act.22
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#1
赤い。
夕日に染まった河川敷は、何処もかしこも赤一色に見える。私は、そんな河原を道のど真ん中で眺めていたみたいだった。影が、長い形を作っている。
そんな中で立ち尽くしていた私の耳に届いたのは、か細い声。泣いているみたいだ。
うつむいて肩を震わせている女の子が不意に顔を上げると。その子の瞳は、夕日よりも赤い‥
「おーい早瀬さーん。生きてるー?」
『…あ?』
「うわ、新年早々態度悪い返事の仕方ぁ」
『…心読み君?』
「そうだねぇ」
『…あれ、私ってばいつの間に談話室に?』
「そうだねぇ」
『どうなってんの私の頭』
「ヤバいねぇ」
おめでたい席で、人の頭をはたき倒しそうになりました。
新年早々、心の中の暴言でお目汚し失礼致します。
冒頭の夢見のおかげで寝起きが悪く、不機嫌な早瀬由香です。今年もお世話になります。
「どないしたん?由香ちゃん。何やぼんやりしとるなぁ~」
『あぁ、佐倉さん。それがちょっと聞いて下さいよ。初夢で縁起が良いものってあるじゃないですか』
「確かにあるなぁ、そんなん!えっと…何やったっけ」
『割愛します』
「何でやねん」
『論点はそこではないからなのです。私の場合、初夢で出てきたのが、泣いている幼女で。それってどんな意味があると思いますか』
「幼女って…」
「何て言うか」
「言い方」
「それな」
外野うっさいわ。
こそこそするんなら聞こえないようにやれ。
どうにも魚の小骨が喉に引っかかるような、もどかしいような苛立ちが拭えないです。
妙な夢を見た、の一言で済ませばいい話なんでしょうけど。何故でしょうか。既視感を感じるというか‥
「まぁまぁ、取り敢えず由香ちゃんおせちまだ食べてへんやろ?食べ!」
『おせち嫌い…』
「駄々っ子か!」
『えぇ…だって、食べ慣れないものって、何かどうにも…』
「あらもったいない。美味しいのに…カニとか」
「蛍は何処からカニ持ってきたん!?」
分かってます。夢見が良くなくて態度悪いのも。食事にケチつけてるのも自覚アリです。
だが新年早々のテンションハイパーでお送りする、佐倉さんの突っ込みを真横で聞くのは辛い。
カニ争奪戦が始まったテーブルからそっとフェードアウトしたら、乃木‥流架君が声を掛けて下さいました。
「大丈夫?早瀬…じゃなくて、えっと、由香」
『ふはっ、』
「な…っ、何で笑うんだよっ。心配してるのに」
『私もたった今心の中で乃木、じゃなくて、流架君って。思った所だったので』
「…同じなら尚更笑うなよ」
『ルーちゃんの方が良かったかー』
「年賀状由香も見たの!?」
『や、歩くスピーカー…でなく。佐倉さんが、ほら。大きな声で』
「~~っ」
はい。年明け一番でエンジェルの恥じらいいただきました!眼福、眼福。
ニヤニヤしてたら日向君の鉄槌をモロに喰らったけど、気にしないったら気にしない!
『あいた!今ゲンコツをモロに受けた所を敢えて叩くとか…っ。天使だけじゃなくて悪魔がいる!誰ですか!』
「僕だけど」
『心読み君で超納得。まさしく鬼の所業』
「鬼なのか悪魔なのかハッキリしようか」
「ていうか、棗に思い切り叩かれて、まだ天使とか言い出すの由香は…」
痛みでのたうち回ってた所を敢えて突くとか。もう鬼でも悪魔でもどっちでも変わらない気がする。
「突然だけど、僕心読み君の今年の目標~」
『唐突に何が始まったのかな』
「早瀬さんの話をそらしていく方向を軌道修正していこー」
『…新年の目標っていうか、抱負?って。自分自身の向上的なものを掲げるんじゃ、』
「早瀬さん、さっき流架君に大丈夫?って聞かれてたよね?」
『マジで軌道修正図ってきたなこの人…』
「で?」
『う…』
「大丈夫かのお返事は?」
『あ"ー…』
「何…大丈夫じゃないの、由香」
心読み君の容赦ない切り込みのおかげで、流架君にまで険しいお顔をされてしまいました。
同じテーブルにいらっしゃった日向君にも‥や、彼のガン飛ばしはいつもの事ですかね。
「早瀬さん?」
『大丈夫ですって、心読み君。ちょっと寝不足なだけで。静かに過ごしていれば問題ないです。静かに過ごしていれば』
「2回言った」
『そりゃぁ勿論、大事な事だからね。流架君』
「食事も手付かずだけど。食欲は?」
『心読み君の尋問が怖い…。さっきも言った通り、食べ慣れないものが苦手で。どうにも…』
「あっ、由香ちゃーん!今から餅つきやるってー!翼先輩も美咲先輩おるよ!なぁなぁ、由香ちゃんもやろー!」
「…だって」
『…まぁ、お餅なら、多分』
態度が悪い駄々っ子な上、色んな人に気を遣われてしまう新年。明けたばかりなのに、何かもう色々終わってる気がします。自分が。
『初夢の赤目の幼女が気になりすぎるからだ…きっと』
「はいはい、いいから行くよ」
『心読み君がマジ保護者ポジです』
「散々尻拭いさせられてきてるからね~あはは」
『あいたたた、そこ、さっき鉄槌喰らった所まだ痛いんだってばいたたた』
「…棗?どうしたの。何か、難しい顔してるけど」
「…別に」
赤い。
夕日に染まった河川敷は、何処もかしこも赤一色に見える。私は、そんな河原を道のど真ん中で眺めていたみたいだった。影が、長い形を作っている。
そんな中で立ち尽くしていた私の耳に届いたのは、か細い声。泣いているみたいだ。
うつむいて肩を震わせている女の子が不意に顔を上げると。その子の瞳は、夕日よりも赤い‥
*
「おーい早瀬さーん。生きてるー?」
『…あ?』
「うわ、新年早々態度悪い返事の仕方ぁ」
『…心読み君?』
「そうだねぇ」
『…あれ、私ってばいつの間に談話室に?』
「そうだねぇ」
『どうなってんの私の頭』
「ヤバいねぇ」
おめでたい席で、人の頭をはたき倒しそうになりました。
新年早々、心の中の暴言でお目汚し失礼致します。
冒頭の夢見のおかげで寝起きが悪く、不機嫌な早瀬由香です。今年もお世話になります。
「どないしたん?由香ちゃん。何やぼんやりしとるなぁ~」
『あぁ、佐倉さん。それがちょっと聞いて下さいよ。初夢で縁起が良いものってあるじゃないですか』
「確かにあるなぁ、そんなん!えっと…何やったっけ」
『割愛します』
「何でやねん」
『論点はそこではないからなのです。私の場合、初夢で出てきたのが、泣いている幼女で。それってどんな意味があると思いますか』
「幼女って…」
「何て言うか」
「言い方」
「それな」
外野うっさいわ。
こそこそするんなら聞こえないようにやれ。
どうにも魚の小骨が喉に引っかかるような、もどかしいような苛立ちが拭えないです。
妙な夢を見た、の一言で済ませばいい話なんでしょうけど。何故でしょうか。既視感を感じるというか‥
「まぁまぁ、取り敢えず由香ちゃんおせちまだ食べてへんやろ?食べ!」
『おせち嫌い…』
「駄々っ子か!」
『えぇ…だって、食べ慣れないものって、何かどうにも…』
「あらもったいない。美味しいのに…カニとか」
「蛍は何処からカニ持ってきたん!?」
分かってます。夢見が良くなくて態度悪いのも。食事にケチつけてるのも自覚アリです。
だが新年早々のテンションハイパーでお送りする、佐倉さんの突っ込みを真横で聞くのは辛い。
カニ争奪戦が始まったテーブルからそっとフェードアウトしたら、乃木‥流架君が声を掛けて下さいました。
「大丈夫?早瀬…じゃなくて、えっと、由香」
『ふはっ、』
「な…っ、何で笑うんだよっ。心配してるのに」
『私もたった今心の中で乃木、じゃなくて、流架君って。思った所だったので』
「…同じなら尚更笑うなよ」
『ルーちゃんの方が良かったかー』
「年賀状由香も見たの!?」
『や、歩くスピーカー…でなく。佐倉さんが、ほら。大きな声で』
「~~っ」
はい。年明け一番でエンジェルの恥じらいいただきました!眼福、眼福。
ニヤニヤしてたら日向君の鉄槌をモロに喰らったけど、気にしないったら気にしない!
『あいた!今ゲンコツをモロに受けた所を敢えて叩くとか…っ。天使だけじゃなくて悪魔がいる!誰ですか!』
「僕だけど」
『心読み君で超納得。まさしく鬼の所業』
「鬼なのか悪魔なのかハッキリしようか」
「ていうか、棗に思い切り叩かれて、まだ天使とか言い出すの由香は…」
痛みでのたうち回ってた所を敢えて突くとか。もう鬼でも悪魔でもどっちでも変わらない気がする。
「突然だけど、僕心読み君の今年の目標~」
『唐突に何が始まったのかな』
「早瀬さんの話をそらしていく方向を軌道修正していこー」
『…新年の目標っていうか、抱負?って。自分自身の向上的なものを掲げるんじゃ、』
「早瀬さん、さっき流架君に大丈夫?って聞かれてたよね?」
『マジで軌道修正図ってきたなこの人…』
「で?」
『う…』
「大丈夫かのお返事は?」
『あ"ー…』
「何…大丈夫じゃないの、由香」
心読み君の容赦ない切り込みのおかげで、流架君にまで険しいお顔をされてしまいました。
同じテーブルにいらっしゃった日向君にも‥や、彼のガン飛ばしはいつもの事ですかね。
「早瀬さん?」
『大丈夫ですって、心読み君。ちょっと寝不足なだけで。静かに過ごしていれば問題ないです。静かに過ごしていれば』
「2回言った」
『そりゃぁ勿論、大事な事だからね。流架君』
「食事も手付かずだけど。食欲は?」
『心読み君の尋問が怖い…。さっきも言った通り、食べ慣れないものが苦手で。どうにも…』
「あっ、由香ちゃーん!今から餅つきやるってー!翼先輩も美咲先輩おるよ!なぁなぁ、由香ちゃんもやろー!」
「…だって」
『…まぁ、お餅なら、多分』
態度が悪い駄々っ子な上、色んな人に気を遣われてしまう新年。明けたばかりなのに、何かもう色々終わってる気がします。自分が。
『初夢の赤目の幼女が気になりすぎるからだ…きっと』
「はいはい、いいから行くよ」
『心読み君がマジ保護者ポジです』
「散々尻拭いさせられてきてるからね~あはは」
『あいたたた、そこ、さっき鉄槌喰らった所まだ痛いんだってばいたたた』
「…棗?どうしたの。何か、難しい顔してるけど」
「…別に」