コトブキの街で
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(知らない間に、-前-)
『...うぷ。気持ち悪』
「ニァー...」
『だいじょぶです、エネさん。人通りが少ないこの場所でしばらく休めば落ち着きますから...』
出だしから無礼で失礼致します。
今現在の私こと早瀬由香は、コンテストバトルinコトブキシティ大会...のトイレ付近のベンチでダウン中なう、です。
透視できるこの能力のせいで、読み取る対象が多いこういった人混みが苦手なのをすっかり忘れていました。
大勢の前でパフォーマンスをするってヒカリさんも言っていたのに。どうして忘れる事が出来たんでしょう。
『ちょっとトイレと行って抜け出して来たから、そろそろ戻らないと変に思われちゃいますかね...でもまだ、あんまり...ん?』
「待てー!」
「止まれこのインチキ野郎ーっ!」
「金返せ!」
「ヤバいぞニャース...っ。このままじゃ追い付かれて売り上げが...あっ!君はっ!」
『え』
「ニャース、もしかしたらこの状況を打破できるかもしれないぞ!」
「ホントにゃ!?」
何ですこの唐突な不可避展開。面倒くさい予感しかしません。
複数の人に追いかけられている、サングラスをかけた胡散臭い男性...と、額に小判を付けた化け猫。ついこの間遭遇してしまった外見とは変わっているけれど、誰なのか心当たりがあります。
というか、数少ない顔見知りの中では一人しかいません。
「ユカ!?どうしてここに...いや、それよりも大丈夫か、また体を壊してしまったのか!あぁ、すまない...。俺の稼ぎが少ないばかりにこんな苦労をお前に~っ」
『ちょ、名乗った覚えないのに何で名前知ってもが』
「いいからおみゃーは話を上手く合わせるのニャ!」
「病弱なこの子の為に薬を買ってやりたかっただけなんだ!でもどうしてもお金が無くて偽物のシールを売り出してしまって...っ!」
「悪気は無かったのニャ!だから見逃して欲しいのニャ~!」
いや、悪気100パーセントじゃないですか。ようはパチモンを売り出して儲けようとしたみたいですね。このロクデナシ団(男)(化け猫)。
この街に到着してから既に似たような事をしでかしているのを目撃しているのですが(割愛済)。全く懲りていないようです。
しかも私をダシにして誤魔化そうとしていますよね。...あったまきた。
「そうだったのか...」
「ただの詐欺野郎じゃなかったのか...」
「そんな事情があるなら...」
『駄目です』
「「「「「え」」」」」
『確かに暮らしは貧しくて苦しいと思う時もあるけれど、悪い事なんかしないで!もし警察に捕まっちゃったら、私、一人になっちゃうんだよ...っ?』
「確かにそうだ...!」
「家族を泣かせちゃいけねぇな!」
「そうだな、いけねぇよ!」
「おみゃーは何て事を言い出すんだニャもごもご」
『だからちゃんとこの人達に謝って。騙して取ったお金を返してあげて。ね?
...お父さん』
「え」
頭にきたので、多大な精神的なショックを被るであろう言葉を吐き捨ててやりましたよ。えぇ。それはもう、満面の笑みで。
「確かに...確かに、話を合わせてくれとは言ったけどさぁ...。俺、まだ20代なんですけど...っ」
「折角の売り上げが水の泡なのニャ...」
『ボコられそうだった所を無傷の上にお咎め無しになったんですから。むしろ感謝して欲しいぐらいです』
まさか父親呼ばわりされると思っていなかったんでしょうね。あからさまな位に落ち込んでいるのを見て、正直ざまぁと思ったのはここだけの話。
『...あ』
「コンテストバトルも中盤に差し掛かってきたな」
「ムサシの方は上手く勝ち進んだのかニャ...」
『あなた方の片割れさんも出てるんですか...』
人混みを避けたこの場所は、コンテストが行われている所から少し離れた所なのですが。それでもナレーションの方と観客の歓声が耳に届きました。
ヒカリさんだけでなく、今回はサトシさんも出てみると言っていたので。それを見てみたいと思う気持ちはあるのです...けど。
「ところでおみゃーはこんな所で何してるんだニャ?」
「さっきも思ったけど、顔色が良くないな。具合でも悪いのか?」
『その言葉が出会い頭の開口一番に聞けていたのなら、優しいお兄様と呼ばせて貰っていたんですけどねぇ』
「人が折角心配してやってるのに、可愛くないぞお前!」
『悪の秘密結社の方にそう言われましても...』
「...っ」
「コジロウ?急に何処いくのニャ!置いてかないでなのニャー!」
『...はー...』
「ニァ」
『大丈夫です。エネさん。大丈夫...』
生意気な上に失礼千万な態度を取り続けていたら、流石に気を悪くしたのか。コジロウさんはこの場を後にして行ってしまいました。いえ、別に何だっていいんですけどね。
だってあの人達は、悪い人なんですから。それで間違ってない、筈ですよね?
今だにおさまりそうもない気持ちの悪さにため息をひとつ。エネさんに言った大丈夫という言葉は、まるで自分に言い聞かせているようでした。
そんな私の隣に座っている人は、今は誰も居ない。
『...そうか。私、』
「ほら」
『んひゃぁっ!?なな、何...っ』
「水買ってきた」
『...コジロウさん?』
「何だよ」
『どうして戻ってきたんですか』
「危なかった所を助けてくれた奴が具合悪そうにしてるのに、そのままにして置いていけないだろ」
『...あなた何で本当に悪の秘密結社なんかに...いえ。何でも。何でもないです。だから語りだそうとしないで下さいお願いですから』
急にほっぺたにヒヤッとした物が当たったので、普通にびっくりしました。先程の借りがあるとはいえ、悪の秘密結社がこんな律儀な対応をするのにも驚きですけど。
『そんなお人好しでいると、いつか逆に騙される羽目に遭いますよ。きっと』
「...お前は」
『はい?』
「どうしてお前はいちいち俺の心をえぐるんだっ!泣くぞコノヤロウ!」
『(面倒くさいんで)止めて下さい。というか、この動揺っぷり...』
「既にあった出来事なのニャ」
「あれは...そう。沈没する前の船に乗っていた時」
『前!?その後沈没したという事!?サトシさんの時といい、ここの世界の船って沈みやすい設計なんですか!』
「あぁ。そういえばジャリボーイ達も同じ船に乗ってたな。いや、そう仕向けたんだったけか?」
「どちらにせよ懐かしいのニャー」
『腐れ縁にも程があります』
コジロウさんのエピソードは、どうしてこうもいちいち濃いのでしょうか。
流石に耐えきれず、叫びの突っ込みを入れてしまいました。
そして物凄く今更感があるのですけど。私、どうしてこの人達と普通に会話しちゃってるんですか...?
『...うぷ。気持ち悪』
「ニァー...」
『だいじょぶです、エネさん。人通りが少ないこの場所でしばらく休めば落ち着きますから...』
出だしから無礼で失礼致します。
今現在の私こと早瀬由香は、コンテストバトルinコトブキシティ大会...のトイレ付近のベンチでダウン中なう、です。
透視できるこの能力のせいで、読み取る対象が多いこういった人混みが苦手なのをすっかり忘れていました。
大勢の前でパフォーマンスをするってヒカリさんも言っていたのに。どうして忘れる事が出来たんでしょう。
『ちょっとトイレと行って抜け出して来たから、そろそろ戻らないと変に思われちゃいますかね...でもまだ、あんまり...ん?』
「待てー!」
「止まれこのインチキ野郎ーっ!」
「金返せ!」
「ヤバいぞニャース...っ。このままじゃ追い付かれて売り上げが...あっ!君はっ!」
『え』
「ニャース、もしかしたらこの状況を打破できるかもしれないぞ!」
「ホントにゃ!?」
何ですこの唐突な不可避展開。面倒くさい予感しかしません。
複数の人に追いかけられている、サングラスをかけた胡散臭い男性...と、額に小判を付けた化け猫。ついこの間遭遇してしまった外見とは変わっているけれど、誰なのか心当たりがあります。
というか、数少ない顔見知りの中では一人しかいません。
「ユカ!?どうしてここに...いや、それよりも大丈夫か、また体を壊してしまったのか!あぁ、すまない...。俺の稼ぎが少ないばかりにこんな苦労をお前に~っ」
『ちょ、名乗った覚えないのに何で名前知ってもが』
「いいからおみゃーは話を上手く合わせるのニャ!」
「病弱なこの子の為に薬を買ってやりたかっただけなんだ!でもどうしてもお金が無くて偽物のシールを売り出してしまって...っ!」
「悪気は無かったのニャ!だから見逃して欲しいのニャ~!」
いや、悪気100パーセントじゃないですか。ようはパチモンを売り出して儲けようとしたみたいですね。このロクデナシ団(男)(化け猫)。
この街に到着してから既に似たような事をしでかしているのを目撃しているのですが(割愛済)。全く懲りていないようです。
しかも私をダシにして誤魔化そうとしていますよね。...あったまきた。
「そうだったのか...」
「ただの詐欺野郎じゃなかったのか...」
「そんな事情があるなら...」
『駄目です』
「「「「「え」」」」」
『確かに暮らしは貧しくて苦しいと思う時もあるけれど、悪い事なんかしないで!もし警察に捕まっちゃったら、私、一人になっちゃうんだよ...っ?』
「確かにそうだ...!」
「家族を泣かせちゃいけねぇな!」
「そうだな、いけねぇよ!」
「おみゃーは何て事を言い出すんだニャもごもご」
『だからちゃんとこの人達に謝って。騙して取ったお金を返してあげて。ね?
...お父さん』
「え」
頭にきたので、多大な精神的なショックを被るであろう言葉を吐き捨ててやりましたよ。えぇ。それはもう、満面の笑みで。
*
「確かに...確かに、話を合わせてくれとは言ったけどさぁ...。俺、まだ20代なんですけど...っ」
「折角の売り上げが水の泡なのニャ...」
『ボコられそうだった所を無傷の上にお咎め無しになったんですから。むしろ感謝して欲しいぐらいです』
まさか父親呼ばわりされると思っていなかったんでしょうね。あからさまな位に落ち込んでいるのを見て、正直ざまぁと思ったのはここだけの話。
『...あ』
「コンテストバトルも中盤に差し掛かってきたな」
「ムサシの方は上手く勝ち進んだのかニャ...」
『あなた方の片割れさんも出てるんですか...』
人混みを避けたこの場所は、コンテストが行われている所から少し離れた所なのですが。それでもナレーションの方と観客の歓声が耳に届きました。
ヒカリさんだけでなく、今回はサトシさんも出てみると言っていたので。それを見てみたいと思う気持ちはあるのです...けど。
「ところでおみゃーはこんな所で何してるんだニャ?」
「さっきも思ったけど、顔色が良くないな。具合でも悪いのか?」
『その言葉が出会い頭の開口一番に聞けていたのなら、優しいお兄様と呼ばせて貰っていたんですけどねぇ』
「人が折角心配してやってるのに、可愛くないぞお前!」
『悪の秘密結社の方にそう言われましても...』
「...っ」
「コジロウ?急に何処いくのニャ!置いてかないでなのニャー!」
『...はー...』
「ニァ」
『大丈夫です。エネさん。大丈夫...』
生意気な上に失礼千万な態度を取り続けていたら、流石に気を悪くしたのか。コジロウさんはこの場を後にして行ってしまいました。いえ、別に何だっていいんですけどね。
だってあの人達は、悪い人なんですから。それで間違ってない、筈ですよね?
今だにおさまりそうもない気持ちの悪さにため息をひとつ。エネさんに言った大丈夫という言葉は、まるで自分に言い聞かせているようでした。
そんな私の隣に座っている人は、今は誰も居ない。
『...そうか。私、』
「ほら」
『んひゃぁっ!?なな、何...っ』
「水買ってきた」
『...コジロウさん?』
「何だよ」
『どうして戻ってきたんですか』
「危なかった所を助けてくれた奴が具合悪そうにしてるのに、そのままにして置いていけないだろ」
『...あなた何で本当に悪の秘密結社なんかに...いえ。何でも。何でもないです。だから語りだそうとしないで下さいお願いですから』
急にほっぺたにヒヤッとした物が当たったので、普通にびっくりしました。先程の借りがあるとはいえ、悪の秘密結社がこんな律儀な対応をするのにも驚きですけど。
『そんなお人好しでいると、いつか逆に騙される羽目に遭いますよ。きっと』
「...お前は」
『はい?』
「どうしてお前はいちいち俺の心をえぐるんだっ!泣くぞコノヤロウ!」
『(面倒くさいんで)止めて下さい。というか、この動揺っぷり...』
「既にあった出来事なのニャ」
「あれは...そう。沈没する前の船に乗っていた時」
『前!?その後沈没したという事!?サトシさんの時といい、ここの世界の船って沈みやすい設計なんですか!』
「あぁ。そういえばジャリボーイ達も同じ船に乗ってたな。いや、そう仕向けたんだったけか?」
「どちらにせよ懐かしいのニャー」
『腐れ縁にも程があります』
コジロウさんのエピソードは、どうしてこうもいちいち濃いのでしょうか。
流石に耐えきれず、叫びの突っ込みを入れてしまいました。
そして物凄く今更感があるのですけど。私、どうしてこの人達と普通に会話しちゃってるんですか...?