act.11
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*
『ぁ、あの…ありがとうございました。櫻野先輩』
「僕は何もしてないよ。お礼なら彼に…今井に言った方がいい」
『は、い…』
…今の状況を言葉で表すなら。
姐さん。事件です。
今、私の目の前には…。幹部生の方々…通称、プリンシパルのお方が勢ぞろい状態です。
今井先輩は佐倉さんのケガを治しただけじゃなく、ご機嫌も回復させてくれたようです。
思いがけないこの状況に、果てしなく緊張するけれど。
とにかく、佐倉さんが泣き止んでくれて良かったです。
ほっと一息吐いた所で、櫻野先輩が何やらずっと私を見ていることに気が付きました。
『…?』
「…君」
『…んぇっ!?』
「そう。君。名前は?」
『そ、そのっ。ぅ、えぇとっ。早瀬、由香、ですっ』
私のドモりっぷりを華麗にスルーした櫻野先輩は、私の名前を復唱するように呟いていました。
「櫻野…?」
「いや…何でもないよ、今井。早瀬、由香ちゃん。君とは何処かで会ったような気がしてね」
『えっ…?何処かで…?』
「そう。何処かで…ね」
何処かで、会ったことがある。
そう言った櫻野先輩は、私の反応を確かめるようにじっと見ていました。
それはまるで、疑問の答えを待っているような気もします。
初等部のド平均まっしぐらな私なんかが、総代表の櫻野先輩に会った事がある…?
答えが返ってこないのが分かったのか、その視線はすぐに外されてしまいました。
「…それじゃぁ。ついでだから、中等部まで一緒に行こうか」
お祭り気分で賑やかな文化祭が始まる一方。
小さな疑問は、波紋が広がるように私の胸に残りました。
櫻野先輩の、まるで吸い込まれそうなあの瞳が。何故だかこびり付いてしまったみたいに、ずっと離れませんでした…。