♯１

比較的軽傷だった正田さんを除いた、誘拐された組（私こと早瀬由香、佐倉さん、日向君）は、只今大事をとって数日間入院中…。



「そんでな、そんでなっ」

『はぁ』

「追っ手が来て、もう絶体絶命やってん！」

『へぇ』

「でもな、ウチは…ちょぉ由香ちゃん、ちゃんと聞いとる？」

『もちろん』



右から左へ流してます。







『はぁ…』



所変わって、現在地は病院内のどっかのソファ。

佐倉さんと病室が一緒になってから、一体何度ため息を吐いたんですかね、私。

忘れました。
でもきっと気が遠くなるほどの回数だと思います。


佐倉さんの目が覚めてからというものの。
彼女の口から出る言葉は、冒頭のような誘拐事件の時の武勇伝。
それオンリーです。エンドレスです。

…某有名ゲームの、赤髪主人公のあの台詞をちょっとお借りします。


うっぜぇぇぇぇぇぇえ！！！


…何て、地味生活という名の平和を望む私が言えるわけないじゃないですかあはははは。
だから適当な理由で、あの場から逃げてきたわけですが。



『回診の時間だから、病室に戻らなきゃ…』



気が重いと、何だか体もダルいです。

非常に気が進まない中、前も見ずにトロトロ歩いていたら、誰かにぶつかってしまいました。



「わぁっ！」

『えっ、ぁ、わゎっ。ご、ごめんなさ…。
………！？』