act.16
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#2
「...おい?お前、こんな所で何してんだ?しかもこんな時間に」
『......』
「かーちゃんはどうしたんだよ。一緒じゃねーのか?」
「ヤンキーがガキの心配とかウケるんですけどー」
「しかもかーちゃんって!かーちゃん!」
「お前らうるせーぞ!このガキ泣いたらどうしてくれるんだ...」
『...うぇっ』
「...げ」
「あーぁ~」
「ゆーっきーが泣ーかしたー。せーんこうに言ってやろ~」
「俺のせいなのかよ!っつーかヤンキーが先公に言い付けるとか、お前絶対ふざけてんな!?楽しんでるだろ!?
そしてとりあえずガキんちょ泣くな落ち着け!」
「「お前がな」」
...私、早瀬由香の今までの人生といえば。それはそれは平凡なものでした。
ただしこの学園においては、です。...いえ。ここに限らず、何処かしらにはあるのかもしれません。
親から愛されない子供なんて。珍しい事ではないのでしょう。
その理由は人によって様々だと思いますが。私の場合は...まぁ簡単に答えが分かりそうですけど。生まれ持った、このアリスが原因でした。
それが分かった日からの家庭崩壊っぷりは...今となっては逆に感心します。
確かに私のアリスはヘビーなものでしたけど。きっかけ一つあれば、あっけなく簡単に壊れてしまうものなんですね。絆だとか、親子の縁と言うものは...。
その壮絶な日々を過ごした当時の私はですね。当たり前なんですけど、今よりも幼かった訳ですよ。
でも親に何を言われても、もう何も分からない程の赤子ではありませんでした。
だからと言って、我慢だとか相手の立場に立って物を考えるだとか、そういう事が出来る程、成長していた訳でも無かったのです。
当時赤子と子供の境目にいた私は、家出をしました。
それ程に小さいガキが家出だなんて、たかが知れています。
でもその時の私も、それなりに色々と思う所があったんです。ガキなりに真剣でした。
つたない足取りで、一体何処まで歩いたのかは覚えていません。
やがて足が痛んで、一歩も動けなくなってしまったんです。
今も、この先もどうしたらいいのか見当がつかない。途方に暮れるってこういう感じなんじゃないですかね。
そんな時に、偶然通りかかったヤンキーが手を差し伸べてくれたんです。
それが、私とゆき兄...行平泉さんとの出会い。
『ふぇ...っ!?』
ピチョンと。額に冷たい何かが落ちてきたせいで、急に意識が覚醒しました。
ガバッと起き上がって、恐る恐る湿った部分に触れてみると...無味無臭の透明な液体。どうやらただの水だったようで、一安心したのも束の間。
落ちてきたであろう天井を何気なく見て、思考が一瞬止まってしまいました。
天井が...いえ。天井から周りの壁に掛けて、まるで岩肌のようなものだったんです。
窓は一つも無くて、何処と無く薄暗いです。
そして極めつけが、目の前にある鉄格子の柵。...これってつまり牢屋ですか?
『いやいや...確かに規則違反まがいのエスケープはやらかしたけれども。普通だったらここは、流れ的に病院のベッドで目覚める所なんじゃ...あ』
ただ思考にふけるよりも、口に出して言うことって割りと大事ですね。
おかげで思い出しました。私、確か意識が飛ぶ直前に何処かへ連れていかれたような気がします。多分、学園の侵入者とやらに。
そう考えると。ここはおそらく学園の外で、そして侵入者のアジトなんでしょうか...多分。
何ぶん途中で意識が飛んだばっかりに
、不確定要素しかありやしません。
『もう戻れないんでしょうか...学園には』
そう呟くと同時に思い浮かんだのは、いつも笑ってる隣の席に座る彼。
逃げ出す私を見送ったその笑顔は、何処か揺らいでいた気がしました。でも今となっては、理由が分かる日なんて来ないでしょう。
この状況が私の予想通りだったら、再会を願う所か自分の身がどうなるのかすら分からないんですから。
このアリスを生まれ持ってから、嫌と言う程思い知らされてきた筈なのに。どうして忘れていたんだろう。
私達アリスに...ううん。生きている者全てには。また明日が来る保証なんて、何処にもないっていうのに。
なのに私は逃げて...。
『...ん?何、ですか、今度は』
現実は、後悔する暇すら与えてくれないようです。
どうやらまた天井から何か落ちてきたようです。ただ、今度は水でなく砂のようなのですが。
最初はパラパラと数粒舞ってくる程度だったので、大して気にしませんでした。が。
『...段々無視できる量じゃなくなって来てますよこれ!えっ、ちょっ、待って、これもし落盤とかだったら...
ぎにゃぁ!?』
最悪のケースが頭をよぎった途端、自分の体に何か大きな物が落下してきました。
うわ、これ死んだ!そう思って咄嗟に目を閉じたのですが...。
どうやら落ちてきたものは、意外と柔らかい物だったようで。少し...というと語弊がありますが。息苦しくなっただけで、幸い怪我はありませんでした。
というか、この落下物何かいやに生暖かい気がするんですけど...。
『...って。さっ、佐倉さん...!?』
前途も去ってないのに、また一難。本当、いちいち何かとあるものですね...そう。生きている限りは。
「本っっ当に!無事で良かったよ~由香ちゃんーっ!」
『わ、分かりました...。(状況はちっとも分かりませんけど)分かりましたから、そろそろ退いて下さい...』
「あっ、ごめんな、つい~」
つい何だよ。
思わずそう吐き捨てたくなったのですが。この予想外な登場をして下さったトラブルメーカー。意外にも多くの情報を持っていました。
まずは、ここが反体制組織Zのアジトだということ。
そして捕まってしまった私の救出と、負傷してしまった今井さんの為に特効薬を求めて、日向君と乃木君、安藤先輩達とここに乗り込んで来たこと。乗り込むに至る経緯等々。
そして...
『真っ先に罠に引っ掛かって今に至る...と』
「まっ、まぁとにかくや!ウチらに今出来る事は、こんな所から出て皆と合流するんや!
だからそこのガイコツ、ここの鍵よこせやー!このーっ!!」
『......』
佐倉さんと一緒に落ちてきたのでしょうか。さっきまでは居なかった筈の、変な骸骨が佐倉さんの標的にされました。
表情全く読み取れませんが、突然襲われて戸惑う被害者のようになってます。...立場が逆転して見えるのは、何故。
唐突すぎる行動についていけず、思わずため息です。
そんな中、ふと目についたのは監視カメラ。たとえここから脱出出来たとしても、これではその後の展開、たかが知れています。
現状に甘んじていれば、それこそ流されていくだけなのでしょうけど...。ここは、敵のアジト。
うかつに行動するのもどうなんだろう...あぁでもこのままじゃぁ。
そう答えの出ない思考を繰り返していると。
先程まで取っ組み合いをしていた二人組の手がピタリと止まっていました。
何だろうと思い、顔を上げた先にいたのは...。
...いつだったでしょうか。安藤先輩から、私は人の顔色を伺う節があると指摘されたのは。
実際そうなのでしょう。そうしなければ、幼い頃の私は生きていけなかったから。人よりそういう能力に長けていると、自負しています。
今、私達の目の前に立つこの人は。どうしてあんな...全てを押し殺すような表情をしているんだろう。
...柚香さん。
「...おい?お前、こんな所で何してんだ?しかもこんな時間に」
『......』
「かーちゃんはどうしたんだよ。一緒じゃねーのか?」
「ヤンキーがガキの心配とかウケるんですけどー」
「しかもかーちゃんって!かーちゃん!」
「お前らうるせーぞ!このガキ泣いたらどうしてくれるんだ...」
『...うぇっ』
「...げ」
「あーぁ~」
「ゆーっきーが泣ーかしたー。せーんこうに言ってやろ~」
「俺のせいなのかよ!っつーかヤンキーが先公に言い付けるとか、お前絶対ふざけてんな!?楽しんでるだろ!?
そしてとりあえずガキんちょ泣くな落ち着け!」
「「お前がな」」
...私、早瀬由香の今までの人生といえば。それはそれは平凡なものでした。
ただしこの学園においては、です。...いえ。ここに限らず、何処かしらにはあるのかもしれません。
親から愛されない子供なんて。珍しい事ではないのでしょう。
その理由は人によって様々だと思いますが。私の場合は...まぁ簡単に答えが分かりそうですけど。生まれ持った、このアリスが原因でした。
それが分かった日からの家庭崩壊っぷりは...今となっては逆に感心します。
確かに私のアリスはヘビーなものでしたけど。きっかけ一つあれば、あっけなく簡単に壊れてしまうものなんですね。絆だとか、親子の縁と言うものは...。
その壮絶な日々を過ごした当時の私はですね。当たり前なんですけど、今よりも幼かった訳ですよ。
でも親に何を言われても、もう何も分からない程の赤子ではありませんでした。
だからと言って、我慢だとか相手の立場に立って物を考えるだとか、そういう事が出来る程、成長していた訳でも無かったのです。
当時赤子と子供の境目にいた私は、家出をしました。
それ程に小さいガキが家出だなんて、たかが知れています。
でもその時の私も、それなりに色々と思う所があったんです。ガキなりに真剣でした。
つたない足取りで、一体何処まで歩いたのかは覚えていません。
やがて足が痛んで、一歩も動けなくなってしまったんです。
今も、この先もどうしたらいいのか見当がつかない。途方に暮れるってこういう感じなんじゃないですかね。
そんな時に、偶然通りかかったヤンキーが手を差し伸べてくれたんです。
それが、私とゆき兄...行平泉さんとの出会い。
*
『ふぇ...っ!?』
ピチョンと。額に冷たい何かが落ちてきたせいで、急に意識が覚醒しました。
ガバッと起き上がって、恐る恐る湿った部分に触れてみると...無味無臭の透明な液体。どうやらただの水だったようで、一安心したのも束の間。
落ちてきたであろう天井を何気なく見て、思考が一瞬止まってしまいました。
天井が...いえ。天井から周りの壁に掛けて、まるで岩肌のようなものだったんです。
窓は一つも無くて、何処と無く薄暗いです。
そして極めつけが、目の前にある鉄格子の柵。...これってつまり牢屋ですか?
『いやいや...確かに規則違反まがいのエスケープはやらかしたけれども。普通だったらここは、流れ的に病院のベッドで目覚める所なんじゃ...あ』
ただ思考にふけるよりも、口に出して言うことって割りと大事ですね。
おかげで思い出しました。私、確か意識が飛ぶ直前に何処かへ連れていかれたような気がします。多分、学園の侵入者とやらに。
そう考えると。ここはおそらく学園の外で、そして侵入者のアジトなんでしょうか...多分。
何ぶん途中で意識が飛んだばっかりに
、不確定要素しかありやしません。
『もう戻れないんでしょうか...学園には』
そう呟くと同時に思い浮かんだのは、いつも笑ってる隣の席に座る彼。
逃げ出す私を見送ったその笑顔は、何処か揺らいでいた気がしました。でも今となっては、理由が分かる日なんて来ないでしょう。
この状況が私の予想通りだったら、再会を願う所か自分の身がどうなるのかすら分からないんですから。
このアリスを生まれ持ってから、嫌と言う程思い知らされてきた筈なのに。どうして忘れていたんだろう。
私達アリスに...ううん。生きている者全てには。また明日が来る保証なんて、何処にもないっていうのに。
なのに私は逃げて...。
『...ん?何、ですか、今度は』
現実は、後悔する暇すら与えてくれないようです。
どうやらまた天井から何か落ちてきたようです。ただ、今度は水でなく砂のようなのですが。
最初はパラパラと数粒舞ってくる程度だったので、大して気にしませんでした。が。
『...段々無視できる量じゃなくなって来てますよこれ!えっ、ちょっ、待って、これもし落盤とかだったら...
ぎにゃぁ!?』
最悪のケースが頭をよぎった途端、自分の体に何か大きな物が落下してきました。
うわ、これ死んだ!そう思って咄嗟に目を閉じたのですが...。
どうやら落ちてきたものは、意外と柔らかい物だったようで。少し...というと語弊がありますが。息苦しくなっただけで、幸い怪我はありませんでした。
というか、この落下物何かいやに生暖かい気がするんですけど...。
『...って。さっ、佐倉さん...!?』
前途も去ってないのに、また一難。本当、いちいち何かとあるものですね...そう。生きている限りは。
*
「本っっ当に!無事で良かったよ~由香ちゃんーっ!」
『わ、分かりました...。(状況はちっとも分かりませんけど)分かりましたから、そろそろ退いて下さい...』
「あっ、ごめんな、つい~」
つい何だよ。
思わずそう吐き捨てたくなったのですが。この予想外な登場をして下さったトラブルメーカー。意外にも多くの情報を持っていました。
まずは、ここが反体制組織Zのアジトだということ。
そして捕まってしまった私の救出と、負傷してしまった今井さんの為に特効薬を求めて、日向君と乃木君、安藤先輩達とここに乗り込んで来たこと。乗り込むに至る経緯等々。
そして...
『真っ先に罠に引っ掛かって今に至る...と』
「まっ、まぁとにかくや!ウチらに今出来る事は、こんな所から出て皆と合流するんや!
だからそこのガイコツ、ここの鍵よこせやー!このーっ!!」
『......』
佐倉さんと一緒に落ちてきたのでしょうか。さっきまでは居なかった筈の、変な骸骨が佐倉さんの標的にされました。
表情全く読み取れませんが、突然襲われて戸惑う被害者のようになってます。...立場が逆転して見えるのは、何故。
唐突すぎる行動についていけず、思わずため息です。
そんな中、ふと目についたのは監視カメラ。たとえここから脱出出来たとしても、これではその後の展開、たかが知れています。
現状に甘んじていれば、それこそ流されていくだけなのでしょうけど...。ここは、敵のアジト。
うかつに行動するのもどうなんだろう...あぁでもこのままじゃぁ。
そう答えの出ない思考を繰り返していると。
先程まで取っ組み合いをしていた二人組の手がピタリと止まっていました。
何だろうと思い、顔を上げた先にいたのは...。
...いつだったでしょうか。安藤先輩から、私は人の顔色を伺う節があると指摘されたのは。
実際そうなのでしょう。そうしなければ、幼い頃の私は生きていけなかったから。人よりそういう能力に長けていると、自負しています。
今、私達の目の前に立つこの人は。どうしてあんな...全てを押し殺すような表情をしているんだろう。
...柚香さん。