act.22
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#3
『ぅ…』
「…ちゃん?」
『ゆき、にぃ…』
「由香…ちゃん」
『何…その髪型と、口調…っ』
「由香ちゃん!」
『うぁっ!?』
自分の名前を叫ぶ声に驚いて、ガバっと起き上がると…。…。何処だここ。
そもそも私寝てたんでしたっけ。一体全体何が起こったんでしたっけか。ぼんやりとした頭で思考するも思い出せないので…。
『よし。寝直そう』
「はいはい思考放棄しないのー由香ちゃん」
『あぁ…私の心の友の布団が引き離され…って。鳴海先生?何故ここに…』
「何故って…。そりゃもう。誰かさんの入院の手続きで、出動要請かかったからだよ~」
『それは…何と。また大変なご迷惑を。道理で辺りが真っ白だと思った…』
「…それ、物理的に景色が白いって事だよね?貧血で視界が白くなってる訳じゃないよね…?」
それはどうでしょう。そんな下らない戯れをしていると、徐々に頭が覚醒してきたようで。
『な、鳴海先生…!』
「うん?」
『そのっ、えっと。何て言うか。どうなったんですか!?色々と』
「あぁ…言い得て妙だね、それ。確かに色々とあったからね」
私こと早瀬は、大ピンチという対峙中に気絶コマンドをかましてしまったようで。
あの地下…花姫殿にいた人達の安否は一体どうなったんでしょうか。あの場から生還出来たの、逆に怖いんですけど…。
「取り敢えず。あの場所から出る時も、その後の事も。ひと悶着どころか悶着が二つ、三つ…四つ」
『(数が増えるにつれて、先生の目からハイライトが消えていってる…)』
「本当、色々あったけどね。皆無事。命に別状はないよ」
『そう、ですか。良かったです…。…あの、鳴海先生?』
「うん?」
『正直…今回の出来事、事情がよく分からなくて。私は一体何に巻き込まれたんです…?』
「うーん…そうだねぇ。詰まる所が、棗君がここ…アリス学園へ来る事になった込み入った事情に関わってくるんだけど」
『それって…流架君が言ってた、日向君の妹さんのアリスが暴走して…っていうお話ですか』
「あぁ、聞いてたんだね。じゃぁ話は早いや。今回の件は学園側と…棗君のその事情がからんで起こった出来事って認識で大丈夫。
それで…とりあえず、ね?」
『はい?』
唐突に肩をポンと叩かれたと思ったら、起きて早々唐突その2な事を先生は仰られました。
「ちょっと何とかして…いや、会って欲しい子がいるんだけど。いいかな?」
『…先生』
それって、聞くだけ聞いておいて拒否権ないやつじゃないですかね…?
「由香お姉ちゃんー…っ!会いたかったよぉー…っ!」
『ちょ…っ、く、くるし…っ』
「今回の騒動が落ち着いてから、その子の容態やら一部抜け落ちてた記憶がどんどん良くなったのはいいんだけど。そしたらその次は、由香ちゃんに会いたいって聞かなくってさー…。やー、本当、由香ちゃんの目が覚めて良かった!」
『目が覚めて良かったってそういう意味合いで…!?』
鳴海先生が久々にクズいんですが…!
それってつまり自分じゃ手に負えないからあとよろしく☆(丸投げ)ってやつじゃないですか!
息苦しさを感じる程に抱きつかれているお腹辺りに、視線を落とすと。
今だ泣き止みそうもなく、あの人と同じさらさらとした黒髪を揺らす美少女様。…そう。なつめ君の…いえ。日向君の、妹さん。
「ずっとずっと会いたくて、聞いてほしかったの!葵ね、由香お姉ちゃんに会えなくなってからも頑張ったんだよ!泣きそうになる度に、お姉ちゃんに助けてもらった時の事思い出して…笑顔でいようって」
「えーっと…つまり、二人は知り合いなの?」
「そうなんです!小さい頃、葵が男の子に苛められて泣いてる時に助けてくれたのが由香お姉ちゃんなんですよ!」
「へぇー…。そういえば日向君も由香ちゃんも、学園へ来る前には引っ越しを繰り返してたみたいだし…その中での偶然な出会い、って感じなのかな」
『………』
「由香お姉ちゃん…どうしたの?もしかして…怒ってる?葵が…アリスを暴走させちゃって…由香お姉ちゃんの事も、何もかも忘れちゃってたから…?」
『…私も、』
「お姉ちゃん…?」
夕焼けの中、悲しくて泣いていた女の子は…そう。確かに葵ちゃんでした。
そして…。涙が止まらないこの子に、笑っている方がいいというゆき兄の言葉を伝えたのは…むしろ自分に言い聞かせているようなものだったというのを…思い出しました。
それを忘れていたのは…そうですね。あの頃。ハハオヤという存在に、愛されない、拒絶されるという日常を理解していかなければならない日々でしたから。
それを振り返らないよう、思い出さないようにしていた結果が…これなのでしょう。
『ここへ来る前は…辛いことが多くて。笑顔でいる事を…私、いつの間にか忘れてしまっていて』
「由香お姉ちゃん…」
『あんな…遠い日の約束を覚えてくれていて…思い出させてくれて、ありがとう。また会えて嬉しいです…葵ちゃん』
「お姉ちゃん…っ。そんなの…っ私もだよぉーっ!本当に本当に、会いたかった…っ!」
自分の記憶の中の葵ちゃんよりも、今の彼女はぐっと背が伸びてお姉さんらしい見た目になっていて。
それまでに、色んな事があった中できっと約束を守っていてくれたんでしょうね…この子は。
『葵ちゃん…今や不器用なお兄ちゃんを支えられるぐらいに、強くなった感じですね』
「えへへ…っ。それでも…それでもね。一番強いのは、葵の中ではずぅっと由香お姉ちゃんなの。もちろん、お兄ちゃんも強いんだけど…。いじめっ子に一人で立ち向かってくれたお姉ちゃんが、私にとってはヒーローみたいだったから!」
花姫殿の暗闇の地下で不安げにしていた女の子の姿は、もう片鱗もみつけられなくて。
小さかった友人の笑顔が。同じくらいに大切だと思うお兄ちゃんの元へ帰る事が出来るのだと。
ただただ、今だけは。良かったのだと思いました。
*
『ぅ…』
「…ちゃん?」
『ゆき、にぃ…』
「由香…ちゃん」
『何…その髪型と、口調…っ』
「由香ちゃん!」
『うぁっ!?』
自分の名前を叫ぶ声に驚いて、ガバっと起き上がると…。…。何処だここ。
そもそも私寝てたんでしたっけ。一体全体何が起こったんでしたっけか。ぼんやりとした頭で思考するも思い出せないので…。
『よし。寝直そう』
「はいはい思考放棄しないのー由香ちゃん」
『あぁ…私の心の友の布団が引き離され…って。鳴海先生?何故ここに…』
「何故って…。そりゃもう。誰かさんの入院の手続きで、出動要請かかったからだよ~」
『それは…何と。また大変なご迷惑を。道理で辺りが真っ白だと思った…』
「…それ、物理的に景色が白いって事だよね?貧血で視界が白くなってる訳じゃないよね…?」
それはどうでしょう。そんな下らない戯れをしていると、徐々に頭が覚醒してきたようで。
『な、鳴海先生…!』
「うん?」
『そのっ、えっと。何て言うか。どうなったんですか!?色々と』
「あぁ…言い得て妙だね、それ。確かに色々とあったからね」
私こと早瀬は、大ピンチという対峙中に気絶コマンドをかましてしまったようで。
あの地下…花姫殿にいた人達の安否は一体どうなったんでしょうか。あの場から生還出来たの、逆に怖いんですけど…。
「取り敢えず。あの場所から出る時も、その後の事も。ひと悶着どころか悶着が二つ、三つ…四つ」
『(数が増えるにつれて、先生の目からハイライトが消えていってる…)』
「本当、色々あったけどね。皆無事。命に別状はないよ」
『そう、ですか。良かったです…。…あの、鳴海先生?』
「うん?」
『正直…今回の出来事、事情がよく分からなくて。私は一体何に巻き込まれたんです…?』
「うーん…そうだねぇ。詰まる所が、棗君がここ…アリス学園へ来る事になった込み入った事情に関わってくるんだけど」
『それって…流架君が言ってた、日向君の妹さんのアリスが暴走して…っていうお話ですか』
「あぁ、聞いてたんだね。じゃぁ話は早いや。今回の件は学園側と…棗君のその事情がからんで起こった出来事って認識で大丈夫。
それで…とりあえず、ね?」
『はい?』
唐突に肩をポンと叩かれたと思ったら、起きて早々唐突その2な事を先生は仰られました。
「ちょっと何とかして…いや、会って欲しい子がいるんだけど。いいかな?」
『…先生』
それって、聞くだけ聞いておいて拒否権ないやつじゃないですかね…?
*
「由香お姉ちゃんー…っ!会いたかったよぉー…っ!」
『ちょ…っ、く、くるし…っ』
「今回の騒動が落ち着いてから、その子の容態やら一部抜け落ちてた記憶がどんどん良くなったのはいいんだけど。そしたらその次は、由香ちゃんに会いたいって聞かなくってさー…。やー、本当、由香ちゃんの目が覚めて良かった!」
『目が覚めて良かったってそういう意味合いで…!?』
鳴海先生が久々にクズいんですが…!
それってつまり自分じゃ手に負えないからあとよろしく☆(丸投げ)ってやつじゃないですか!
息苦しさを感じる程に抱きつかれているお腹辺りに、視線を落とすと。
今だ泣き止みそうもなく、あの人と同じさらさらとした黒髪を揺らす美少女様。…そう。なつめ君の…いえ。日向君の、妹さん。
「ずっとずっと会いたくて、聞いてほしかったの!葵ね、由香お姉ちゃんに会えなくなってからも頑張ったんだよ!泣きそうになる度に、お姉ちゃんに助けてもらった時の事思い出して…笑顔でいようって」
「えーっと…つまり、二人は知り合いなの?」
「そうなんです!小さい頃、葵が男の子に苛められて泣いてる時に助けてくれたのが由香お姉ちゃんなんですよ!」
「へぇー…。そういえば日向君も由香ちゃんも、学園へ来る前には引っ越しを繰り返してたみたいだし…その中での偶然な出会い、って感じなのかな」
『………』
「由香お姉ちゃん…どうしたの?もしかして…怒ってる?葵が…アリスを暴走させちゃって…由香お姉ちゃんの事も、何もかも忘れちゃってたから…?」
『…私も、』
「お姉ちゃん…?」
夕焼けの中、悲しくて泣いていた女の子は…そう。確かに葵ちゃんでした。
そして…。涙が止まらないこの子に、笑っている方がいいというゆき兄の言葉を伝えたのは…むしろ自分に言い聞かせているようなものだったというのを…思い出しました。
それを忘れていたのは…そうですね。あの頃。ハハオヤという存在に、愛されない、拒絶されるという日常を理解していかなければならない日々でしたから。
それを振り返らないよう、思い出さないようにしていた結果が…これなのでしょう。
『ここへ来る前は…辛いことが多くて。笑顔でいる事を…私、いつの間にか忘れてしまっていて』
「由香お姉ちゃん…」
『あんな…遠い日の約束を覚えてくれていて…思い出させてくれて、ありがとう。また会えて嬉しいです…葵ちゃん』
「お姉ちゃん…っ。そんなの…っ私もだよぉーっ!本当に本当に、会いたかった…っ!」
自分の記憶の中の葵ちゃんよりも、今の彼女はぐっと背が伸びてお姉さんらしい見た目になっていて。
それまでに、色んな事があった中できっと約束を守っていてくれたんでしょうね…この子は。
『葵ちゃん…今や不器用なお兄ちゃんを支えられるぐらいに、強くなった感じですね』
「えへへ…っ。それでも…それでもね。一番強いのは、葵の中ではずぅっと由香お姉ちゃんなの。もちろん、お兄ちゃんも強いんだけど…。いじめっ子に一人で立ち向かってくれたお姉ちゃんが、私にとってはヒーローみたいだったから!」
花姫殿の暗闇の地下で不安げにしていた女の子の姿は、もう片鱗もみつけられなくて。
小さかった友人の笑顔が。同じくらいに大切だと思うお兄ちゃんの元へ帰る事が出来るのだと。
ただただ、今だけは。良かったのだと思いました。