困ったかもなー、これは」
そう言って、私の頭部に注目したままサトシさんとヒカリさんはため息をひとつ。
どうにもそれが私に向けられている既視感がして、何とも言えない気持ちにさせてくれますね。
「ユカ」
『はい?何ですか、タケシさん』
「ユカはどう思う?」
『私は...そう、ですね』
見上げるようにして頭上に視線を巡らせても、話題の主の様子どころか姿すら確認出来ない訳ですが。
自分そっくりの臆病なこのポケモンを目の当たりにしていると、それなりに思う所がある訳でして。
『...力』
「ちから?」
『この子、多分力が足りないんだと思います』
「それって体力的な事を言っているのか?」
『そう...ですね。それもあると思います。体が小さい分、スタミナもあまりないでしょうし...』
「まどろっこしいなーユカは。もっとハッキリ言えって!」
「お前はもう少し忍耐力を付けような、サトシ!」
「いてっ」
『はは...ありがとうございます、タケシさん。私、どうにも昔からこう、自分の意見を口に出すのが苦手で...』
「いや、いいよ。それで?」
サトシさんを押さえ込んで優しく先を促すタケシさんの姿は、今の私にとっては本当にありがたいです。
料理も出来て包容力もあるのに、残念ですね。モテないのが。いえ。すみません。逸れてる場合じゃありませんでした。
『その...。生きていく為には、狩りが必要でしょう?食料を手に入れる為の、物理的な力。それから...。群れの中で生活するのであれば、お互いの優劣が何処かしらある筈なんです。それに立ち向かう対抗心。何より...生きようと思う精神力』
「生きようと思うって、どういう意味?」
『え...と。ヒカリさんの場合だと、次のコンテストバトルに向けて毎日練習頑張ってるじゃないですか』
「うんうん。ポッチャマもね!」
『その頑張ろうって思える、やる気の源とでもいうんでしょうか...。心が元気じゃないと...色んな事が上手くいかなかったりするから』
「...もしかしてそれが、そのチルットの体が小さい原因になってるんじゃないかって事?」
『少なくとも関係しているとは思います。この小さな体で悪循環をぐるぐる繰り返しているんじゃないかって...』
「はーっ、ユカって色々考えてるのねー!」
「でも、だからって結局どうするんだよ?」
堪えきれずに結論を急ぐサトシさんは、またタケシさんにたしなめられていましたけど。
確かに、結論は大事ですよね。それがこの子にとってどう感じるものであったとしても。
『早い話が、この子が力を蓄えて生きていけるようにサポートしてあげればいいんじゃないかと』
「なぁんだ!じゃぁやっぱり、ユカがゲットしちゃえばいいじゃないの」
『...私。...私、は』
「...?どうかしたの」
『あの時...。メタさんをゲットした時は、周りに流されてしまったけど。私は、いつか帰らなければならないんです。元いた場所に。この子達を連れて行けないぐらいに...遠くへ』
「え...」
予想外の返答だったのか、皆言葉を失ってしまったようです。
唯一事情を知っているサトシさんも、何故か一緒になって。何でだよと突っ込みを入れそうになったけれど。今はとりあえず、いい加減結論を出しましょうかね。
『だから私と一緒にと言っても...時間が限られてます。それでも一緒に行く事を選んでくれれば、全力でサポートするつもりです。けど...どうしますか?』
「......」
「うーん、ユカの説得でもだんまりか...」
『そりゃそうですよ、タケシさん』
「え?」
『どんなに酷い目に遭っていたとしても、今まで生きてきた自分の棲みかを離れるのはためらいがあると思います。
オマケに一緒に行こうと言った当人はずっとではないけどねと無責任な事を言い出すし。ひとりになってしまったら、自分の帰る場所は何処にあるって言うんですか。怖いんですよ。きっと。とどまるのも。進むのも』
「会って間もないのに、よくそこまで心情察することが出来るな...」
『多分似てるんです。私と』
「うん?それって臆病な所がか?」
少なからず、境遇の部分も。その言葉は、喉の奥に無理矢理押し込みました。
口にしてしまえば、今度はこの場が凍りついた空気になりそうでしたから。
『例え別れる時が来たとしても。君とここにいる人達の縁は、繋がったと思うんです。一度繋がったものは、簡単に切れるものじゃない。孤独になってしまうという事だけは、無いです。絶対に』
「......」
『言ったでしょう?ここにいる人達は絶対に君を傷付けたりはしない。...顔見知りでもない迷子を、面倒見るんだっていうお人好しさんもいるぐらいですから。だから...』
「...チルッ」
『...あ』
小さな羽音と一緒に、頭が軽くなるのを感じました。
もしかして、このまま何処かへ飛んで行ってしまうのではという不安がよぎったけれど。着地点は私の目の前でした。
ちょこんという可愛らしい効果音付きで。
『...え?』
「チルッ」
『...これって、ナンパ成功ですかねタケシさん』
「その言い方は俺への当て付けと受け取っていいのかユカ」
「何でもいいから、そこはモンスターボールでしょ、ユカ!」
「何でも...だと...!?」
独りうちひしがれる青年は捨て置きまして。ヒカリさんの言われた通りにモンスターボールを取り出すと...。
チルットさんは自分からついばむようにボールをタッチして、赤い光に包まれて中に吸い込まれていきました。
「新しい仲間が増えたね!ユカ!」
『はい。...よろしくです、チルさん』
「それにしてもビックリしたー!故郷に自分のポケモンを連れて行けないだなんて!ねぇねぇ、ユカって何処出身なの?」
『え?え、えぇと。と、とにかく、ここからは凄く遠い所です。ポケモンもあんまり(というか、全く)いない所で...(先祖らしき生き物はいるけど)』
「へぇ~っ!確かにユカって、色んなポケモンに出会う度に大袈裟にビックリしてたよね...あと...」
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「...サトシ?どうしたんだ。ぼんやりして」
「いや。何で忘れてたんだろうって思って。アイツ...ユカは。いつか帰っちゃうんだよな...元の世界に」
「...元の世界?それって、」
「サトシー!タケシー!早くしないと置いてっちゃうわよー?」
「あぁ!今行く!行こうぜ、タケシ」
「...思ったよりもややこしそうだなー、あの二人。暫くは見守っ...いや。うん。元からだな。それは」
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妙に気になるフシがあるように思えたから、少し注意してサトシとユカを見守ろうと思ったんだけど。よくよく考えてみれば、見守るという名の傍観は最初からやってたんだな。これが。
だからまぁいいか、別にこのままでも。大体、リア充空気に当てられて知るかっていう部分もあるんだよ正直(以上、タケシの微妙な補足)