act.8
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「まぁ…とりあえず、さ」
『は、はい…』
心読み君の、そのとりあえずに到るまで。
とてつもなく長い道のりがあったのですが。
今は割愛しておきます。はい。
思い出すのもおぞましい。
「苺って、早瀬さんの部屋にあったこれのことでしょ?」
『!う、うんっ。そう!持ってきてくれたのっ?』
「そうだよー。あー僕ってすっごくやさし…」
『ありがとう!』
「「………」」
思わず顔が綻んでしまいました。
心配だったんですよ。岬先生からもらったこの苺。
何が心配って。
枯れるのもそうなんですが。
ほっといたら根っこを足にして、脱走しやしないかと…。
(何せ岬先生からもらった植物だし…)
『…ん、何ですか二人とも。人の顔ジッと見て』
「早瀬って…」
「そー。無自覚ってやつ」
「そうなんだ…」
『え、何かなこの疎外感な空気』
*
ここ最近、男子の間で早瀬由香の話題がよく上がる。
元々、目立たない地味な部類の女子であったのに。最近になって、急に雰囲気が変わったのだ。
表情を隠すように長かった前髪は、今では切りそろえられており清潔感がある。
地味な印象を与えていた眼鏡は、既に掛けていない。丸い大きな瞳があらわになり、以前よりも華やかになった。
それに加えて、すぐに顔を赤らめるあの性格。
急に可愛らしくなった女の子に、頬を染められて話し掛けられた日には…。
男子として、思うことは一つ。
(こいつ、俺に気があるんじゃないだろうか)
現にそう思っている男子は少なくないようで、そのせいで最近しばしば話題に上がるのだ。
可愛くなった、とは流石に皆まで言わないけれど。
心を読むアリスの前では、口にしなかろうが本音はだだ漏れである。
その話は、一部女子の耳にも入っているらしいのだが…。
「知らないのは当の本人だけ、ってやつだねぇ…」
『?』
…別に前髪が長い上に、眼鏡を掛けていて地味っぽいと言われようが。
外見がどうであれ、彼女の性格は変わらない。
からかいがいのある、というのもあるけれど。
はにかむように笑う、ちょっと恥ずかしがり屋な可愛らしい女の子だというのは…。
「(僕は、最初から知ってたのになぁ…)」
何だか面白くない。
早瀬さんが友達と称した、席が隣同士の男の子は。
ひっそりとため息をついた。