act.22
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*
…と、まぁ。こっそり侵入した挙げ句にあっさり見つかり、大騒ぎをかました訳ですけど。
どうやら騒いでいる場合では、なかったようでして。
「…この先の棗の未来、絶対こんな所なんかに閉じ込めたりさせない!」
流架君がやけにシリアスな顔をしていると思ったら。その口から出たのは、とんでもない言葉でした。
途中合流したせいなのか、話が見えない。それってつまり幽閉って事ですか。日向君が、この花姫殿の地下に?あれですか。まさかの中等部校長のお眼鏡に叶ったとかですか。
どういう事なのか尋ねるのもはばかられるなぁと思っていたら、あれよという間に話は進み…。
*
『鳥目だって…再報告すれば良かったですかね…』
はぐれた上に迷ったこれ。
安藤先輩と陽一君達に、ここは任せて先に行け的な事を言われ…殺る気満ち溢れた佐倉さん、迎撃準備万端な今井さんと、流架君の後に続いて日向君の捜索を再開した矢先の出来事。
マジで私何しに来たわけ。切実に帰りたい。
『それにしても、日向君って妹さんがいたんですね…。意外…でもないか。陽一君懐いてますし。案外、面倒見が良さそうといいますか…』
進みながら聞いたのは、日向君の学園へ来る前の話。むしろそのきっかけとなった出来事、というべきでしょうか。
妹。アリスの暴走。そしてそれによって引き起こった…火事。
『………う』
日向君の過去の話を耳にした辺りからでしょうか。やけに、頭が痛いのです。
最初は放っておいたら治るかなーなんて、軽い気持ちでいましたら。間違った判断でした。
ついには歩けなくなって、置いてかれる羽目になったんですから。
ついでに、その場でうずくまってしまったのも良くなかったと。この場に記しておきましょう。何故なら。
「っ、きゃぁ!?」
『げふっ!?』
人通りなんざないだろうも油断した矢先に、誰かとぶつかって下敷きにされてしまいましたね。
何だかやたら、ちょっとした出来心からそれに見合わぬ災難呼んでる気がします…泣きたい。
「ごめんなさいっ。人がいるとは思わなくて…大丈夫ですか?」
『えぇと…はい。その。こんな所で座り込んでた私も悪いので。お気になさらず…』
声の感じからして、女の子でしょう。おそらく。
何故確定ではないのかって。だから鳥目だからって再三言ってるじゃないですか。でもどうしてこんな所に女の子がいるんでしょうか。…女官さん?
「あの…女官さん?」
『はいっ?』
「私を元の場所に、連れ戻しに来たんですか…?」
『え?あの、私はそもそも、』
「そうだとしたら、少し待ってもらえませんか…!私、探している人がいるんです!」
疑問符付き返事をしたつもりが、女官と勘違いされた挙げ句に話を進めてしまわれました。
女官さんが、他の子に女官さんですかなんて聞かないだろうから。この子は少なくとも、女官さんじゃないんですかね…?説明ややこしいわ。
『うーん…そうですね…』
「やっぱり駄目ですか…?」
正直に女官でないと否定しようとしましたが。よくよく考え直せば、そんな必要ないのでは?
むしろただの侵入者である身を明かした方が、リスキーな気が致します。ので。
『いえ。ちょうど良かったです。実は私も人を探していたので、ご一緒しても?』
「本当ですかっ?ありがとうございます!」
『出来れば人がいそうな感じの所をナビゲーションしていただけると』
「ごめんなさい…私、目が見えなくて」
『マジですか。実は私鳥目なんで、似たようなものなんですよ』
「女官さんは、ここの道は詳しくないんですか?」
『あーー…っと、そうですね。新入りな者でして』
「そうなんですね…。お役に立てなくて、ごめんなさい」
『無理むり同士の二人なら、相乗効果で逆に何とかなりますって!』
身分偽り大作戦でいこうと思います。まぁそのせいで、この女の子は一体何者なのかが追及不可になってしまうのですが。多分危険はないでしょう。おそらく。
そして我ながら意味不明な理論を堂々と言い張りましたね。
どうにも、女の子から不安げな空気を感じてしまったもので。つい。
「…ふふっ」
『あ、笑いましたか。笑いましたね。暗くても分かりますとも』
「ごめんなさい、つい」
『いえ。そうやって笑ってる方がいいです』
そう言った瞬間、初夢で見た夕日の景色が頭をよぎりました。
赤い目を腫らせて泣いていた女の子。私はあの時、なんて声を掛けたんでしょう。
「…不思議」
『え、私また変な事言いましたかね』
「ううん。実は私、ここで過ごす以前の記憶が無くて」
『それはまた奇遇ですね。私はここへ来る以前の記憶の一部が無いんですよ』
「そうなんですか?凄い偶然…。…私、前にもこうやって、笑っていた方がいいって。言われた事があった気がして」
『…新手のナンパとかでは、断じてないんですけど。私達、何か不思議な巡り合わせがあるのかもですね』
「はい、私もそう思います!」
話をしながら、どちらからともなく。自然と手を繋いだのは。視界が不自由だからとかではなく。
何となく、違う理由があるようなしたのですけど。上手く言葉には出来なかったです。