act.21
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もう夜もすっかり更けた頃。あちこちから話し声が聞こえたり、外からしばしば人の気配がしても。
今日は管理人さん(いや‥ロボット?)があまり厳しく言わないなーと思っていたら、そういえばもう年末だとふと気が付いたのは先程の事。
『そんな矢先に、ノックが聞こえたものだから。も、今度は何のフラグなのかと…』
「(あぁ…だからあんな顔してたんだね)」
『あんな顔とは』
「(ちょっと言葉では表現出来ない)」
年末にやってきた来訪者は、癒しの権化ほっしゃんさんでした。
あんなお顔が一体どういった表情だったのかは分かりませんが。来客が彼だと判明した時は、あからさまに安堵したと思いますね。確実に。
おはようからお休みまで所か、年末にまでトラブルに見舞われてたまるか。
『それでどうしたの?ほっしゃんさん』
「(もう寝るところだった?)」
『や、それはまだ』
「(だったら少しお話しない?いつかみたいに、二人で布団かぶってさ)」
『何だかそれ、凄く懐かしい気が』
「(だめ、かな)」
『ふふ、今日だったらタカハシさん見逃してくれるかな。どうぞ、入って』
学園に来たのは、どしゃ降りの雨の日で。ずぶ濡れになった私を見つけて、一晩中隣に居てくれたのがほっしゃんさんでした。
相棒には確かに指名されたけれども。初対面の人にそこまで出来るなんて、凄いなと思います。本当に、優しい人。
『そんな優しさがいつも居てくれるって思えたから、正直今までの理不尽とかトラブル乗り越えられた気がする…!』
「(そんな事ないよ。それはちゃんと、由香ちゃんの力だよ)」
『ほっしゃんさん…!』
「(理不尽とかトラブルとかは…正直、凄い数だったと思うけど)」
『あ、やっぱり?そんな気はしてたけど、敢えて考えないようにしてたよ。はは…っ。凄く疲れたこの一年』
「(よしよし)」
『来年はもう少し落ち着いた生活を送りたい』
「(無理なんじゃないかな)」
『あれこんな突っ込みつい最近受けた気がする』
しかも即答。これはもう、うっかり泣いてもいいですかね。
布団の隅っこをいじくりながらめそめそしようとしたら、手を止められてしまいました。え、これめそめそしてんなよと?まさか、ほっしゃんさんに限って、そんな。
「(実はずっと、気になってた事があって)」
『え、ごめん大丈夫疑ってなんかないよほっしゃんさんの事。きっと聖人だよ』
「(よく分からないけど、多分そういう事じゃないかな。聞いていいのか、悩んでたんだけど…)」
『ほっしゃんさんになら、何聞かれてもだいじょぶな自信はありますとも!』
「(気を悪くしたら、ごめんね。…あのね。アリス持ちの子の親には、過保護になるか…その。それとは正反対のタイプが多いって、先生から聞いた事があって)」
『ふーん?過保護にもなったりするオヤがあるんだ』
過保護の反対語はなんでしょうかね。
無関心?それとも拒絶…いずれにせよ、子供からしたらロクなものじゃないです。
「(僕はどちらかというと、過保護な方なんだ。由香ちゃんとは多分、正反対の…)」
『まぁ…。クラス内だけでも、個性溢れる所か、色々はち切れちゃってるんで。オヤだって、それこそ色々ってものじゃ…。でもそれがどうしたの?』
確かにこういった話は、何処に地雷があるか分からない話題なので聞きづらい所ですよね。
ほっしゃんさんみたいに打ち解けた人なら、抵抗はないので無問題です。
でもどうしてそんな話をと思うのは、純粋に疑問ですけど。
「(そんな僕が、あの日…。由香ちゃんが転校してきた日。隣にずっといたのは、正しかったのかなって)」
『…正しいって、それどういう、意味…』
「(由香ちゃんの気持ち、きっと何一つ分かってあげられなくて。見てる事しか出来なかったから…)」
『そんな事、思って、たんだ…』
「(…え、由香ちゃんっ?どうして泣くの…っ)」
小さい頃の私は、親が世界の全てでした。今より幼かったのだから、それが普通なのでしょう。
でも。ある日を境に、その世界から拒絶されてしまって。学園に来た日、孤独になってしまったと打ちひしがれていたんです。
実際は違いました。気持ちなんか分かってくれなくても、寄り添ってくれる人がいました。
そこから少しずつ、終わったと思っていた世界が広がっていったんです。
私は馬鹿です。どんなに支えになってくれたのかも想像がつかない程、大切な人なのに。
その人の口から、そんな事を言わせてしまうなんて。
『ほっしゃんさん。私、ずっと大切な事を伝え忘れてたみたいで』
「(う、うん)」
『学園に来たあの日の夜。私の隣に居てくれて、ありがとう、って』
「(僕、何もしてないよ…)」
『独りになっちゃったと思ってた私の隣に、居てくれたの。ほっしゃんさんは』
「(でも、それだけだよ)」
『それが安心した。自分の隣にまだ居てくれる人がいるって思えたの。ほっしゃんさんが居てくれたから‥あの時、雨に打たれて寒いなって気が付いたの。
もし居てくれなかったら…寒い事に気付かないまま雨の中に居た感ある』
「(由香ちゃん…結構自分を省みない時あるよね。確かにありえそう)」
『中々言いよりますなぁ、ほっしゃんさん…っ』
「(…泣き止んだ?)」
そうしてそっと涙をぬぐってくれる彼は、本当に優しい人。
いつも笑顔で見守ってくれている人。大切にしたい人。それなのに。
『でも、ほっしゃんさん。どうして急にその話を?』
「‥‥‥」
『…?ほっしゃんさん?』
いつでも私は自分の事で手一杯になってしまって。相手から沢山貰ってばかりで何一つ返せないでいる。
何が終わりのアリスですか馬鹿野郎。
そんな大層な中二病っぽい名前の能力を持っておいて。別れの辛さを知っていたくせに。彼の沈黙の心の内を疑問に思わなかった、私は。
「(年末、だからさ。思い残す事がないようにしなきゃいけないなって)」
『えぇ…。むしろそんなに長い間気にしてくれてたの申し訳ないな』
「(うん。聞けて良かった。…心残り、一個減ったな)」
『ま、まだあるの?私そんなに色々やらかした?』
「(どうだと思う?)」
『質問に質問で返すのは良くないって、何か黒いヒョウみたいなのが言ってた!』
「(何それ?)」
こんな穏やかな時間がこれからも続くと信じて疑わなかった私は。
別れの辛さなんて、知らなかったのと同じ‥本当に大馬鹿野郎だ。
今日は管理人さん(いや‥ロボット?)があまり厳しく言わないなーと思っていたら、そういえばもう年末だとふと気が付いたのは先程の事。
*
『そんな矢先に、ノックが聞こえたものだから。も、今度は何のフラグなのかと…』
「(あぁ…だからあんな顔してたんだね)」
『あんな顔とは』
「(ちょっと言葉では表現出来ない)」
年末にやってきた来訪者は、癒しの権化ほっしゃんさんでした。
あんなお顔が一体どういった表情だったのかは分かりませんが。来客が彼だと判明した時は、あからさまに安堵したと思いますね。確実に。
おはようからお休みまで所か、年末にまでトラブルに見舞われてたまるか。
『それでどうしたの?ほっしゃんさん』
「(もう寝るところだった?)」
『や、それはまだ』
「(だったら少しお話しない?いつかみたいに、二人で布団かぶってさ)」
『何だかそれ、凄く懐かしい気が』
「(だめ、かな)」
『ふふ、今日だったらタカハシさん見逃してくれるかな。どうぞ、入って』
学園に来たのは、どしゃ降りの雨の日で。ずぶ濡れになった私を見つけて、一晩中隣に居てくれたのがほっしゃんさんでした。
相棒には確かに指名されたけれども。初対面の人にそこまで出来るなんて、凄いなと思います。本当に、優しい人。
『そんな優しさがいつも居てくれるって思えたから、正直今までの理不尽とかトラブル乗り越えられた気がする…!』
「(そんな事ないよ。それはちゃんと、由香ちゃんの力だよ)」
『ほっしゃんさん…!』
「(理不尽とかトラブルとかは…正直、凄い数だったと思うけど)」
『あ、やっぱり?そんな気はしてたけど、敢えて考えないようにしてたよ。はは…っ。凄く疲れたこの一年』
「(よしよし)」
『来年はもう少し落ち着いた生活を送りたい』
「(無理なんじゃないかな)」
『あれこんな突っ込みつい最近受けた気がする』
しかも即答。これはもう、うっかり泣いてもいいですかね。
布団の隅っこをいじくりながらめそめそしようとしたら、手を止められてしまいました。え、これめそめそしてんなよと?まさか、ほっしゃんさんに限って、そんな。
「(実はずっと、気になってた事があって)」
『え、ごめん大丈夫疑ってなんかないよほっしゃんさんの事。きっと聖人だよ』
「(よく分からないけど、多分そういう事じゃないかな。聞いていいのか、悩んでたんだけど…)」
『ほっしゃんさんになら、何聞かれてもだいじょぶな自信はありますとも!』
「(気を悪くしたら、ごめんね。…あのね。アリス持ちの子の親には、過保護になるか…その。それとは正反対のタイプが多いって、先生から聞いた事があって)」
『ふーん?過保護にもなったりするオヤがあるんだ』
過保護の反対語はなんでしょうかね。
無関心?それとも拒絶…いずれにせよ、子供からしたらロクなものじゃないです。
「(僕はどちらかというと、過保護な方なんだ。由香ちゃんとは多分、正反対の…)」
『まぁ…。クラス内だけでも、個性溢れる所か、色々はち切れちゃってるんで。オヤだって、それこそ色々ってものじゃ…。でもそれがどうしたの?』
確かにこういった話は、何処に地雷があるか分からない話題なので聞きづらい所ですよね。
ほっしゃんさんみたいに打ち解けた人なら、抵抗はないので無問題です。
でもどうしてそんな話をと思うのは、純粋に疑問ですけど。
「(そんな僕が、あの日…。由香ちゃんが転校してきた日。隣にずっといたのは、正しかったのかなって)」
『…正しいって、それどういう、意味…』
「(由香ちゃんの気持ち、きっと何一つ分かってあげられなくて。見てる事しか出来なかったから…)」
『そんな事、思って、たんだ…』
「(…え、由香ちゃんっ?どうして泣くの…っ)」
小さい頃の私は、親が世界の全てでした。今より幼かったのだから、それが普通なのでしょう。
でも。ある日を境に、その世界から拒絶されてしまって。学園に来た日、孤独になってしまったと打ちひしがれていたんです。
実際は違いました。気持ちなんか分かってくれなくても、寄り添ってくれる人がいました。
そこから少しずつ、終わったと思っていた世界が広がっていったんです。
私は馬鹿です。どんなに支えになってくれたのかも想像がつかない程、大切な人なのに。
その人の口から、そんな事を言わせてしまうなんて。
『ほっしゃんさん。私、ずっと大切な事を伝え忘れてたみたいで』
「(う、うん)」
『学園に来たあの日の夜。私の隣に居てくれて、ありがとう、って』
「(僕、何もしてないよ…)」
『独りになっちゃったと思ってた私の隣に、居てくれたの。ほっしゃんさんは』
「(でも、それだけだよ)」
『それが安心した。自分の隣にまだ居てくれる人がいるって思えたの。ほっしゃんさんが居てくれたから‥あの時、雨に打たれて寒いなって気が付いたの。
もし居てくれなかったら…寒い事に気付かないまま雨の中に居た感ある』
「(由香ちゃん…結構自分を省みない時あるよね。確かにありえそう)」
『中々言いよりますなぁ、ほっしゃんさん…っ』
「(…泣き止んだ?)」
そうしてそっと涙をぬぐってくれる彼は、本当に優しい人。
いつも笑顔で見守ってくれている人。大切にしたい人。それなのに。
『でも、ほっしゃんさん。どうして急にその話を?』
「‥‥‥」
『…?ほっしゃんさん?』
いつでも私は自分の事で手一杯になってしまって。相手から沢山貰ってばかりで何一つ返せないでいる。
何が終わりのアリスですか馬鹿野郎。
そんな大層な中二病っぽい名前の能力を持っておいて。別れの辛さを知っていたくせに。彼の沈黙の心の内を疑問に思わなかった、私は。
「(年末、だからさ。思い残す事がないようにしなきゃいけないなって)」
『えぇ…。むしろそんなに長い間気にしてくれてたの申し訳ないな』
「(うん。聞けて良かった。…心残り、一個減ったな)」
『ま、まだあるの?私そんなに色々やらかした?』
「(どうだと思う?)」
『質問に質問で返すのは良くないって、何か黒いヒョウみたいなのが言ってた!』
「(何それ?)」
こんな穏やかな時間がこれからも続くと信じて疑わなかった私は。
別れの辛さなんて、知らなかったのと同じ‥本当に大馬鹿野郎だ。