act.9
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*
「俺はお前の事が心配だよ」
『…何ですか急に』
自分の病室への帰り道。
ついでに送ってくと言った安藤先輩は、突然そんな事を言い出しました。
「由香って結構臆病者だからなー。そのせいか、他人の態度に敏感で…」
『えぇと…ごめんなさい?本気で、何の話…』
「大丈夫だから」
『えっ?』
「かなめは、大丈夫だ」
ポンポン、と。
優しく頭を撫でてくれた安藤先輩は。
困ったような、笑顔をしていて。
それを見て、園生先輩と一緒にいて感じていたことが確信に変わりました。
園生先輩は…長い病院生活をしなくてはならないこと。
…安藤先輩たちと一緒に、文化祭が出来ないことも。
『うにゃっ!?ゎ、わわわっ』
「ははっ!何だよ、うにゃって」
『だっから、頭っ、わしゃわしゃしないで、下さいって!』
「頭撫でられるの好きなくせして~っこのっ」
『なぁ!?なな、なななっ…』
何でバレた!
そんな素振りしてたのか私!?
どっちにしてもそれを見透かされて、それでもこういう事するのって、つまり…。
私、もしかして今、安藤先輩に…甘やかされて、る?
あ、あれ?あれあれ?
思い返すと、そういえばそれって会う度に…。
…。
うあぁぁぁ!!
駄目だこれ以上自覚したら恥で死ぬぅぅぅ!!
「…あんまり他人の気持ち、大事にし過ぎるなよ」
『ははは、はぇっ?』
「まぁそれは、お前が優しい奴だからって言うのもあるんだろうけどさ。
でも、だから心配だっ、つってんの」
『え、えぇと』
「いつか自分の本当の気持ちが、分からなくなっちまうぞ…なんてな」
その言葉を聞いて、
心の何処かがギクリと音を立てたけれど。
…私には、それが何故だか分からなかったです。
『…安藤先輩って』
「んー?」
『何でも分かるんですね。何というか…お見通し、といいますか…』
「そりゃ分かるさ。だって見てたからな」
『見てた?』
「北の森で初めて会った時から。ずっと…」
不意に言葉を止めた安藤先輩は、しゃがみ込んで。
私と同じ高さの目線で、私の視線を確実に捉えて。
そして溜めた言葉を静かに続けました。
「由香。お前のこと、ずっと見てたんだ」
『…』
「…」
『……』
「……って言ったらどうする?」
『………はあぁぁぁあ!?』
既に色んなキャパがオーバーしていたので、理解と反応までにかなり時差が出てしまいました。
そんな反応を見た安藤先輩は、もうここぞとばかりに笑う笑う。
「由香…っ。ちょ、おま、耳まで真っ赤…!ぶはっ」
『~~っ!!ぁ、あぁあ安藤先輩のアホーっ!!!』
耳まで真っ赤になってしまった顔を少しでも隠したかったんです。
取って下さいと言わんばかりに目の前にある、安藤先輩の頭…が被ってる帽子を、気付いたら思わず引ったくってました。
それを乱暴に被って、そして病室まで全力で逃走中!
背中から安藤先輩の声が追いかけて来たけど、それを聞く余裕はミジンコほども私にはないです。
ただひたすら逃げるように、その場を後にしました…。