act.16
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#1
結局再試験は、かろうじてパス出来たんですけれども。
体調の方はそう簡単に行かなかったんですよ。これが。
何を隠そう、わたくしめの今年度入院回数が過去最高記録を更新してしまい、主治医の信頼度がガタ落ちしてしまったのです。
そのせいで退院後も通院を余儀なくされました。
こちらとしては、きついトラブルに巻き込まれたせいもあると言いたいのですけど...言い訳無用のようです。
小学生らしい健康体に戻りつつあるか、厳しく検査されました。
主治医の前では口が裂けても言えません。ぶっちゃけなくても非常に面倒臭い。
初等部から病院往復するだけで、どれだけの時間を浪費すると思ってんですか、コノヤロー。
うん、改めて本当に言えないですね。下手したら再び入院コースだわ。
そんな通院を重ねて、今日はやっとその日々から卒業出来る事になりました。
おめでとう私。ありがとう私。
足取りが自然と軽やかになる中、病院の入り口をくぐると予想外な出迎えがありました。
『持ち上げ君?どうして...』
「...その様子だと、もう通院しなくて良くなったんだな」
『へっ。な、何で...っ』
「浮き足立ってたから」
『!?み、みみ、見て...っ』
まさか誰かに目撃されるとは思わなかったです。そこら辺ですれ違うだけの人ならまだしも、クラスメイトに見られてしまうとか。
この展開、恥ずかしい以外の何物でもない...。あっ、持ち上げ君さりげなく口元に手を添えてますけど、笑ってるのバレバレですよ!もう!
『~っ。と、ところで持ち上げ君、何でこんな所にいるんですかっ?』
「俺は...。俺も病院に用があって」
『えっ、持ち上げ君も何処か体調悪いんですか?』
「いや、そうじゃなくて。病院にというか...お前に用があって」
『私、ですか?』
それなら寮に帰ってからでも良かったのに、わざわざ病院に来るだなんて。しかも、診察が終わるまで待っていたのでしょうか?
何だかまだるっこしいですね。
日向君の第一子分なんですから、もっと行動はざっくりさっぱりとしてるのかと...。
「...好きなんだ」
『へっ?』
「俺、早瀬の事が好きだ」
『...え...』
「それだけ言いに来た。返事は...別に、急がねーから」
言われた事は、たった一言なのに。突然の展開に全く理解が出来なくて頭は真っ白です。
好きっ、て...。
返事が、どうとかって言ってたから...。友達同士の好きとかでは、ないですよね...?流石に。
間違いとか、思い違いでなければ。これって。れ、恋愛、感情ということで、そういう訳でいいんですか...?
頭の中で色んな思考が慌ただしく飛び交っているのに、体は麻痺してしまったのかその場から微動だに出来ません。
徐々に小さくなっていく持ち上げ君の背中を、ただ呆然と見ているの事しか出来ませんでした...。
「ねぇ、聞いてるの?」
『はっ、はははいっ?えっと、うん。そ、そうだね。秋は栗ご飯もいいけど焼き芋も捨てがた...』
「もうその話してないんだけど。委員長が今日辺りに一週間の里帰りから帰ってくるっていう話。...聞いてなかったんだね」
『ご、ごめん...心読み君...』
通院が終わったあの日、持ち上げ君に告げられた言葉は、まさしく文字通り衝撃の一言に尽きます。
あれから動揺してしまった気持ちがいつも何処かで付きまとってしまって。
今は何をやっても身が入りそうに無いです。
折角今日は、距離を置かれていると思い込んでいた心読み君が話し掛けてくれているというのに。
表情を伺うと、いつも通りの笑顔。でも怒っているような冷たい口調と雰囲気。
この前の園生先輩の話で、勇気が持てたような気がしたのですが。
こうして目の前にすると、怖じける自分がいて...。
「...何かあったの?具体的に言うと持ち上げ君と」
『えっ!?あっ、』
バサバサバサッ!
...次の授業で使う教科書やら筆記用具やらを机の上に並べておいたら、見事に全て落下してくれました。
まるで私の動揺を表すかのように。
「ふーん...。何かあったっていうか、もう言われちゃったみたいだねー」
『へっ!?ななな、いっ、言われたって、何を...っ』
「え、みなまで聞くの?それ。保健室まで早瀬さんの事お姫様抱っこで連れてったりさー。後夜祭ではダンスに誘ったり。あからさまじゃん」
『そ、そんなのっ。そんなの、私には分からな...!』
「...心読まれたかと思ってビックリした?」
『...っ!?』
呟くような心読み君の声が、さっきよりもワントーン落ちたせいなのか。
その声は余計に冷たく響いて、血の気が引いていくのが分かった。
ついに...ついに、核心をつかれてしまうのだろうか。私が、いつまでも勇気を持てないでいるから。
「出来る訳ないよねー。そんなの早瀬さんが一番分かってるんじゃないの?」
『...っ』
「セントラルって本当に色んなアイテム売ってるからなー。早瀬さんあれ使ってるのかな?心読み防止シールって、その能力者以外が使用すると心を覗かれないようになるらしいし...ね?」
『それ、は...っ』
全部、心読み君の言う通りだった。
自分の本当のアリスを知られてしまうのが、怖かったから。セントラルで売っていた道具を使って、心を読まれないようにした。
ずっと嘘をついて。偽って。
私、それを今更心読み君に言うつもりでいたんだろうか。
怖い。怖くて、喉の辺りが引きつって、言葉が出てこない。ただ冷たく降ってくる彼の話を、黙って聞いていることしか出来ない。
「早瀬さんってさー...本当、分かりやすいよね。僕のアリス使うまでもなく」
『......』
「なのに何にも言ってくれなかったよね。しんどいんだろうなって時も、倒れるまで無茶するし。...誰かさんに告白されても、相談一つもないしさ。
本当の事は全部ごまかされて、いつもうわべだけだった。そんなのってさ...」
嫌だ。これ以上は聞きたくない...!
思わずギュッと目を閉じてしまったけれど、そんな行為は無意味で。
本当に酷いのは自分のくせに。心読み君がトドメと言わんばかりに言い放った言葉は、痛烈な程に私の心に突き刺さった。
「そんなの、本当の友達って言える?」
『...!!』
気が付けば、どうやら私は教室を飛び出していたらしい。
途中飛田君の声が呼び止めていたのを聞いた気がするけど...よく分からない。
いつだって私は、自分のアリスが...そしてそれを周りに知られるのが怖くて。アリスを偽って過ごしてきた。
心読み君が黙ってくれている度、何も聞かないでいてくれている度に、罪悪感や後ろめたさに苛まれてたんだ。
友達だって、そう言ってくれた相手をずっと騙していたようなものだから。
でもそれと同時にホッとしている自分もいた。これ以上傷つくのは、もう沢山だったから。
今もこうして逃げ出してしまって...。私って、本当に
『最低...っ』
全部自業自得なのに、涙が出てくるなんて何処まで自分勝手で最低なんだろうか。自分は。
泣きそうな気持ちを振り払いたくて、とにかく私は何処かへと走り続けた。
結局再試験は、かろうじてパス出来たんですけれども。
体調の方はそう簡単に行かなかったんですよ。これが。
何を隠そう、わたくしめの今年度入院回数が過去最高記録を更新してしまい、主治医の信頼度がガタ落ちしてしまったのです。
そのせいで退院後も通院を余儀なくされました。
こちらとしては、きついトラブルに巻き込まれたせいもあると言いたいのですけど...言い訳無用のようです。
小学生らしい健康体に戻りつつあるか、厳しく検査されました。
主治医の前では口が裂けても言えません。ぶっちゃけなくても非常に面倒臭い。
初等部から病院往復するだけで、どれだけの時間を浪費すると思ってんですか、コノヤロー。
うん、改めて本当に言えないですね。下手したら再び入院コースだわ。
そんな通院を重ねて、今日はやっとその日々から卒業出来る事になりました。
おめでとう私。ありがとう私。
足取りが自然と軽やかになる中、病院の入り口をくぐると予想外な出迎えがありました。
『持ち上げ君?どうして...』
「...その様子だと、もう通院しなくて良くなったんだな」
『へっ。な、何で...っ』
「浮き足立ってたから」
『!?み、みみ、見て...っ』
まさか誰かに目撃されるとは思わなかったです。そこら辺ですれ違うだけの人ならまだしも、クラスメイトに見られてしまうとか。
この展開、恥ずかしい以外の何物でもない...。あっ、持ち上げ君さりげなく口元に手を添えてますけど、笑ってるのバレバレですよ!もう!
『~っ。と、ところで持ち上げ君、何でこんな所にいるんですかっ?』
「俺は...。俺も病院に用があって」
『えっ、持ち上げ君も何処か体調悪いんですか?』
「いや、そうじゃなくて。病院にというか...お前に用があって」
『私、ですか?』
それなら寮に帰ってからでも良かったのに、わざわざ病院に来るだなんて。しかも、診察が終わるまで待っていたのでしょうか?
何だかまだるっこしいですね。
日向君の第一子分なんですから、もっと行動はざっくりさっぱりとしてるのかと...。
「...好きなんだ」
『へっ?』
「俺、早瀬の事が好きだ」
『...え...』
「それだけ言いに来た。返事は...別に、急がねーから」
言われた事は、たった一言なのに。突然の展開に全く理解が出来なくて頭は真っ白です。
好きっ、て...。
返事が、どうとかって言ってたから...。友達同士の好きとかでは、ないですよね...?流石に。
間違いとか、思い違いでなければ。これって。れ、恋愛、感情ということで、そういう訳でいいんですか...?
頭の中で色んな思考が慌ただしく飛び交っているのに、体は麻痺してしまったのかその場から微動だに出来ません。
徐々に小さくなっていく持ち上げ君の背中を、ただ呆然と見ているの事しか出来ませんでした...。
*
「ねぇ、聞いてるの?」
『はっ、はははいっ?えっと、うん。そ、そうだね。秋は栗ご飯もいいけど焼き芋も捨てがた...』
「もうその話してないんだけど。委員長が今日辺りに一週間の里帰りから帰ってくるっていう話。...聞いてなかったんだね」
『ご、ごめん...心読み君...』
通院が終わったあの日、持ち上げ君に告げられた言葉は、まさしく文字通り衝撃の一言に尽きます。
あれから動揺してしまった気持ちがいつも何処かで付きまとってしまって。
今は何をやっても身が入りそうに無いです。
折角今日は、距離を置かれていると思い込んでいた心読み君が話し掛けてくれているというのに。
表情を伺うと、いつも通りの笑顔。でも怒っているような冷たい口調と雰囲気。
この前の園生先輩の話で、勇気が持てたような気がしたのですが。
こうして目の前にすると、怖じける自分がいて...。
「...何かあったの?具体的に言うと持ち上げ君と」
『えっ!?あっ、』
バサバサバサッ!
...次の授業で使う教科書やら筆記用具やらを机の上に並べておいたら、見事に全て落下してくれました。
まるで私の動揺を表すかのように。
「ふーん...。何かあったっていうか、もう言われちゃったみたいだねー」
『へっ!?ななな、いっ、言われたって、何を...っ』
「え、みなまで聞くの?それ。保健室まで早瀬さんの事お姫様抱っこで連れてったりさー。後夜祭ではダンスに誘ったり。あからさまじゃん」
『そ、そんなのっ。そんなの、私には分からな...!』
「...心読まれたかと思ってビックリした?」
『...っ!?』
呟くような心読み君の声が、さっきよりもワントーン落ちたせいなのか。
その声は余計に冷たく響いて、血の気が引いていくのが分かった。
ついに...ついに、核心をつかれてしまうのだろうか。私が、いつまでも勇気を持てないでいるから。
「出来る訳ないよねー。そんなの早瀬さんが一番分かってるんじゃないの?」
『...っ』
「セントラルって本当に色んなアイテム売ってるからなー。早瀬さんあれ使ってるのかな?心読み防止シールって、その能力者以外が使用すると心を覗かれないようになるらしいし...ね?」
『それ、は...っ』
全部、心読み君の言う通りだった。
自分の本当のアリスを知られてしまうのが、怖かったから。セントラルで売っていた道具を使って、心を読まれないようにした。
ずっと嘘をついて。偽って。
私、それを今更心読み君に言うつもりでいたんだろうか。
怖い。怖くて、喉の辺りが引きつって、言葉が出てこない。ただ冷たく降ってくる彼の話を、黙って聞いていることしか出来ない。
「早瀬さんってさー...本当、分かりやすいよね。僕のアリス使うまでもなく」
『......』
「なのに何にも言ってくれなかったよね。しんどいんだろうなって時も、倒れるまで無茶するし。...誰かさんに告白されても、相談一つもないしさ。
本当の事は全部ごまかされて、いつもうわべだけだった。そんなのってさ...」
嫌だ。これ以上は聞きたくない...!
思わずギュッと目を閉じてしまったけれど、そんな行為は無意味で。
本当に酷いのは自分のくせに。心読み君がトドメと言わんばかりに言い放った言葉は、痛烈な程に私の心に突き刺さった。
「そんなの、本当の友達って言える?」
『...!!』
気が付けば、どうやら私は教室を飛び出していたらしい。
途中飛田君の声が呼び止めていたのを聞いた気がするけど...よく分からない。
いつだって私は、自分のアリスが...そしてそれを周りに知られるのが怖くて。アリスを偽って過ごしてきた。
心読み君が黙ってくれている度、何も聞かないでいてくれている度に、罪悪感や後ろめたさに苛まれてたんだ。
友達だって、そう言ってくれた相手をずっと騙していたようなものだから。
でもそれと同時にホッとしている自分もいた。これ以上傷つくのは、もう沢山だったから。
今もこうして逃げ出してしまって...。私って、本当に
『最低...っ』
全部自業自得なのに、涙が出てくるなんて何処まで自分勝手で最低なんだろうか。自分は。
泣きそうな気持ちを振り払いたくて、とにかく私は何処かへと走り続けた。