コトブキの街で
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(知らない間に、-後-)
「さて、と。俺たちはそろそろコンテストの方を見に行くが、お前はどうする?具合が落ち着いたんだったら、ついでに会場まで送ってやってもいいけど」
『...あー...』
気分の方は先程と比べると、幾分か良くはなったのですが。またあの人混みに戻るのを考えると、正直気が重いですね。
『私はまだここで...』
「ジャリガールも出てるニャら、見た方がいいんじゃないのかニャ?」
『う、それは...そうしたいのは、山々なんですけど...』
「何だったら後ろの方で俺達と見るか?それだったら途中で具合が悪くなっても...」
『......』
「な、何だよそのジト目は...言いたいことがあるならハッキリと、」
『ただの何も考えてない正直馬鹿なのか、万が一にでも何か企んでいるのかを見極めてる所です』
「そこまで信用ゼロなのかよ!?」
「それよりもバカ扱いされてるのニャ、コジロウ!」
「確かに!!」
あ、これ絶対前者の何も考えてない馬鹿の方ですね。
本当、馬鹿が付く程にお人好しな所といい、無駄に気合いの入った自作メカといい...。
悪の秘密結社...確か、名前はロケット団でしたっけ?この方達、そのロケット団が一番向いてないんじゃないでしょうか。才能の使い方が残念すぎます。あぁ、だから馬鹿なのか。
「よく分からんが哀れむような視線を俺に向けるな!泣くぞ!?」
『止めて下さい。面倒だから』
「辛辣!!」
うわ、マジで泣いためんどくさ。
少し前にも似たような事がありましたね。でも今回は人目なんて無いに等しいですから、なだめませんよ私は。そう、思ったのですけど。
ストーカーの様に行く先々で出くわす人達の事ですから。後々根に持たれても面倒だな...。
どうしたものかと思ったその時、誰かの声が耳に届きました。これは...誰かを探している、ような。
「おーい!何処にいるんだー!?」
「ピィカァー?」
『この声って、もしかして...』
「もしかしなくても、もしかするのニャ...!」
「や、ヤバいぞ、今の内に逃げ...!」
「ユカ!ここにいたのか!探したぞ!」
「ピィカァ!」
『サトシさんとピカさん』
「ん?一緒にいる人達は...」
サトシさんの視線は石化効果付きのようです。一人と一匹は面白いぐらいに固まってしまいました。
変装してるとはいえ、やっぱり鉢合わせしたく無いものなんでしょうか。
ふむ。ではここで一つ恩を売って無礼の一つや二つを帳消しにしてもらいましょうかね。
『少し具合が悪かった所を心配して、わざわざ一緒に居てくれたんですよ。そうですよね?』
「そっ、そうそう!」
「そのとおりなのニャ!」
「そうだったんですか。ありがとうございます!」
『知り合いの方が出場しているのに、引き止める形になってすみませんでした』
「そうなんですか?だったら急いだ方が良いですよ!そろそろ次の試合が始まるんで」
「そ、それは大変だぁ!それじゃぁ、そろそろおいとまさせてもらおうかぁ~!」
「それがいいのニャァ~!」
『ありがとうございました。優しいお兄様?』
あ、不自然クライマックスな上に、最後はコケましたよあの人。
本当に悪い事が向かない悪人ですね...。え、最後ずっこけたのは私がふざけたせい?うん。知ってる。
どうにもおちょくりたくなるんですよね、あの人...。結構なお間抜けさんだなぁと内心思っていたのですが。
「ユカ」
『はい』
「具合悪かったのか」
『あ』
ごめんなさい。人の事ばっかりとやかく言ったりして。私も相当な間抜けでした。
これじゃぁ、ちょっとトイレと言って誤魔化した意味無いじゃないですか!
「タケシがただ席を外すにしては時間が長い気がするって言ってたから。...心配した」
『ご、ごめんなさい...』
「はー...」
『っ、サトシ、さん?あの...』
「なぁ、俺ってやっぱり頼りない?バトルも結局負けちゃったし」
『そ、そう、だったんですね...』
少しビックリするぐらい近くに腰掛けたと思ったら、もたれ掛かってきたので尚更ビックリしました。負けてしまったのが相当堪えたんでしょうか...。
そもそも今回のコンテストバトルは、エイパムさんに出てみたいという気持ちがあったから、急きょ挑戦することになったんですよね。
それでも、負けず嫌いなサトシさんの事です。特訓してきた分、悔しかったのでしょう。
『...サトシさん。実は私、人混みが苦手で...』
「そうなのか?だったら先に言ってくれれば...」
『そうなんですよね。そうすれば、良かったんでしょうけど。忘れてたんですよ。人混みが苦手なのを。何でだろうって、ここで考えていたんですけど...』
「?何だよ、ユカ」
『それ、サトシさんのせいです』
「何で俺?」
やっぱりユカってよく分からないと続きそうな不満顔をされてしまいました。
学園生活でちゃんと向き合って話し合おうとしてこなかったツケがこんな所で回ってくるとは思いもよりませんでした。
上手く伝えられないのがもどかしい。でも、分かって欲しい。
『いつも笑顔で手を引いてくれたから。いつも全力で今を全身で楽しんでいるから。それにつられてしまったような部分があるというか...詰まる所が、それで人混み大丈夫って無意識に思い込んでいたようで』
「ユカって案外抜けてる所あるよな」
『さっきまで他人に対してそう思っていた分、耳が痛いですね。その言葉』
「何だそれ?」
『いえ。こちらの話です。話が少し逸れてしまいましたね。とにかく私、サトシさんが隣に居てくれるのがいつの間にか当たり前になってたみたいで。いつも元気を分けてもらってる感じがして、その、わっ、』
「うん、聞いてる。ちゃんと聞いてるから。少し落ち着けって」
『は、はい...』
肩の重みが消えた代わりに、手がギュッと暖かくなりました。
全力が伝わってくるような、力強い手。そう。いつの間にか私は、繋ぐこの手をこんなにも頼りにしていた。
『頼りないなんて、思わないで下さい。コンテストバトルだって、結果こそ残念だったかもしれないけど。全力で臨んでくれたサトシさんに、エイパムさん、きっと嬉しかった筈です。だから、えぇと、その...』
「...なんだ」
『え?』
「ははっ、何だ!あはは、」
『え、えぇぇ笑われた』
「だって俺、ユカに嫌われてるかもなーって思ってたぐらいだから」
『な!何でそうなるんですか』
「今だによそよそしい所があるから」
『うぐ。そ、それは...その。元からで、あの、善処するので勘弁して下さい...』
「でも...そっか。そんな風に考えてくれてたんだな」
良かった。そう言って、繋ぐ手の力はまた少し強くなりました。
繋がれたのは手の筈なのに、胸の辺りも締め付けられた気がするのは何故なのでしょうか。彼...サトシさんといると、未知の体験がいっぱいです。
『頼りにしてますよ?意外と』
「意外って何だよ。全く...」
『だってあんまり頼りにすると...。...』
「...ユカ?どうしたんだよ」
『いえ...』
別れる時、辛くなりそうだから。その言葉は、何故かつっかえてしまって口には出せませんでした。
そしてさっきまではぎゅうっと締め付けられた胸が、今度は。
『何だか...チクッとした気が』
「まだ具合悪いのか?」
『それとは少し、違うような?』
「何で疑問系なんだよ...。そうだ。具合悪くないんだったら、コンテストの方へ戻らないか?ヒカリが結構いい所まで勝ち進んでるんだぜ!」
『マジですか』
「おぅ、マジマジ!そうと決まったら行こうぜ、ユカ!」
私の意見なんか聞かずに引っ張って行くその手は、ある意味...いえ。強引そのものですけど。
サトシさんと一緒なら、苦手な場所でも大丈夫そうだと思えるから本当に不思議ですね。気持ち悪さもいつの間にか落ち着いたみたいです。
...誰かに何かを伝えるということは、とても大切な事です。その一方で、自分の心にも向き合うというのも同じくらいに大事なんです。
そうでないといつか本当の気持ちが分からなくなってしまうと、以前学園の先輩に忠告されました。それなのに。
私はここで、気が付かない振りをしてしまったのです。無意識に。それがどんな結果に繋がるのかも、考えもしないで。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ど、どうしてこうなった。暗い...!
最後は元の場所へ戻る事を望んでいるから仕方ないのかしらあらあらまぁまぁ。
早瀬さんの先輩は、ほっぺたに星マークの罰則印を付けたあの人の事です。
「さて、と。俺たちはそろそろコンテストの方を見に行くが、お前はどうする?具合が落ち着いたんだったら、ついでに会場まで送ってやってもいいけど」
『...あー...』
気分の方は先程と比べると、幾分か良くはなったのですが。またあの人混みに戻るのを考えると、正直気が重いですね。
『私はまだここで...』
「ジャリガールも出てるニャら、見た方がいいんじゃないのかニャ?」
『う、それは...そうしたいのは、山々なんですけど...』
「何だったら後ろの方で俺達と見るか?それだったら途中で具合が悪くなっても...」
『......』
「な、何だよそのジト目は...言いたいことがあるならハッキリと、」
『ただの何も考えてない正直馬鹿なのか、万が一にでも何か企んでいるのかを見極めてる所です』
「そこまで信用ゼロなのかよ!?」
「それよりもバカ扱いされてるのニャ、コジロウ!」
「確かに!!」
あ、これ絶対前者の何も考えてない馬鹿の方ですね。
本当、馬鹿が付く程にお人好しな所といい、無駄に気合いの入った自作メカといい...。
悪の秘密結社...確か、名前はロケット団でしたっけ?この方達、そのロケット団が一番向いてないんじゃないでしょうか。才能の使い方が残念すぎます。あぁ、だから馬鹿なのか。
「よく分からんが哀れむような視線を俺に向けるな!泣くぞ!?」
『止めて下さい。面倒だから』
「辛辣!!」
うわ、マジで泣いためんどくさ。
少し前にも似たような事がありましたね。でも今回は人目なんて無いに等しいですから、なだめませんよ私は。そう、思ったのですけど。
ストーカーの様に行く先々で出くわす人達の事ですから。後々根に持たれても面倒だな...。
どうしたものかと思ったその時、誰かの声が耳に届きました。これは...誰かを探している、ような。
「おーい!何処にいるんだー!?」
「ピィカァー?」
『この声って、もしかして...』
「もしかしなくても、もしかするのニャ...!」
「や、ヤバいぞ、今の内に逃げ...!」
「ユカ!ここにいたのか!探したぞ!」
「ピィカァ!」
『サトシさんとピカさん』
「ん?一緒にいる人達は...」
サトシさんの視線は石化効果付きのようです。一人と一匹は面白いぐらいに固まってしまいました。
変装してるとはいえ、やっぱり鉢合わせしたく無いものなんでしょうか。
ふむ。ではここで一つ恩を売って無礼の一つや二つを帳消しにしてもらいましょうかね。
『少し具合が悪かった所を心配して、わざわざ一緒に居てくれたんですよ。そうですよね?』
「そっ、そうそう!」
「そのとおりなのニャ!」
「そうだったんですか。ありがとうございます!」
『知り合いの方が出場しているのに、引き止める形になってすみませんでした』
「そうなんですか?だったら急いだ方が良いですよ!そろそろ次の試合が始まるんで」
「そ、それは大変だぁ!それじゃぁ、そろそろおいとまさせてもらおうかぁ~!」
「それがいいのニャァ~!」
『ありがとうございました。優しいお兄様?』
あ、不自然クライマックスな上に、最後はコケましたよあの人。
本当に悪い事が向かない悪人ですね...。え、最後ずっこけたのは私がふざけたせい?うん。知ってる。
どうにもおちょくりたくなるんですよね、あの人...。結構なお間抜けさんだなぁと内心思っていたのですが。
「ユカ」
『はい』
「具合悪かったのか」
『あ』
ごめんなさい。人の事ばっかりとやかく言ったりして。私も相当な間抜けでした。
これじゃぁ、ちょっとトイレと言って誤魔化した意味無いじゃないですか!
「タケシがただ席を外すにしては時間が長い気がするって言ってたから。...心配した」
『ご、ごめんなさい...』
「はー...」
『っ、サトシ、さん?あの...』
「なぁ、俺ってやっぱり頼りない?バトルも結局負けちゃったし」
『そ、そう、だったんですね...』
少しビックリするぐらい近くに腰掛けたと思ったら、もたれ掛かってきたので尚更ビックリしました。負けてしまったのが相当堪えたんでしょうか...。
そもそも今回のコンテストバトルは、エイパムさんに出てみたいという気持ちがあったから、急きょ挑戦することになったんですよね。
それでも、負けず嫌いなサトシさんの事です。特訓してきた分、悔しかったのでしょう。
『...サトシさん。実は私、人混みが苦手で...』
「そうなのか?だったら先に言ってくれれば...」
『そうなんですよね。そうすれば、良かったんでしょうけど。忘れてたんですよ。人混みが苦手なのを。何でだろうって、ここで考えていたんですけど...』
「?何だよ、ユカ」
『それ、サトシさんのせいです』
「何で俺?」
やっぱりユカってよく分からないと続きそうな不満顔をされてしまいました。
学園生活でちゃんと向き合って話し合おうとしてこなかったツケがこんな所で回ってくるとは思いもよりませんでした。
上手く伝えられないのがもどかしい。でも、分かって欲しい。
『いつも笑顔で手を引いてくれたから。いつも全力で今を全身で楽しんでいるから。それにつられてしまったような部分があるというか...詰まる所が、それで人混み大丈夫って無意識に思い込んでいたようで』
「ユカって案外抜けてる所あるよな」
『さっきまで他人に対してそう思っていた分、耳が痛いですね。その言葉』
「何だそれ?」
『いえ。こちらの話です。話が少し逸れてしまいましたね。とにかく私、サトシさんが隣に居てくれるのがいつの間にか当たり前になってたみたいで。いつも元気を分けてもらってる感じがして、その、わっ、』
「うん、聞いてる。ちゃんと聞いてるから。少し落ち着けって」
『は、はい...』
肩の重みが消えた代わりに、手がギュッと暖かくなりました。
全力が伝わってくるような、力強い手。そう。いつの間にか私は、繋ぐこの手をこんなにも頼りにしていた。
『頼りないなんて、思わないで下さい。コンテストバトルだって、結果こそ残念だったかもしれないけど。全力で臨んでくれたサトシさんに、エイパムさん、きっと嬉しかった筈です。だから、えぇと、その...』
「...なんだ」
『え?』
「ははっ、何だ!あはは、」
『え、えぇぇ笑われた』
「だって俺、ユカに嫌われてるかもなーって思ってたぐらいだから」
『な!何でそうなるんですか』
「今だによそよそしい所があるから」
『うぐ。そ、それは...その。元からで、あの、善処するので勘弁して下さい...』
「でも...そっか。そんな風に考えてくれてたんだな」
良かった。そう言って、繋ぐ手の力はまた少し強くなりました。
繋がれたのは手の筈なのに、胸の辺りも締め付けられた気がするのは何故なのでしょうか。彼...サトシさんといると、未知の体験がいっぱいです。
『頼りにしてますよ?意外と』
「意外って何だよ。全く...」
『だってあんまり頼りにすると...。...』
「...ユカ?どうしたんだよ」
『いえ...』
別れる時、辛くなりそうだから。その言葉は、何故かつっかえてしまって口には出せませんでした。
そしてさっきまではぎゅうっと締め付けられた胸が、今度は。
『何だか...チクッとした気が』
「まだ具合悪いのか?」
『それとは少し、違うような?』
「何で疑問系なんだよ...。そうだ。具合悪くないんだったら、コンテストの方へ戻らないか?ヒカリが結構いい所まで勝ち進んでるんだぜ!」
『マジですか』
「おぅ、マジマジ!そうと決まったら行こうぜ、ユカ!」
私の意見なんか聞かずに引っ張って行くその手は、ある意味...いえ。強引そのものですけど。
サトシさんと一緒なら、苦手な場所でも大丈夫そうだと思えるから本当に不思議ですね。気持ち悪さもいつの間にか落ち着いたみたいです。
...誰かに何かを伝えるということは、とても大切な事です。その一方で、自分の心にも向き合うというのも同じくらいに大事なんです。
そうでないといつか本当の気持ちが分からなくなってしまうと、以前学園の先輩に忠告されました。それなのに。
私はここで、気が付かない振りをしてしまったのです。無意識に。それがどんな結果に繋がるのかも、考えもしないで。
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ど、どうしてこうなった。暗い...!
最後は元の場所へ戻る事を望んでいるから仕方ないのかしらあらあらまぁまぁ。
早瀬さんの先輩は、ほっぺたに星マークの罰則印を付けたあの人の事です。