act.22
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*
ところ変わりまして、時間帯は夜。安藤先輩のちょっとした出来心なイタズラと、私こと早瀬の軽い気持ちで盗み食いが組合わさった結果。
何と今だ離れないまま、床に就く羽目になってしまいました。
「「初夜やーーっっ」」
『私、今後は一生餅なんて口にしません』
「本当、悪かったって。由香」
『は…っ。餅の原料はそもそももち米。詰まるところ、餅もお米!分かりましたご飯も食してたまるか!』
「コイツの食育どーなってんの!?戻ってこーい!」
くっついてるせいで、安藤先輩にダイレクトに揺さぶらてしまいました。
現実逃避したいがあまり、確かに思考回路が少しおかしいことになっていましたね。反省です。
「さっさと消えろ」
『おわ…っ。日向君、大分参ってる感じでなんですかね…』
背後で強めに部屋の扉が閉められて、思わず身をすくめてしまいました。やってられないと思ったのか。単に疲れたのか。日向君…と、佐倉さんは強制的に引きずられ。早々に部屋に引っ込んでしまいました。
日向君、何か考え込んでいるようにも見えたのですが。気にしすぎでしょうか。
そもそも、そう感じたのが。
『安藤先輩、ちょっといいですか』
「ん?一応寝る所なら、棗達の隣の部屋だぞ。俺一人だったら廊下になる所だったけど…」
『いえ。そうではなく。あの、花園会って何ですか?』
「え」
「早瀬さん…。鳴海先生も途中来たりしてさ。色々と説明とか事情も話したりしてたと思うんだけど。結構大事になったし」
『私には関係ないと思いまして…情報、シャットダウンしてました』
「恐ろしい子だなー早瀬さんは」
そんな時にも笑顔を絶やさない心読み君ですが、私には分かる。その笑み、超乾いてます(訳:呆れている)
安藤先輩もまさかそう来るとは思わなかったのか、フリーズしてしまいました。そもそもその話が出てから、日向君の様子に違和感があった気がしたのです。一度スルーしてしまったけれど、念の為確認しておこうと思った次第です。
その後?初夜だと言ってハンカチ噛み締めていた正田さん辺りが、プリプリしつつちょっと涙付きで説明してくれました。
何だかんだ、この人面倒見いいですよね。でも泣くのか怒るのかはっきりしていただけるとありがたい。
*
『えーと、花園会っていうのは。中等部校長が選りすぐりの美少女を集めてハーレムするサロンの事で合ってます?正田さん』
「アンタ、その歯に衣着せぬ物言い何とかしなさいよ…」
「でも要約すればそんな感じだわ、由香。あと重要なのが、男子禁制っていう所。私の所にも、招待状が届いてたっていうのに。ねぇ、ハゲ?」
「怖いこわい、蛍ねーさんっ。だから俺が泊まり込みで色々世話するって話になったんだって!」
『正直、今井さんがこういった集まりに興味あるのが意外です』
「アンタ本当に何っにも聞いてなかったのね!いい!?花園会に招待されて、花姫って呼ばれるメンバーになる事が出来たら特別待遇が受けられるの!」
『あぁ…成る程それで。納得しました。あれ?でも男子禁制って。どうするんですか、この状況なのに』
「あーんーたーはー…っ!!」
やべぇ。あまりにも話をシャットアウトしすぎてましたね、これは。
メデューサが発動しそうです。安藤先輩の後ろに退避だ。逃げろや逃げろ。
「その辺りの事情は担任が中等部校長に報告、交渉中よ由香」
『成る程。その後の展開で、安藤先輩の安否が決まると』
「お前さぁ…確かにその通りなんだけどさ。本当、言い方…っ」
「因みに、由香は確実に聞いてなかったと思うから言っておくけど。蜜柑もサロンへ行く予定よ。毎年一人、ランダムで招待されるらしいの」
『えぇ…ただでさえも怪しげな集まりなのに、そんな胡散臭い展開って大丈夫…。ん?』
「何かしら。由香」
今井さんとお話ししていて、今思ったのですけど。何だか違和感ある所が一つ。
『いつの間に、私の事名前呼び…』
「結構あからさまだったんだけれど。やっと気が付いたのね。鈍いのは…まぁ周知の事実だから仕方ないわね」
『否定したいのに、気が付かなかっただけに反論出来ない…!』
「私に引っ付いてる、何処かの誰かさんが気が付いたら抜け駆けしてたみたいなのよね。いつそんなに親密になったわけ?妬けるわね…由香」
「何処かの誰かさんって、むしろ伏せる気ないだろ今井…!」
『な、何か今井さん、言い回しがやたら照れるんですけど…っていうか』
今井さんが怪しげな謎の色気を出してジリジリ距離を縮めてくる中。
後ろの扉がさっきよりも乱暴な音を立てて開きました。ヤバい予感しかしない。
「蛍の…っ蛍の浮気者ーっ!!」
『今井さん、絶対佐倉さんをおちょくりたいだけじゃないですかーっ!巻き込まないで下さいよおぉぉ!』
「てめぇら…」
『「ひぃ…っ!」』
部屋の奥から闇に紛れるようにして、這うような低い声が聞こえただけなのに。
総毛立つ恐ろしさに、思わず目の前の佐倉さんにしがみついてしまいました。それは佐倉さんも同じようで。
新年、始まったばかりなのに。この終わった感よ。
因みに今井さん曰く、おちょくりたかったのも本心だけれど。妬けたのも嘘ではないと。あの。ちょっと本当、私の巻き込まれ体質何とかなりませんか…?
*
『とんでもない一日でした…これが…新年…?』
特例で今日一日だけ用意されたベッドに思わず倒れこんでしまいました。
隣で急に引っ張るなだのお小言が飛びましたが、すぐに止みました。私も愚痴グチいう予定だったのですが、あまりの衝撃で黙り込んでしまいました。その心は。
『「幹部生のベッド、レベチだわ…!!」』
思わずハモッてしまう程の驚きですよ。日向君のお部屋の隣なので、多分幹部候補生用の一品だったのでしょうね。
倒れた衝撃だけで、ぽよぽよと跳ねましたよ。すげぇ。
「俺、今ので今日の事がちょっと浮かばれた気がする…!」
『私もですよ安藤先輩…!やはり休むには整った環境が必要ですからね。しかもそれが最高級の物だったら』
『「最高かよ…っ!」』
私達二人、ちょっとした出来心には見合わない心労具合だったんですよと。ここに言い訳しておきます。
今井さんに監視カメラで見られているとはつゆ知らず、妙なハイテンションは続くのでした…。
「馬鹿が過ぎると逆に可愛く見えるのは、一体どういう事なのかしら…。私も疲れてるのね」