act.7
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*
岬先生の必死のご機嫌とりが成功して、落ち着いた頃。
「そうだ、早瀬。何か欲しい物はないか?」
『…え?』
…何ですかね。やぶから棒に。突然。
思いっきり怪訝な顔をしていたら、バッチリ岬先生に見られてしまいました。
そして空気を読んでくれたのか、言葉の意図を説明して下さいました。
「いや…その。眼鏡を壊してしまって、お詫びをしてなかったと思って、だな」
『…ぃ、いいえっ。そそんなの、ぜーんぜんっ。あぁはははっ』
むしろビニールハウスの扉を、私壊してしまったかもなんて、死んでも言えない。
お詫びなんていいですよー本当に(良心が痛むし)
でも、岬先生は中々納得してくれそうにありません。
『というか、ご飯をごちそうしてくれたじゃないですかっ。本当に、全然っ大丈夫ですからっ。お気遣いなく…』
「いや、だがな…。こういうのはちゃんとしないと、鳴海が」
『え?鳴海先生?』
「あ」
しまったって顔をして、岬先生黙ってしまいました。
…。
これは鳴海先生に何か言われたんだろうな…。
むしろけしかけられた?
私が思いっきり同情の視線を送っているのに、気付いたんでしょうね。
岬先生は取り繕うみたいに、大袈裟に咳払いをひとつしていました。
ごめん、先生。
それやってもちょっと手遅れだわ。
「と、とにかくだな…。
壊してしまったのは、俺であることに変わりないから。お詫びをさせてくれないか?
最初は店へ行って考えたりもしたんだが…」
『?』
「女子は、何が好きなのかさっぱりで…だな」
『………』
お店で、女の子へのプレゼントをどうしようかと困り果ててている岬先生…。
…。
これ聞いたら、小笠原さんとか梅ノ宮さん辺りがざわめきそうです。
色んな意味で。
『…あ』
何気なく視線を逸らしたら、懐かしい植物が目に入りました。
『岬先生。何でも欲しいもの、貰えるんですか?』
「あ、あぁ」
『なら、あれを少し貰っても大丈夫、ですかね?』
私が指を指した先にあるのは、小さな白いつぼみをつけた植物。
「…苺?」
『はいっ。…駄目ですかね』
「いや、それは全然構わないが…。好きなのか?苺が」
『はいっ!』
「………!」
懐かしい、優しい思い出に、思わず頬が緩んでしまいました。
…良いも悪いも、まだ何も分からないくらいに幼かった頃。
辛くて辛くて、家を飛び出して迷子になってしまった事がある。
迷子になったその先の何処かで、苺畑の白い花達を誰かと見たような気がする。
その人といる時は、アリスを持ってしまった私の未来が、明るく見えたんだ。
…誰と、だったかな。
『…あれ。岬先生?何ボーッとしてるんですか?』
「い、いやっ。早瀬、少し見ない間に、随分…」
『?』
「…その、」
「随分可愛くなったよね!由香ちゃん!」
間。