act.13
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『だからってどうして特力の列なんですか』
今年は(主に災難が)色々ありましたが、何とかこぎつける事が出来ました。閉会式に。
ワンシーズンが過ぎ去ったのではと感じる程に、長かったです。
そんな中、私こと早瀬由香の現在位置は特力系の生徒が並ぶ場所。
もう一度言います。何故だ。安藤先輩に連れられて来たからとはいえ。
「だったら、お前今からこの空気の中潜在系の所まで行くか?」
『すみませんここにいさせて下さい』
「...変な所潔いよな、由香って」
呆れ顔な安藤先輩は、華麗にスルーの方向でお願いします。
波乱万丈と言っても過言では無かったこのアリス祭。
忘れ去られてしまいそうだから再三言うのですが、私は目立つのが大嫌いです。
どれだけこそこそ移動しても、これでは注目の的でしょう。恐ろしい。
先程から佐倉さんが口をあけたままなのを、ちょっとマヌケだなぁと内心ほくそ笑んでいた時です。
今年のクイーン賞の発表に差し掛かった途端、急に大きなスクリーンが出てきました。
「本年度のクイーン賞の発表ですが...まずは、こちらをご覧ください」
"はぁ。どこかに転がってないのかしら?いい殿方は..."
『ぶほぅっ!?』
「ぎゃっ、ちょ、ちょぉ由香ちゃんどーしたん!?」
突然流れ出した映像は、間ごうことなく体質系のミュージカルでした。
画面の女性は、お腹が空いただのなんだのという台詞を言っていますけど。非常に聞き覚えが...いえ。正確には、言った記憶がむしろあるんですけど...っ。
佐倉さんが隣で私の安否を気にしていますが、聞く耳持てません。
まさか、まさか今年のクイーン賞って...っ!
"そのお菓子、私にも下さらないかしら?...ね?お願い"
「その身を余すことなく男子を誘惑する演技には、その場にいた...主に男子生徒が。虜になったそうですね」
『(それってまさか、鳴海先生の奇妙なポーズ入りカンペの事か!そういう意味があったんだ...って、遅っ!私気付くの遅っ!)』
「な、なーなー翼先輩ー...。由香ちゃん大丈夫やろか?」
「蜜柑。とりあえず目を合わせちゃイケマセン」
外野うっさい!
一体何なんですか、このとんでも過ぎる展開は!
これで正体が割れたら一体どうしてくれるんですか。普通にヤバいでしょう。ガリバー飴は使用禁止なんですから。
え、まさか既にバレてるなんてオチ止めてくださいよ!?
「その他にも多くの反響があった為、今年のクイーン賞として上がった訳ですが...。残念ながら、このミュージカルの総監督の意向によりこの女生徒が誰であるかは公表しない方向だそうです」
でしょうとも。
名前なんて大っぴらに発表したら、ガリバー飴のことも芋づる式にバレますもんね!
よく考えたら、これは鳴海先生も教師としての立場が脅かされる由々しき事態です。
私も十分以上に危ういですが。本気で。
本気と書いてマジと以下略。
「今回のミュージカルは、本番前に突発的なトラブルがあり配役に大きな変更があったそうです。
即興にも関わらず、彼女は多くの見せ場を作ってくれました。狩人と眠り姫の最後のシーンが感動的だった、という声も多数届いています。
名前が分からない為、残念ですが...。功労賞ともいえる彼女に、暖かい拍手を送って下さい」
「ウチ、あの女の人どっかで見たことある気がするんやけどなぁー」
『ききき、気のせいじゃぁないですかっ?』
「うーん、そうやろか...」
まさか当人が真横にいるだなんて、言えない。
佐倉さんの呟きはまさしく、ひぇーです。
ふと視界の端に鳴海先生が入ったのですが。彼はいつもと何ら変わらない笑顔を張り付けていました。
...。
日向くん辺りに頼んだら、闇討ちやってくれるでしょうか。
鳴海先生嫌いで有名ですからね。お願いしたらやってくれるかもしれないな、と。ちょっと本気で考えた瞬間でした。
闇討ち計画(仮)を、一人脳内で立てていると。いつの間にやら閉会式のお話はぶいぶい進んでいたようで。
「本年度特別賞は、特別能力クラスRPGアラジンと魔法のランプです!」
『...んっ?』
「すげーっ特別賞!何ホケっとしてんだよ!蜜柑!由香!」
『ぐげっ!?せせ、せんぱい"っ、く、首...っ』
「よーし、皆で壇上まで行くぞ!」
『はぁ!?いやいやいや!普通そういうのは代表者が行けばいいものでしょう、安藤先輩!』
安藤先輩に腕を回されたんですが、身長差の関係で私の首にジャストフィットされました。苦しい。
そんなことを気にも止めないばかりか、先輩はテンション上がって興奮状態です。
これは...。これは、非常に嫌な予感しかしません。
『それに私、特力じゃありませんしっ。あんなステージに上がるとかそもそも冗談じゃありませっ!って!ひ...っ
ひぎゃあぁぁあぁっ!?
』
「さっさと行こうぜ!」
俵かつぎされました。
女子の扱いうんぬん以前に、人としてどうなんですかこれは!
壇上へ続く階段で、もういっそそのまま天国まで逝ってしまいたいです...っ。
だって全生徒の視線が集まる場所に行くとか。恐ろしすぎて、さっきから身震いが止まりません。
...安藤先輩に担がれて悲鳴を上げた時点で。相当な注目を既に浴びていたと、後に心読みくんから相当楽しげに教えられました。
くっそ、コイツ他人事だと思って...!
どいつもこいつも一体何なんですかっ。腹立たしい!
こほん。失礼しました。どうにも最近怒りで我を忘れがちですね、私。
文字通り、始まりから終わりまでこのアリス祭、心休まる時はありませんでしたが。
私、後夜祭はいつもエスケープして寮で休んでるんですよね。あの浮き足だった空気の中いなくなっても、誰も気付きやしませんので。
閉会式さえ終われば、こっちのもんです。思う存分、惰眠をむさぼろう。絶対に。そう思案していました。...えぇ。
今だに俵かつぎされながら。
...もう好きにするがいいさ。