act.16
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#3
Zの侵入者から大きく発展した騒動から、暫く経って日常が戻ってきた頃。
持ち上げ君と腹を割った...とまではいかないけれど。とにかく、話をしました。あの時の返事...もしくは、答えとも言うかもしれません。
知らなかったです。自分の本当の気持ちを誤魔化さずに伝えると言うのは、こんなにもどかしくて大変なものだったなんて。
でもそれをしてまで気持ちを伝えてくれた持ち上げ君には、私も誠意を持って答えなくちゃいけないと思ったから。...もう同じ間違いを繰り返すつもりも、なかったですしね。
「それが...今のお前の気持ちなんだな。早瀬」
『は、い...。その...持ち上げ君。本当に...』
「それ以上は言うなよ。どうせ同じ事言うつもりなんだろ」
『で、でも...』
「俺さ。最初はお前の事なんて眼中に無かったんだ。でも、ある日見た目がガラッと変わってびっくりしてから目で追うようになってた。そこから段々、案外面白い奴だと思って、それから...」
『...持ち上げ君?』
「...あぁ。結構早瀬って、根性あるんだなって」
『そんな事無いです...。私、今日だってここに来るの、ずっと怖くて...っ』
「でも、来てくれた。ありがとな。早瀬。俺はそれで十分だよ。...今はな」
『今は?それってどういう...ふわっ!?』
「さぁな!俺とお前、能力別クラスも一緒なんだ。これからも今まで通りで頼むぜ。それじゃぁな!」
私の頭って、調度いい所にあるように見えるんでしょうか。色んな人にやけに撫で回されるような気がします。
持ち上げ君もその一人で、彼らしくちょっと乱暴にかき回して颯爽と去っていってしまいました。
結局持ち上げ君の望む返答は出来なくて、もっと心が痛むものだと思っていたけれど...意外にも清々しい気持ちです。
...ずっと。
今まで自分の人生はどん底でツイてないものだと、諦めてきた部分がありました。でも...
『"笑ってるのがいい。何もかも笑い飛ばすくらいに明るくしてれば、自然に良いことがこっちに寄ってくるって!"...うん。そうだね。ゆき兄...』
落ち込んでいた私に、ゆき兄が掛けてくれた言葉はちょっと...いえ、大分眩しいです。到底実行できそうにありません。
でも、やっと少しだけ前向きになれそうなんです。
過去が消えた訳じゃない。それが心の中で酷く渦巻く日だって、これからきっとあると思います。
そんな中で全ては難しくとも、私を理解しようと、重荷を分け合おうと手を差し伸べてくれる人がいる。
やっとその事に気が付けたから。
ふと空を仰げば、清々しくなる程の晴天。私は日の光を一身に浴びるように大きな伸びを一つして、そして...
『寝坊したとか...っ』
何この出鼻くじかれ展開。これっぽっちも望んでないんですけど...っ。
私こと早瀬由香は今現在、初等部B組前の廊下で立ちすくんでるなうです。
あのですね?ちょっと言い訳をさせて下さい。日常が戻ってきて、色々とケジメをつけるに至るまで、相当長い道のりだったんですよ。分かりますよね?えぇ、分かりますとも。
やっと一息つけたと思って安心したら、急に疲れがどっときて寝坊の一つや二つとかするに決まってると思いませんかっ?えぇ、えぇ。思いますとも!
だから何処までも締まりがないのは私のせいじゃない。周りの環境が悪かったんです。
そう。俺は悪くねぇ!久しぶりに大事なことは二度(以下略)
教室の扉の向こう側に耳を傾けてみると、とっくにHRは終わっています。1時限目の授業が既に始まっていて、先生の声だけが静かに教室に響いていたりするのですが...。(確か1時限目は社会科だったから、槙原先生の声ですよね、これは)
この空気の中、教室へ足を踏み入れろ...だと...。そんなの...っ。
『無理に決まってる。注目されて目立つ上に笑いの的になるのが目に見えるじゃないですか...っ。目立つのやだ目立つのやだ...!
は...っ!そうだ。1時限目が終わった休み時間にナチュラルに席について私最初からいましたけど空気をかもし出せば...うわぁ!?』
「なに一人コントやってるんだ、早瀬。そんな元気そうな様子じゃぁ、体調不良って訳じゃ無さそうだな?」
『まっ、ままっき、槙原先生...っ!なな、何で...っ!?』
「あのな...教壇に立ってるから丸見えだっての。お前の挙動不審の姿」
思わずマジかと呟いてしまったら、おぉ、マジだと先生からノリの良い返答をいただきました。
というか、体調不良という選択肢は思い付きませんでした。むしろそうすれば良かった...っ!
後悔しても、全て後の祭りです。
今だに廊下に立ち尽くしてる私を見かねたのか、槙原先生は私の背中を押して教室へと強制入場させてきました。
『うぇぁっ!?』
「前回出した宿題の答え合わせ始める所だったんだ。調度いいから席に着く前に、全問答えを黒板に書いていけ。早瀬」
『全問!?』
「あぁ。不正解があったら、さっきの一人コントを今度は教壇で披露だからなー」
『何ですかその精神的ダメージが大きな罰ゲーム!?』
最早絶叫と化している突っ込みは教室全体に響き渡って、クラスメイトの笑いを誘っています。
うぅ...自業自得とはいえ、既にこの状態が罰ゲームなんですが...っ。
あぁほら。私の席のお隣さんの、人の不幸は蜜の味と喜ぶ人だって...。
『ふぉわっ!?なな、何っですか...っ!この現状がお望み展開過ぎて既に笑い尽くしちゃったんですか心読み君...っ。笑顔固まっちゃって何か怖、』
「早瀬さん、髪飾りは?」
『...えっ?』
「いつも付けてる髪飾り。もしかして...付けてないの?」
『...!』
心読み君が何処か神妙な面持ちをしていた理由に、思わず目を見開いて茫然としてしまいました。
大目玉の遅刻確定で慌てたせいだったんでしょうか。
私...。心読み防止シールと一緒に手離すことは無かったあの髪飾りを...。アリス制御装置を、信じられないのですが忘れてきてしまったみたいです。
あれが無ければ、恐ろしくて仕方なかった筈なのに。
その事実が信じられなくて、今度は私がその場で固まってしまいました。
そんな私を見た心読み君はおもむろに立ち上がって、私の手のひらに指を絡めて静かに言いました。
「...今、視える?」
『...っ!心、読み君...っ。わ、私...っ』
「うん」
『今、出来てる...っ。視えないようにするのがっ。自分で制御、出来て...っ』
「...全く。早瀬さんって本当に泣き虫。っていうか、更に注目浴びるの分かってる?」
『そ...っそんな、のっ。今、更...っ。うぁ...っ。うわぁぁぁん!』
今までアリスの制御は何度も試みてきた事でした。でもその度に失敗して、酷く打ちのめされてきたからこそ、制御装置を使用していた訳で。
それがどうして今になって出来るようになったんでしょうか?そんな疑問がよぎったけれど。
今この瞬間は、長年願ってきた事がようやっと実現出来た喜びにどうか浸らせて下さい。
「...えーと。取り合えず落ち着いたら、黒板の回答書いていけよな早瀬ー」
『「先生そこは本当に空気読んで」』
それも槙原先生の場違いな発言によって、見事にぶち壊されました。
しかも心読み君と一句も違わずハモってしまい、思わず苦笑い。
本当に...私は何処までいっても締まらない残念系なようですね。
でも、それも悪くないかもしれないです。
やっと私は、ここにいる人達と肩を並べて前だけを見据えていけそうなんですから。
Zの侵入者から大きく発展した騒動から、暫く経って日常が戻ってきた頃。
持ち上げ君と腹を割った...とまではいかないけれど。とにかく、話をしました。あの時の返事...もしくは、答えとも言うかもしれません。
知らなかったです。自分の本当の気持ちを誤魔化さずに伝えると言うのは、こんなにもどかしくて大変なものだったなんて。
でもそれをしてまで気持ちを伝えてくれた持ち上げ君には、私も誠意を持って答えなくちゃいけないと思ったから。...もう同じ間違いを繰り返すつもりも、なかったですしね。
「それが...今のお前の気持ちなんだな。早瀬」
『は、い...。その...持ち上げ君。本当に...』
「それ以上は言うなよ。どうせ同じ事言うつもりなんだろ」
『で、でも...』
「俺さ。最初はお前の事なんて眼中に無かったんだ。でも、ある日見た目がガラッと変わってびっくりしてから目で追うようになってた。そこから段々、案外面白い奴だと思って、それから...」
『...持ち上げ君?』
「...あぁ。結構早瀬って、根性あるんだなって」
『そんな事無いです...。私、今日だってここに来るの、ずっと怖くて...っ』
「でも、来てくれた。ありがとな。早瀬。俺はそれで十分だよ。...今はな」
『今は?それってどういう...ふわっ!?』
「さぁな!俺とお前、能力別クラスも一緒なんだ。これからも今まで通りで頼むぜ。それじゃぁな!」
私の頭って、調度いい所にあるように見えるんでしょうか。色んな人にやけに撫で回されるような気がします。
持ち上げ君もその一人で、彼らしくちょっと乱暴にかき回して颯爽と去っていってしまいました。
結局持ち上げ君の望む返答は出来なくて、もっと心が痛むものだと思っていたけれど...意外にも清々しい気持ちです。
...ずっと。
今まで自分の人生はどん底でツイてないものだと、諦めてきた部分がありました。でも...
『"笑ってるのがいい。何もかも笑い飛ばすくらいに明るくしてれば、自然に良いことがこっちに寄ってくるって!"...うん。そうだね。ゆき兄...』
落ち込んでいた私に、ゆき兄が掛けてくれた言葉はちょっと...いえ、大分眩しいです。到底実行できそうにありません。
でも、やっと少しだけ前向きになれそうなんです。
過去が消えた訳じゃない。それが心の中で酷く渦巻く日だって、これからきっとあると思います。
そんな中で全ては難しくとも、私を理解しようと、重荷を分け合おうと手を差し伸べてくれる人がいる。
やっとその事に気が付けたから。
ふと空を仰げば、清々しくなる程の晴天。私は日の光を一身に浴びるように大きな伸びを一つして、そして...
*
『寝坊したとか...っ』
何この出鼻くじかれ展開。これっぽっちも望んでないんですけど...っ。
私こと早瀬由香は今現在、初等部B組前の廊下で立ちすくんでるなうです。
あのですね?ちょっと言い訳をさせて下さい。日常が戻ってきて、色々とケジメをつけるに至るまで、相当長い道のりだったんですよ。分かりますよね?えぇ、分かりますとも。
やっと一息つけたと思って安心したら、急に疲れがどっときて寝坊の一つや二つとかするに決まってると思いませんかっ?えぇ、えぇ。思いますとも!
だから何処までも締まりがないのは私のせいじゃない。周りの環境が悪かったんです。
そう。俺は悪くねぇ!久しぶりに大事なことは二度(以下略)
教室の扉の向こう側に耳を傾けてみると、とっくにHRは終わっています。1時限目の授業が既に始まっていて、先生の声だけが静かに教室に響いていたりするのですが...。(確か1時限目は社会科だったから、槙原先生の声ですよね、これは)
この空気の中、教室へ足を踏み入れろ...だと...。そんなの...っ。
『無理に決まってる。注目されて目立つ上に笑いの的になるのが目に見えるじゃないですか...っ。目立つのやだ目立つのやだ...!
は...っ!そうだ。1時限目が終わった休み時間にナチュラルに席について私最初からいましたけど空気をかもし出せば...うわぁ!?』
「なに一人コントやってるんだ、早瀬。そんな元気そうな様子じゃぁ、体調不良って訳じゃ無さそうだな?」
『まっ、ままっき、槙原先生...っ!なな、何で...っ!?』
「あのな...教壇に立ってるから丸見えだっての。お前の挙動不審の姿」
思わずマジかと呟いてしまったら、おぉ、マジだと先生からノリの良い返答をいただきました。
というか、体調不良という選択肢は思い付きませんでした。むしろそうすれば良かった...っ!
後悔しても、全て後の祭りです。
今だに廊下に立ち尽くしてる私を見かねたのか、槙原先生は私の背中を押して教室へと強制入場させてきました。
『うぇぁっ!?』
「前回出した宿題の答え合わせ始める所だったんだ。調度いいから席に着く前に、全問答えを黒板に書いていけ。早瀬」
『全問!?』
「あぁ。不正解があったら、さっきの一人コントを今度は教壇で披露だからなー」
『何ですかその精神的ダメージが大きな罰ゲーム!?』
最早絶叫と化している突っ込みは教室全体に響き渡って、クラスメイトの笑いを誘っています。
うぅ...自業自得とはいえ、既にこの状態が罰ゲームなんですが...っ。
あぁほら。私の席のお隣さんの、人の不幸は蜜の味と喜ぶ人だって...。
『ふぉわっ!?なな、何っですか...っ!この現状がお望み展開過ぎて既に笑い尽くしちゃったんですか心読み君...っ。笑顔固まっちゃって何か怖、』
「早瀬さん、髪飾りは?」
『...えっ?』
「いつも付けてる髪飾り。もしかして...付けてないの?」
『...!』
心読み君が何処か神妙な面持ちをしていた理由に、思わず目を見開いて茫然としてしまいました。
大目玉の遅刻確定で慌てたせいだったんでしょうか。
私...。心読み防止シールと一緒に手離すことは無かったあの髪飾りを...。アリス制御装置を、信じられないのですが忘れてきてしまったみたいです。
あれが無ければ、恐ろしくて仕方なかった筈なのに。
その事実が信じられなくて、今度は私がその場で固まってしまいました。
そんな私を見た心読み君はおもむろに立ち上がって、私の手のひらに指を絡めて静かに言いました。
「...今、視える?」
『...っ!心、読み君...っ。わ、私...っ』
「うん」
『今、出来てる...っ。視えないようにするのがっ。自分で制御、出来て...っ』
「...全く。早瀬さんって本当に泣き虫。っていうか、更に注目浴びるの分かってる?」
『そ...っそんな、のっ。今、更...っ。うぁ...っ。うわぁぁぁん!』
今までアリスの制御は何度も試みてきた事でした。でもその度に失敗して、酷く打ちのめされてきたからこそ、制御装置を使用していた訳で。
それがどうして今になって出来るようになったんでしょうか?そんな疑問がよぎったけれど。
今この瞬間は、長年願ってきた事がようやっと実現出来た喜びにどうか浸らせて下さい。
「...えーと。取り合えず落ち着いたら、黒板の回答書いていけよな早瀬ー」
『「先生そこは本当に空気読んで」』
それも槙原先生の場違いな発言によって、見事にぶち壊されました。
しかも心読み君と一句も違わずハモってしまい、思わず苦笑い。
本当に...私は何処までいっても締まらない残念系なようですね。
でも、それも悪くないかもしれないです。
やっと私は、ここにいる人達と肩を並べて前だけを見据えていけそうなんですから。