act.9
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♯2
『園生、先輩』
「あれっ由香ちゃん?どうしたの、突然」
あれから更に数日後。
私は再び、園生要先輩の病室にやってきました。
『あの…っ』
「うん」
『私…っ、その』
「…うん?」
『き、今日は、私…っ。………たっ、退院するんです』
ちっがあぁぁう!
心の中で、鋭く独り突っ込みを思わず入れてしまいました。
本当に、違う…っ。
こんな事を言いに来たんじゃないのに…!
私のどもり様に違和感が無かったんでしょうか。
園生先輩は何事も無かったかのように、話は明後日の方向に向かっていってしまいます。
「そうだったんだね。退院おめでとう!」
『ぁ…あう…っ』
「知ってたら、何か退院祝い用意したんだけど」
『や…っいやいややや…』
「でも、ごめんね。何も」
『…っ、園生先輩!』
思わず叫んでしまった時にはもう手遅れ。
園生先輩は、女の子みたいに大きな瞳をぱちくりさせて黙ってしまいました。
うぅ…。
いい加減覚悟を決めろ早瀬由香…っ!
心臓が過労死しそうな位の緊張を何とか押さえて、背中に隠していた包みを園生先輩におずおずと差し出します。
…情けないぐらいに、差し出す手は緊張で震えてました。
『こここ…っこれっ、あのっ』
「…もしかして、くれるの?」
首がもげるんじゃないかってぐらいにブンブンと縦に振ると、園生先輩は笑顔でそれを受け取ってくれました。
「ありがとう」
『…っ!』
「でも何だか悪いな。本当ならプレゼントをあげるのって多分逆だよね」
『ぃっ、いいいえ!ゎっ、わたっ、私がっ、勝手に、やっただけで…』
「開けてもいいかな?」
もうこれを機にヘドバンをマスターすればいいんじゃないかってぐらいに、勢いよくまた首を動かしました。
そして簡単なラッピングがほどかれて、中に入っていたものがペラリと出てきます。
「これって…」
『え…と…。安藤先輩から、聞いたんですけどっ。
きっ、北の森にいるくまのぬいぐるみって、園生先輩が作ったんですよね?』
「もしかして…これ、ベアに?」
『文化祭で、特力はアラジンがテーマみたいなんですっ。
だから、えぇっと、だからベアにその服を着てもらって…』
「………」
『あ、の…』
言葉にすればするほど、自分のやっていることが差し出がましくなっていくようで。
最初の有り余る勢いが火が消えるように無くなりました。
園生先輩にあげたのは、文化祭で特力が着るアラビアンな衣装。
ただし、それはベア用に私が作った物。
…いつ作ったのかは、敢えて言及しないでいただけるとありがたいです。
兎に角。
園生先輩が文化祭に出れないんだったら、先輩が命を吹き込んだぬいぐるみが出ればいいじゃないか。
園生先輩の、目になって。
そう思い立って作ったは、いいんだけれども。
そんなの偽善?
本人にとっては気休めにもならない?
現実と妄想の見境が全く付かなくなってMAJIで発狂する数秒前に…園生先輩が、静かに口を開きました。
「…翼がね」
『ふひゃっ!?』
「翼が、時々話してくれるんだ。由香ちゃんのこと」
『ぇ…えぇっ?』
「ふふ。本当に、翼の言う通りの子だね。そそっかしい所も、すぐに顔が赤くなっちゃう所も」
『はぁ…っ!はゎわゎっ!』
あんの、影…!
次会ったら、覚えて…いや、やっぱ無理。
この前みたいなことがあったら、私の死因は恥死で間違いなくなる。
「こうやって誰かを思いやれる、優しい子だっていうのも」
『………え』
「ありがとう。本当に。僕を、ベアを想ってくれた事が何より嬉しい」
誰かの為に、何かをする。
その行動で幼い頃、人を酷く傷つけたことがある。
そして、失ってしまった。
…思えばそれ以来かもしれない。
誰かの為に何かを、なんて。
どうしてだろう?何でだろう?
今まであんなに、人に関わらないように、目立たないようにして過ごしてきたのに。
何かが私の中で変わっていくような。
ううん、それよりも。
園生先輩の為にやったことを、喜んでもらえて。
それが私にとっても、何よりも
「…由香ちゃん?」
『園生、先輩』
「あれっ由香ちゃん?どうしたの、突然」
あれから更に数日後。
私は再び、園生要先輩の病室にやってきました。
『あの…っ』
「うん」
『私…っ、その』
「…うん?」
『き、今日は、私…っ。………たっ、退院するんです』
ちっがあぁぁう!
心の中で、鋭く独り突っ込みを思わず入れてしまいました。
本当に、違う…っ。
こんな事を言いに来たんじゃないのに…!
私のどもり様に違和感が無かったんでしょうか。
園生先輩は何事も無かったかのように、話は明後日の方向に向かっていってしまいます。
「そうだったんだね。退院おめでとう!」
『ぁ…あう…っ』
「知ってたら、何か退院祝い用意したんだけど」
『や…っいやいややや…』
「でも、ごめんね。何も」
『…っ、園生先輩!』
思わず叫んでしまった時にはもう手遅れ。
園生先輩は、女の子みたいに大きな瞳をぱちくりさせて黙ってしまいました。
うぅ…。
いい加減覚悟を決めろ早瀬由香…っ!
心臓が過労死しそうな位の緊張を何とか押さえて、背中に隠していた包みを園生先輩におずおずと差し出します。
…情けないぐらいに、差し出す手は緊張で震えてました。
『こここ…っこれっ、あのっ』
「…もしかして、くれるの?」
首がもげるんじゃないかってぐらいにブンブンと縦に振ると、園生先輩は笑顔でそれを受け取ってくれました。
「ありがとう」
『…っ!』
「でも何だか悪いな。本当ならプレゼントをあげるのって多分逆だよね」
『ぃっ、いいいえ!ゎっ、わたっ、私がっ、勝手に、やっただけで…』
「開けてもいいかな?」
もうこれを機にヘドバンをマスターすればいいんじゃないかってぐらいに、勢いよくまた首を動かしました。
そして簡単なラッピングがほどかれて、中に入っていたものがペラリと出てきます。
「これって…」
『え…と…。安藤先輩から、聞いたんですけどっ。
きっ、北の森にいるくまのぬいぐるみって、園生先輩が作ったんですよね?』
「もしかして…これ、ベアに?」
『文化祭で、特力はアラジンがテーマみたいなんですっ。
だから、えぇっと、だからベアにその服を着てもらって…』
「………」
『あ、の…』
言葉にすればするほど、自分のやっていることが差し出がましくなっていくようで。
最初の有り余る勢いが火が消えるように無くなりました。
園生先輩にあげたのは、文化祭で特力が着るアラビアンな衣装。
ただし、それはベア用に私が作った物。
…いつ作ったのかは、敢えて言及しないでいただけるとありがたいです。
兎に角。
園生先輩が文化祭に出れないんだったら、先輩が命を吹き込んだぬいぐるみが出ればいいじゃないか。
園生先輩の、目になって。
そう思い立って作ったは、いいんだけれども。
そんなの偽善?
本人にとっては気休めにもならない?
現実と妄想の見境が全く付かなくなってMAJIで発狂する数秒前に…園生先輩が、静かに口を開きました。
「…翼がね」
『ふひゃっ!?』
「翼が、時々話してくれるんだ。由香ちゃんのこと」
『ぇ…えぇっ?』
「ふふ。本当に、翼の言う通りの子だね。そそっかしい所も、すぐに顔が赤くなっちゃう所も」
『はぁ…っ!はゎわゎっ!』
あんの、影…!
次会ったら、覚えて…いや、やっぱ無理。
この前みたいなことがあったら、私の死因は恥死で間違いなくなる。
「こうやって誰かを思いやれる、優しい子だっていうのも」
『………え』
「ありがとう。本当に。僕を、ベアを想ってくれた事が何より嬉しい」
誰かの為に、何かをする。
その行動で幼い頃、人を酷く傷つけたことがある。
そして、失ってしまった。
…思えばそれ以来かもしれない。
誰かの為に何かを、なんて。
どうしてだろう?何でだろう?
今まであんなに、人に関わらないように、目立たないようにして過ごしてきたのに。
何かが私の中で変わっていくような。
ううん、それよりも。
園生先輩の為にやったことを、喜んでもらえて。
それが私にとっても、何よりも
「…由香ちゃん?」