act.19
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#1
「早瀬さーん、脚立ってもう無いんだっけか?まだあったら助かるんだけど」
『あー...学園祭で、潜在系のお化け屋敷がトラブった時に使いましたよ。確か。潜在系の倉庫へ行けば多分...』
「早瀬さん、ツリーに飾り付けする紐が壊れちゃったんだけど何とかならないかな?」
『うわ、長年使ってたのか結構傷んでますね...。体質系のミュージカルで使った衣装の余りの材料で、代用になりそうな紐があった筈...』
「あ、いたいた早瀬さーん!ちょっと聞きたいことがあって。学園祭で使ったさー...」
じゃかぁしいわ!!
冒頭から暴言失礼致します。投げ出したい気持ちをぐっとこらえて、私こと早瀬由香は今現在クリスマスツリーの飾り付け班でしゃかりきに働かされています。
ノーモア労働をスローガンに掲げて、ケーキ班よりも楽そうなこちらを選んだというのに。何故。
「そこの働き者のお嬢さーん、ここの飾り付け手伝って欲しいなー」
『......殿内先輩』
「お、ナマイキな顔してるなー。ミュージカルの居眠り姫が誰だったのか、今ならうっかり口が滑っちゃいそうだな~」
『これを飾り付けすればいいんですね任せて下さ...って、ぅきゃあぁぁ!?』
「由香ーっ!大丈夫か何もされてないか!?」
『安藤先輩!?』
「テメー殿内!由香から今すぐに離れろ!」
「はぁ?由香ちゃんと俺は同じ飾り付け班なんだけど?一緒にいて何が悪いんだよ」
『あっ!飾り付け散らばっちゃったじゃないですかーっ。もー!ただでさえも思ったより忙しいんですから、仕事増やさないで下さいよ、安藤先輩!
先輩はケーキ班なんですからあっち行ってて下さい!』
「...っ!」
あからさまにショックを受けた顔をされたけど、無視ったら無視です。
Zの件があって以来、どうにも安藤先輩が更に過保護になったように思います...。近寄る不審者は片っ端から牽制にかかる...というか。この場合、その不審者は殿内先輩に当てはまるんですかね。確かに別の意味では警戒はしておきたい人ですけど。
因みに安藤先輩は、原田先輩が責任持って回収してくれました。
『...殿内先輩。あの』
(由香がロリコンと二人きりに!危なすぎるだろ!離せよ美咲!)
(お前いい加減ウザいんだよ翼ぁ!気持ちは分からなくもないけど、物理的に二人きりとか有り得ないから!)
「うん?何だ」
『(どんだけ信用ないんだこの人)私、先輩に聞いてみたいと思っていた事があって』
「お。やっぱり俺の事気になってきちゃった感じ?」
『そういうチャラい所が信用を損ねるのかもしれませんね...』
「何の事だ?」
『いえ、何も。私が聞きたかったのは...これです』
殿内先輩とのエンカウントは、先程の居眠り姫の正体の件もあるので。出来れば避けたかったのですが。
その一方で、相談したい事があるのも事実でした。それは、ポケットの中にずっと潜ませていた物について。
「これ...学園祭の時に渡したアリスストーンか?」
『はい...それで、あの』
「何だよもー、肌身離さず持ち歩いてたのか?可愛い奴め」
『(ただポケットに突っ込んだまま忘れていたと言って、プライドを粉砕してやりたい)』
「...ん?由香、もしかしなくても最近アリス使ったみたいだな。石に込めた力が消耗してる」
『やっぱりですか...』
そう。確かに貰った時はナスビ色をしていたその石は、今は殆ど色を失っているのです。
自分がアリスを発動させたのと同時に、この石の力を無意識に借りていた。そう考えるのが、自然の流れになるんです...けど。
『殿内先輩のアリスは確か、相手のアリスの力を増幅させる能力...でしたっけ』
「ご名答。いやーそれにしたって、よく知りもしない相手の石の力を借りるって中々...おーい?聞いてるかー」
『そう、ですか...だとしたら...』
心当たりは一つ。学園の(多分)外れた場所で爆発に巻き込まれて...安積柚香さんに助けられた時。
あの時だけ自分の力とは見合わない程に強力なアリスを発揮出来た原因は、石の力だという事だけは分かりました。でも、だからといって。あれの...。死の事象以外も読み取れたという点は、どう説明をつければいいのでしょうか。
『今までの自分のアリスとは、少し違った類いに感じたんですけど...』
「それはまだアリスを発動させる力が発達途上なのかもしれないな。増幅された事によって、出来る範囲が増えたって考えるべきだろうな。普通は」
『...普通はって、どういう意味ですか?』
「より強くアリスを発動させる事によって、まだ目覚めていない第2の能力が刺激されて...って言うケースも無きにしもあらずな訳よ。でもこれはかなりレアケースだぞ?」
『どちらにせよ、現状ではハッキリとした結論を出すのは難しいという事ですね...』
今一度、君自身のアリスと向き合った方がいい。Zに所属するあの人(確か志貴さんと呼ばれていた)の忠告が、あれからというもの。いつも心の何処かで引っ掛かるのです。
そして知り得なかった筈のゆき兄との出会いの矛盾も。全ては私のアリスが今までの解釈とは異なる答えを(第2の能力の可能性も含めて)見付けることが出来れば、解決の糸口になると思うのですけど...。
やっぱり推測の域を出られず、手詰まり状態です。
「お前まだ初等部だろ?そんなに思い悩まなくてもいいと思うけど...まぁ、あれだ」
『?』
「何かあったら頼ってくれていいからな。これでも特力系代表だし」
『えと...ありがとうございます』
物凄くさりげなく頭をポンポンと撫でられました。触られるまで近距離に近付かれていたのに気が付きませんでした。
こ、これだからこのイケメンヤンキー野郎は怖いんですよ...!
「それでさー、さっきの話に戻るんだけど」
『え。何か話してましたっけ』
「アリス石の話!あれって誰にでも石に込められた能力を引き出せる事が出来る訳じゃないんだ」
『そうなんですか?でも私、知らない内に...』
「そこはお互いの相性が重要になるらしい。因みに翼は俺とは相性最悪でなー。目茶苦茶苦労した。翼が!」
『殿内先輩のアリスって便利そうだから、それは安藤先輩大変だったんじゃ...ちょっと待って下さい。その相性がうんぬんの言い方だと、まるで...』
「そう。由香ちゃんは俺のアリスを結構あっさり使ったみたいだから、相性抜群って訳。なぁ、由香ちゃんどう?5年後と言わずに、今から仲良くなっておくっていうのもアリ...」
「おーい殿内。試作品持ってきた」
影が。影をたずさえてやってきました。
それは夜が二つ足で歩むがごとく...すみません、少しふざけました。
けれど決して大袈裟の表現でも、ましてや比喩ではないです。
おどろおどろしい雰囲気をまとった安藤先輩が、この世の物とは思えない色をした何かを手にしているんですけど...(ついでにそこから変な気体も漏れ出てる)
えっ、試作って何ですか。あの人ケーキ班じゃありませんでしたっけ。
『安藤...先輩?あの、その見るからに危険物...いえ。手に持ってる物体って...』
「あぁ。悪いな、由香。これは殿内専用に持ってきた奴だから。食べたいんだったら後で別のケーキをつまみ食いさせてやるよ」
『そら恐ろしくなる事を爽やかな笑顔で言い切りましたよこの先輩!?つまりその物体ってケーキだったんですか!?』
「由香ちゃん怖い助けて。俺、試作品で殺される」
『迷わず後輩の後ろへ隠れないで下さいよ!殿内先輩!っていうか、それ多分逆効果なんじゃ...』
「あれ程、手ぇ出すなって。俺言ったよな?」
「待て待て待て話せば分かる!」
「...」
『?な、何ですか、安藤先輩。私の方見て...』
「そうだな。分かった。わざわざこの場でやることじゃないな。だったらあっちに行こうぜ、殿内!」
「あっちの方って、明らか誰もいない空間じゃね!?ちょっ、おまっ。アリス使って引きずるなよ!誰か...!」
『......』
呆気に取られている間に、二人は何処かへと姿を消してしまわれました。
多分殿内先輩は、この場にはもう戻ってこないと思われます。いえ。来れないと言った方が正しいのか...。
それにしても安藤先輩のこの過保護っぷりは、どうなんでしょうか。正直、心配性過ぎるとは常々思っていたのですが。最近は更に磨きがかかったような...。
一度それとなく話してみた方がいいんでしょうかね...?
...。
『ま、いっか』
何気なく視線を向けた先には、ドッペルゲンガーのアリスを使ってテキパキ仕事をこなす原田先輩の姿が目に入りました。安藤先輩の暴走には付き合いきれないと、早々に切り捨てたようです。
うん。そうですよね。とりあえず私も仕事します。
ある意味現実逃避じゃないかって?知りませんよ。そんなの。面倒くさいことは後回しです。殿内先輩辺りの安否が気にならなくもないですけど。まぁ、そこは、ほら。特力系代表って言ってましたし。多分何とかなりますって(適当)
「早瀬さーん、脚立ってもう無いんだっけか?まだあったら助かるんだけど」
『あー...学園祭で、潜在系のお化け屋敷がトラブった時に使いましたよ。確か。潜在系の倉庫へ行けば多分...』
「早瀬さん、ツリーに飾り付けする紐が壊れちゃったんだけど何とかならないかな?」
『うわ、長年使ってたのか結構傷んでますね...。体質系のミュージカルで使った衣装の余りの材料で、代用になりそうな紐があった筈...』
「あ、いたいた早瀬さーん!ちょっと聞きたいことがあって。学園祭で使ったさー...」
じゃかぁしいわ!!
冒頭から暴言失礼致します。投げ出したい気持ちをぐっとこらえて、私こと早瀬由香は今現在クリスマスツリーの飾り付け班でしゃかりきに働かされています。
ノーモア労働をスローガンに掲げて、ケーキ班よりも楽そうなこちらを選んだというのに。何故。
「そこの働き者のお嬢さーん、ここの飾り付け手伝って欲しいなー」
『......殿内先輩』
「お、ナマイキな顔してるなー。ミュージカルの居眠り姫が誰だったのか、今ならうっかり口が滑っちゃいそうだな~」
『これを飾り付けすればいいんですね任せて下さ...って、ぅきゃあぁぁ!?』
「由香ーっ!大丈夫か何もされてないか!?」
『安藤先輩!?』
「テメー殿内!由香から今すぐに離れろ!」
「はぁ?由香ちゃんと俺は同じ飾り付け班なんだけど?一緒にいて何が悪いんだよ」
『あっ!飾り付け散らばっちゃったじゃないですかーっ。もー!ただでさえも思ったより忙しいんですから、仕事増やさないで下さいよ、安藤先輩!
先輩はケーキ班なんですからあっち行ってて下さい!』
「...っ!」
あからさまにショックを受けた顔をされたけど、無視ったら無視です。
Zの件があって以来、どうにも安藤先輩が更に過保護になったように思います...。近寄る不審者は片っ端から牽制にかかる...というか。この場合、その不審者は殿内先輩に当てはまるんですかね。確かに別の意味では警戒はしておきたい人ですけど。
因みに安藤先輩は、原田先輩が責任持って回収してくれました。
『...殿内先輩。あの』
(由香がロリコンと二人きりに!危なすぎるだろ!離せよ美咲!)
(お前いい加減ウザいんだよ翼ぁ!気持ちは分からなくもないけど、物理的に二人きりとか有り得ないから!)
「うん?何だ」
『(どんだけ信用ないんだこの人)私、先輩に聞いてみたいと思っていた事があって』
「お。やっぱり俺の事気になってきちゃった感じ?」
『そういうチャラい所が信用を損ねるのかもしれませんね...』
「何の事だ?」
『いえ、何も。私が聞きたかったのは...これです』
殿内先輩とのエンカウントは、先程の居眠り姫の正体の件もあるので。出来れば避けたかったのですが。
その一方で、相談したい事があるのも事実でした。それは、ポケットの中にずっと潜ませていた物について。
「これ...学園祭の時に渡したアリスストーンか?」
『はい...それで、あの』
「何だよもー、肌身離さず持ち歩いてたのか?可愛い奴め」
『(ただポケットに突っ込んだまま忘れていたと言って、プライドを粉砕してやりたい)』
「...ん?由香、もしかしなくても最近アリス使ったみたいだな。石に込めた力が消耗してる」
『やっぱりですか...』
そう。確かに貰った時はナスビ色をしていたその石は、今は殆ど色を失っているのです。
自分がアリスを発動させたのと同時に、この石の力を無意識に借りていた。そう考えるのが、自然の流れになるんです...けど。
『殿内先輩のアリスは確か、相手のアリスの力を増幅させる能力...でしたっけ』
「ご名答。いやーそれにしたって、よく知りもしない相手の石の力を借りるって中々...おーい?聞いてるかー」
『そう、ですか...だとしたら...』
心当たりは一つ。学園の(多分)外れた場所で爆発に巻き込まれて...安積柚香さんに助けられた時。
あの時だけ自分の力とは見合わない程に強力なアリスを発揮出来た原因は、石の力だという事だけは分かりました。でも、だからといって。あれの...。死の事象以外も読み取れたという点は、どう説明をつければいいのでしょうか。
『今までの自分のアリスとは、少し違った類いに感じたんですけど...』
「それはまだアリスを発動させる力が発達途上なのかもしれないな。増幅された事によって、出来る範囲が増えたって考えるべきだろうな。普通は」
『...普通はって、どういう意味ですか?』
「より強くアリスを発動させる事によって、まだ目覚めていない第2の能力が刺激されて...って言うケースも無きにしもあらずな訳よ。でもこれはかなりレアケースだぞ?」
『どちらにせよ、現状ではハッキリとした結論を出すのは難しいという事ですね...』
今一度、君自身のアリスと向き合った方がいい。Zに所属するあの人(確か志貴さんと呼ばれていた)の忠告が、あれからというもの。いつも心の何処かで引っ掛かるのです。
そして知り得なかった筈のゆき兄との出会いの矛盾も。全ては私のアリスが今までの解釈とは異なる答えを(第2の能力の可能性も含めて)見付けることが出来れば、解決の糸口になると思うのですけど...。
やっぱり推測の域を出られず、手詰まり状態です。
「お前まだ初等部だろ?そんなに思い悩まなくてもいいと思うけど...まぁ、あれだ」
『?』
「何かあったら頼ってくれていいからな。これでも特力系代表だし」
『えと...ありがとうございます』
物凄くさりげなく頭をポンポンと撫でられました。触られるまで近距離に近付かれていたのに気が付きませんでした。
こ、これだからこのイケメンヤンキー野郎は怖いんですよ...!
「それでさー、さっきの話に戻るんだけど」
『え。何か話してましたっけ』
「アリス石の話!あれって誰にでも石に込められた能力を引き出せる事が出来る訳じゃないんだ」
『そうなんですか?でも私、知らない内に...』
「そこはお互いの相性が重要になるらしい。因みに翼は俺とは相性最悪でなー。目茶苦茶苦労した。翼が!」
『殿内先輩のアリスって便利そうだから、それは安藤先輩大変だったんじゃ...ちょっと待って下さい。その相性がうんぬんの言い方だと、まるで...』
「そう。由香ちゃんは俺のアリスを結構あっさり使ったみたいだから、相性抜群って訳。なぁ、由香ちゃんどう?5年後と言わずに、今から仲良くなっておくっていうのもアリ...」
「おーい殿内。試作品持ってきた」
影が。影をたずさえてやってきました。
それは夜が二つ足で歩むがごとく...すみません、少しふざけました。
けれど決して大袈裟の表現でも、ましてや比喩ではないです。
おどろおどろしい雰囲気をまとった安藤先輩が、この世の物とは思えない色をした何かを手にしているんですけど...(ついでにそこから変な気体も漏れ出てる)
えっ、試作って何ですか。あの人ケーキ班じゃありませんでしたっけ。
『安藤...先輩?あの、その見るからに危険物...いえ。手に持ってる物体って...』
「あぁ。悪いな、由香。これは殿内専用に持ってきた奴だから。食べたいんだったら後で別のケーキをつまみ食いさせてやるよ」
『そら恐ろしくなる事を爽やかな笑顔で言い切りましたよこの先輩!?つまりその物体ってケーキだったんですか!?』
「由香ちゃん怖い助けて。俺、試作品で殺される」
『迷わず後輩の後ろへ隠れないで下さいよ!殿内先輩!っていうか、それ多分逆効果なんじゃ...』
「あれ程、手ぇ出すなって。俺言ったよな?」
「待て待て待て話せば分かる!」
「...」
『?な、何ですか、安藤先輩。私の方見て...』
「そうだな。分かった。わざわざこの場でやることじゃないな。だったらあっちに行こうぜ、殿内!」
「あっちの方って、明らか誰もいない空間じゃね!?ちょっ、おまっ。アリス使って引きずるなよ!誰か...!」
『......』
呆気に取られている間に、二人は何処かへと姿を消してしまわれました。
多分殿内先輩は、この場にはもう戻ってこないと思われます。いえ。来れないと言った方が正しいのか...。
それにしても安藤先輩のこの過保護っぷりは、どうなんでしょうか。正直、心配性過ぎるとは常々思っていたのですが。最近は更に磨きがかかったような...。
一度それとなく話してみた方がいいんでしょうかね...?
...。
『ま、いっか』
何気なく視線を向けた先には、ドッペルゲンガーのアリスを使ってテキパキ仕事をこなす原田先輩の姿が目に入りました。安藤先輩の暴走には付き合いきれないと、早々に切り捨てたようです。
うん。そうですよね。とりあえず私も仕事します。
ある意味現実逃避じゃないかって?知りませんよ。そんなの。面倒くさいことは後回しです。殿内先輩辺りの安否が気にならなくもないですけど。まぁ、そこは、ほら。特力系代表って言ってましたし。多分何とかなりますって(適当)