(早瀬さんがトリップした経緯について)
"アリス"とは。世間一般では、天才と呼ばれる人の事を指すらしいけれど。正しくは、天賦の才能の持ち主の事であると担任が言っていました。
生まれながらにして持った、様々な才能を持つ人達が集まる教育機関...アリス学園は。
そうですね。とある人の言葉を借りるのならば。デタラメ人間の万国ビックリショーが日常的に行われている場所です。
空を飛ぶ人なんて、珍しくありません。中には炎を操ったり、幻覚を見せたりする人。挙げ句の果てには心の中を勝手に読まれたりするものですから、プライバシーなんてあったものじゃありません。
まぁ...私こと早瀬由香も、そんなデタラメ人間の一員として学園生活を送っていたのですが。本題はここからなのですよ。
タイムトリップという、かなり珍しいアリスの持ち主がいらっしゃるんですけど。え、何となく展開が読めたって？心中お察ししますが、取りあえず最後まで聞いて下さい。
きっかけは何だったかなんて、些細な事です。タイムトリッパー野郎に巻き込まれて、唐突に見知らぬ場所に飛ばされた。この現状に比べたら。

『いや、本当に...何処ですか、ここ』

地平線が見えるんじゃないかと錯覚する程に広い草原、柵という仕切りが見当たらない青空。
学園では絶対に見る事が出来ないであろう景色に、タイムトリップに巻き込まれた実感がひしひしと出てきました。
というか、飛ばしやがった張本人は何処ですか。まさか...私だけがここにトリップしてまったんでしょうか。じゃぁ私...私は。今、独り...

「そんな所で何ぼんやり突っ立ってるんだ？」
『...え』
「...どうかしたのか？」

これが、彼との初めての出会い。ここでの、はじまり。