act.20
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*
よくよく考えたら、あの時お茶を入れたのは今井先輩でしたね。
まさか...まさか雑用押し付けたのって、二人がグルになって?今井先輩までもが悪どい人だったんですかっ?
や、それならそれで、流石姐さんと呼ばれてしまうあの人の兄といえばある意味納得...いやいや!
気をきかせてお茶を入れてくれた今井先輩を見て、あ。そうだ。いいこと思い付いちゃった☆っていう櫻野先輩の当て付けなのかも!
むしろそうさせて下さい...っ。あの生徒会室が真っ黒くろすけだらけだったら、ちょっと私立ち直れない。
それにしても、何か櫻野先輩って私に対して少し...いや、大分思った事言いたい放題じゃないです?いくら目下だからって失礼じゃなかろうか。
私が一体何した...
...。
そういえば先のZの件では大変やらかしましたね。
主に事後処理で。きっと。
『大分大きな借りを作ってしまったって事ですかね...はぁ...』
以上、私こと早瀬由香の独白をご清聴ありがとうございました。
目的地にたどり着いたようです。
*
「え...えっと、あの...」
『......』
来訪を知らせるノックをして、ドアを開けて下さった女性徒を見て一瞬沈黙。
一歩下がり、廊下を見渡せば目的地が間違っていないであろう事を知らせる掛札がかかっていました。それなのに。
『え、危力系にこんな超絶美少女が?初耳なんですけど』
「えぇ...っ!?そんな、私は、えっと...っ」
「いるわよ~、中等部に。聞いたことない?氷姫ってあだ名」
『あ、ルイ先輩』
「ルイお姉さんでしょ~?何だか最近良く会うわねー」
危力系とか危ないんじゃ...!?
とか、今更すぎるんですよね。あはは、そうですねールイお姉さん。と、そこは軽く流しておきましょう。
大体、ここが目的地ですし。提出書類が滞っている場所。
というか、こんな超絶美少女いるなんて聞いてないそこ詳しく的な会話を繰り広げていると。
ガッタンと何かが倒れる音が聞こえました。そちらへ目をやると、倒れた椅子の近くに立ち尽くしている日向君が。彼が音の持ち主でしょうか。
『あ、日向君こんにちわ。大掃除というお忙しい時にお邪魔してすみません』
「......」
というか、掃除とかやるキャラには到底見えねーな。という一人言は確実に心の中に止めておいた方が良さそうでしょう。
「お前」
『はい?』
「知ってるのか、コイツら」
『はぁ...何度か顔を合わせるエンカウン...いえ、機会が』
「危力系だぞ!何で関わってんだテメェ...!」
『それは~...まぁー...はい。色々あったからとしか(説明めんどい)』
「面倒くさがってんじゃねぇ!」
『ぎゃ!ちょちょ!いきなり炎出さないで下さいよ!暴力反対!』
「そうよぉ~っ、女の子は丁寧に扱わなきゃでしょ!そんなんじゃ嫌われるわよー?」
「カマ野郎は黙ってろ」
「あら、何よ...ヤル気なの?」
一触即発。そんな言葉が正にお似合いの雰囲気に陥りました。半身は体感温度が上がり、もう半身には何やらふわりとした怪しい黒煙が漂っています。
あ"ーもー...これっだから血の気の多い若人共は!
『あ、あの、お互いその不穏なものは一回しまって...!』
「ルイー。さっきからドアの所で何人口密って...」
『あっ!Kわぃ...で、なくて。(そういやこの人名字なんでしたっけ)えっと、確か颯先輩!』
「あれ、キューティキュアパープル?どうしてここに?」
『訳は後でいいですから!この二人止め...!ひっ!?』
「何でカマイタチ野郎は名前呼びなんだよ、馬鹿その二が」
『今そこ!?今そこなんですか!?日向君!大事な事は二回言う主義ですよ』
「よく分からんが、やれやれルイーっ。生意気な後輩やっつけろー!」
ほんっとに空気読めないなこの先KY先輩は!
むしろ欲望に忠実過ぎやしませんか。
えーこれまたとばっちり食らう流れですか、そうなんですか。
超絶美少女さんの仲裁は正直期待できなさそうです。今にも泣きそうな顔で、めっちゃオロオロしてますから。
...というか、先程呑気にとばっちり食らうのか的な事言いましたけど。真面目に考えると軽く考えてはいけないのでは?
ここにいる人達って、そんじょそこらの生徒とはアリスの格がレベチでしょうし。
え、マジでヤバイんじゃ?私何にもしてないのに、罰則仲良く受ける羽目になりたくないんですけど。そんな焦りがやっと出てきた時。
「トラブルを起こしたら、ペルソナ直々の懲罰だ。...何度も言った筈だろう」
「ち...っ」
「あらざーんねーん。まぁ年下好みじゃないから遣り甲斐ないしぃ。別にいいけどぉ~」
第三者の登場で、最悪の事態は避けられたようです。良かった...!
というか、誰でしょうか。鶴の一声の如く、事をおさめることが出来るなんて。(そう考えると、KY先輩に助けを求めるのは間違った選択肢でした)
いかんせん、出入口のドア付近が密過ぎてよく見えな...。
「早瀬由香だったか。危力系の教室に何の用だ」
『あ...。えっと、八雲先輩、でしたよね。あの、お礼をずっと言いそびれていて!先日のクリスマスの時は大変お世話になりました!』
「...いや」
「探し物見つかったの知らせたの俺!俺な!」
しゃしゃるなKY。空気なら黙ってろ。
落ち着いて思い返すと、KY先輩にキューティキュアパープルとかふざけた名前で呼ばれた時、私否定しなかった気がするな。
地味に受け入れてしまった感が誠に遺憾である。ショック。
「(この馬鹿その二...。虫野郎とも面識あるのかよ、クソが)」
『八雲先輩。生徒会長のめいれ、お使いで来ました。まだ提出してない回覧の書類があるとかで...』
「性質上、任務が多い場所でな。誰が確認したかは覚えてはいないが。書類はあった気がする」
『印鑑だけすればいいと思うので、頂いていってもいいですか?』
「分かった。こっちだ」
「あれ?キューティキュアパープル俺の言う事スルーしてね?あれ?」
疑問を上げる声に誰も応えない辺り。
普段の彼の扱いを垣間見たような気がしました。
*
「今回は使いでここへ来たようだが」
『そうですね...。ちょっと、いえ大分大きな借りがあったようなので。逆らえないとでもいいましょうか』
「そうだとしても。ここへはあまり来ない方がいいだろう」
「え~っ。何よそれ折角来てくれたのにつまんなーい」
「ルイ」
「ちぇーっ」
書類を捜索している最中、八雲先輩に言われた言葉は。
何かしらのトラブルを予測しての声かけだったのでしょう。周りの目は、ここに対して色々と偏見を持っているようですし。...でも。
『私と先輩方、一体何が違うっていうんでしょうか...?』
「それはアリスの能力だ。周囲に害を及ぼすかどうか。危険度が違う」
「っていうか、八雲。アンタそんなに喋る奴だった...?」
ルイ先輩の冷静かつ真面目に話の腰を折る発言に、思わず吹き出しそうになりましたが。何とかスルーします。
『確かに、先輩方が危力系だと初めて知った時は驚きました。危険なんて言葉、穏やかじゃないですし...』
「そんな奴らに関わっていると知れたら、早瀬。君にも何か及ぶことになるかもしれない」
『...それは』
「?」
『忠告という名の心配にしか、聞こえませんし。この前は、探し物を探すのを手伝って下さったり...。何処が危険だって言うんです。
私は...何も知りもしないのに、偏見で心無い言葉を言う人の方が、よっぽど...怖い、です』
「ちょっと八雲聞いた!?由香ちゃん、めっちゃいい子なんですけど!も、ここの子にしちゃいましょうよ!」
「キューティキュアパープルがまさか仲間に...!?」
「止めろ。全く...。そういう君であるからこその忠告。牽制のつもりだったんだが」
『ご、ごめんなさい...。怒ってますか...?』
「...いや」
そう言って静かに頭に乗せてくれた手は、やっぱり全然怖くなかったです。
自分達の方が、偏見だとか差別でよっぽど傷付いているだろうに。それでも心を配ってくれるその言葉が。悲しいくらいに優しかったから。
「気持ちは理解した。...ありがとう」
『...八雲先輩』
「何だ?」
『私のお膝に重なってく書類は、まだ増える感じです?』
「......」
『何かまた頭ぽんぽんされたんですけど。さっきとはちょっと意味合い違う感じがしますよ何でかな、あれ!?』
私の嘆きはスルーして、膝の上の書類は量を着々と増やしていくのでした...。大人ってやつはこれだから!
え、これ、そもそも私一人で持っていける量なんですかね?
そういや櫻野先輩に書類がいくつあるのか聞くの忘れてた...!
確認作業。それは業務を行う上で大事な一歩であると、三度目にして私こと早瀬は学習するのでした。