act.22
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*
「…で?ごほっごほっ。いてて…。何か申し開きは?由香」
『つまみ食いして申し訳ありませんでした。安藤先輩…コゲくさ』
「謝罪に対して心がこもってねぇ!」
「離れない~…っ」
「取れないよーっ、何これー!」
餅つき後。初等部B組は阿鼻叫喚しておりました。急に体が引っ張られたと思ったら、誰かとくっついて離れなくなったり。動けなくなったりしまして。軽いパニック状態です。
諸悪の根源自体は、安藤先輩ではあるのですけど‥‥。
「翼…あんた。騙された腹いせに、もちもち粉をこっそり入れて。またくっついてる訳?悪い事しようとした罰だな。自業自得」
『ぐぅ…っ!その台詞、今の私にはめちゃくちゃブーメランなのですが、原田先輩…っ!』
事の発端は、餅つきの最中に安藤先輩がもっちもっち粉なるものをこっそりと混入させた所から始まりました。
その粉を口にした人は、シェアして召し上がった当人方をまさしく餅のようにくっつけて離れられなくなる…中等部で流行ってるイタズラだとかなんとか。
そんな出来心で空気砲打ち込まれたり、炎ぶっぱなされたりするだとか。大分リスキーなイタズラですよ、安藤先輩。
はい。そして今現在、私こと早瀬は安藤先輩と離れられない状況であります。原因はお察しの通り、先輩の作成した餅を盗み食いしたせいですね。
周りも似たような感じです。誰かとシェアして召し上がったであろう方々同士が、くっついてしまっているようです。
「てか由香。お前いつの間に俺の作ったやつ、つまみ食いしたんだよ」
『私、お汁粉がどうも嫌いで。安藤先輩の作ったチョコ入りのお餅なら、食べれそうだなと…』
「じゃぁ普通についた餅食べれば良かったんじゃね?」
『そもそも、餅つきが普通に面倒くさかったというか…』
「成る程、それで自業自得の言葉が今の由香の胸に突き刺さってると」
『ぐぬぅ…』
「というか。由香ちゃん、いかんせん嫌いな食べ物多すぎへん?」
黙らっしゃい。そういう佐倉さんだって、もちもちの罠にしっかりはまっているじゃないですか。
とは流石に言い返せませんでした。
元凶は安藤先輩だけど。現状の原因は明らかにつまみ食いした私なので。流石に体裁が悪くて。
『去年はあんなに身を粉にして働いたから。少しくらい、ズルしたって許されるんじゃないかと思ったんです…!』
「犯人の自白が始まったわよ」
『麻酔針で眠らされる、えせ探偵は何処ですか』
「つまみ食いを自供とか。安っぽい事件ね。見た目と頭脳が子供でも解決できそうよ」
『安っぽい事件の割には、被害がえげつないですけど』
「由香。ちょっと隣に引っ付いてる元凶引きずってきなさいよ。そいつだけバカン砲ぶちかますから」
「げっ。マジで悪かったってば、蛍ねーさん」
「っていうか、何で蛍と由香ちゃんはそんなに余裕なん!?この、常にくっついてなアカンこの状況で!」
今井さんのおふざけに乗っかっていたら、佐倉さんが切羽詰まった様子で泣きそうに…いえ。既に泣いていましたね。
むしろ泣かされたのかもしれません。佐倉さんに引っ付いてる、すこぶる機嫌の悪そうな日向君辺りに。
「トイレとかどないするんよ!?トイレとか、トイレとか!」
『トイレへの欲求すさまじい』
「あー、何か蛍ねーさんと由香は秘密兵器があったらしいな」
「それって何や安藤先輩!?そしてウチの分のその兵器は!」
「これよ。体内水分コントロール錠。肌洗浄スプレー。まぁ…私も由香も、人数分しか残って無かったの」
『申し訳ないとしか』
「そんなーーっ!!」
「いい加減うるせぇ!燃やされてぇのか!」
「ぎゃーーっ!!」
今となっては忙しすぎて思い出したくないアリス祭。忙殺されそうな所を見かねてか、今井さんがこの兵器を分けて下さったんでしたっけ。現状的にも、心の底から感謝です。今日から崇め称えます。
そして新年早々、何ですかこのバイオレンスな香りすらする、このカオス展開。
かっ飛ばし過ぎで、震えるんですけど。
『安藤先輩?』
「ん?どした、由香」
『今年一年は、私、トラブル無く心穏やかに平和な感じで過ごしたいな、と。年末辺りに思ったりしたんですけどね…』
「それはお前…」
『一年間とまではいかなくてもですね。せめてですねぇ。新年ぐらいは…』
その後の安藤先輩の言葉は続かず。
収集のつかない状況を眺めながら、肩を力無く叩かれました。