act.13
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#4
『んはっ』
ガバッと起き上がると、パレードの音が遠くから聞こえて来ました。
技術系の音楽祭が、始まったみたいです。
...鳴海先生に無事保護、というか見つけてもらった後。
私、よっぽどやばい顔でもしてたんでしょうか。閉会式までまだ時間があるから、少し休んだ方がいいと鳴海先生に言われたんですよ。
そもそもの原因は誰だと思ってんだと正直思ったんですが。
わざわざ寮まで送ってくれたので、しばしの惰眠...いえ、休息をむさぼらせていただきました。
...。
これで今までの数々の迷惑をチャラにしようって訳じゃないですよね...?あのペテン師。
まぁとりあえず、今からのんびり向かえば閉会式がちょうど始まる頃でしょう。
さようなら。しばしの休息。惰眠をありがとう私のベッドよ。
『...やってしまった』
少しの時間眠るというのは中々疲れがとれず、むしろ逆効果な時があります。
今まさにその状態で、はっきりしない頭で歩いていましたら...。はい。
いつものクセで、初等部の教室に来てしまいました。無いわー。佐倉さんでもやりそうもない失敗ですね、これ。
私の失礼さは時にナチュラルです。
というか、誰かにこの失態見られたら恥ずかし過ぎる。教室の中は誰もいやしませんよね?
そう思って教室の扉を開けてみれば、何とまぁ見事に私の期待を裏切る結果が待っていました。
「おー、来た来た由香。やっぱお前って期待を裏切らない奴だなーっ」
『...安藤、先輩』
「お前って寝ぼけてると、とんだおマヌケちゃんだな。開会式でも全く同じ事やらかし...って、おい!?」
三歩後ろに下がってUターン。私こと早瀬は、そのまま逃走しました。
まさかここで、どんな顔して会えばいいか分からない人ナンバー2に出くわすとは思いもしませんでした...っ。
ナンバー1は誰かってそりゃアナタ...。察して下さい!
先輩の顔を見た途端、俺お前の事ずっと見てたんだ発言が...っ。さっきから何度も、頭の中でぐるぐるリピートしてます。
とにかくこのまま巻いてしまえと思った時です。
『んぉっ!?』
体が硬直してしまい、急停止してしまいました。立ち止まるつもりは、全くなかったのに。
まるで自分の体ではなくなってしまったみたいに、指をピクリとも動かせません。
どうして、と混乱する視界に入ったもの。それは傾き始めた太陽で伸びた私の影。
そこでようやく、私は逃走失敗したことを悟りました。
「本気で逃げられると、本気で捕まえてやりたくなるんだよなー」
『...っ』
「由香、顔は動かせるようにしたからこっち向けよ」
『む...っ、むむ無理です...っ』
「...俺、何かした?」
聞いた事のない声色に驚いて、思わず顔を上げてしまいました。
その顔は呟くような声と同じで、いつものような元気がありません。悲しげに眉を潜めていました。
...自分勝手な理由で逃げ出してしまったのが、今更ながら恥ずかしいです。
それは相手から拒絶されてしまったのと、同じなのに。
『...安藤先輩』
「ん、何だ?」
『あの...前に病院で、私をずっと見てたって、話』
「あー...アレな」
『まさか私、本当の事だと思わなくて...っ。その、わたじ...っ』
「なっ、ちょっと待てってば由香!何でいきなり泣くんだよ...っ」
『ぅ"...っ。嬉し、かったんです...っ。』
今の私、相当みっともないと思います。
涙はぼろぼろ止まらないし、しゃくり上げる声のせいで言葉は途切れ途切れです。
それでも、伝えなければならない。
ずっと私を見守っていてくれた安藤先輩に。
『何の見返りもなく、そうやって見守ってくれる存在がいるのは。そんな人がいてくれるんだって、分かっていれば。
どん底に落ちても、きっとそれは、心の支えになるからっ』
「由香...」
『だから、先輩。本当に、ありがとうございまず...っ。...ぐすっ』
「...そっか。そんな風に考えてくれてたんだな。逆に俺の方こそありがとな。勝手に決めてやってた事だから、ちっとウザがられてるかなーって思ってたんだ」
『そんな、こと、』
「でも一つ、お前勘違いしてる。見返りはちゃんと期待してるぜ?」
『へ...っ!?』
自分の意思とは関係なく、急に右手が動き出しました。影というテリトリー内にいる時は、意のままに操れるんですね...安藤先輩のアリスは。
上がった右手はそのまま安藤先輩の手のひらと重なり、指を絡み取られて...。
「由香。お前が笑っていてくれるなら、それで俺は満足」
『...っ』
だからそれが、見返りがないって言っているのにこの人は...っ。
いっそツッコミを入れたかったけど、あんまりにも安藤先輩が嬉しそうに笑うものだから。何も言えませんでした。
何一つ得をしそうもない見返りでも、嬉しそうに笑う先輩を見ていたら...何故か、胸の辺りが締め付けられました。
この感覚って、一体何なんでしょう。私には、分からなかったです。
「んじゃ、そろそろ閉会式に行こうぜ。ちょっと急がないと間に合わないかもな」
『...ところで、安藤先輩はどうしてここに?』
「ん?蜜柑からお前が寮で休んでるって聞いたから」
『それでどうして、初等部教室になるんですか?』
「お前開会式の時、間違えて教室に行ったらしいな?寝ぼけたお前なら、また同じマヌケやるって信じてたから」
どんな理屈ですか、それは。
よく分からない理由でお見通しにされてしまうのは、微妙にやるせなかったです。
『んはっ』
ガバッと起き上がると、パレードの音が遠くから聞こえて来ました。
技術系の音楽祭が、始まったみたいです。
...鳴海先生に無事保護、というか見つけてもらった後。
私、よっぽどやばい顔でもしてたんでしょうか。閉会式までまだ時間があるから、少し休んだ方がいいと鳴海先生に言われたんですよ。
そもそもの原因は誰だと思ってんだと正直思ったんですが。
わざわざ寮まで送ってくれたので、しばしの惰眠...いえ、休息をむさぼらせていただきました。
...。
これで今までの数々の迷惑をチャラにしようって訳じゃないですよね...?あのペテン師。
まぁとりあえず、今からのんびり向かえば閉会式がちょうど始まる頃でしょう。
さようなら。しばしの休息。惰眠をありがとう私のベッドよ。
*
『...やってしまった』
少しの時間眠るというのは中々疲れがとれず、むしろ逆効果な時があります。
今まさにその状態で、はっきりしない頭で歩いていましたら...。はい。
いつものクセで、初等部の教室に来てしまいました。無いわー。佐倉さんでもやりそうもない失敗ですね、これ。
私の失礼さは時にナチュラルです。
というか、誰かにこの失態見られたら恥ずかし過ぎる。教室の中は誰もいやしませんよね?
そう思って教室の扉を開けてみれば、何とまぁ見事に私の期待を裏切る結果が待っていました。
「おー、来た来た由香。やっぱお前って期待を裏切らない奴だなーっ」
『...安藤、先輩』
「お前って寝ぼけてると、とんだおマヌケちゃんだな。開会式でも全く同じ事やらかし...って、おい!?」
三歩後ろに下がってUターン。私こと早瀬は、そのまま逃走しました。
まさかここで、どんな顔して会えばいいか分からない人ナンバー2に出くわすとは思いもしませんでした...っ。
ナンバー1は誰かってそりゃアナタ...。察して下さい!
先輩の顔を見た途端、俺お前の事ずっと見てたんだ発言が...っ。さっきから何度も、頭の中でぐるぐるリピートしてます。
とにかくこのまま巻いてしまえと思った時です。
『んぉっ!?』
体が硬直してしまい、急停止してしまいました。立ち止まるつもりは、全くなかったのに。
まるで自分の体ではなくなってしまったみたいに、指をピクリとも動かせません。
どうして、と混乱する視界に入ったもの。それは傾き始めた太陽で伸びた私の影。
そこでようやく、私は逃走失敗したことを悟りました。
「本気で逃げられると、本気で捕まえてやりたくなるんだよなー」
『...っ』
「由香、顔は動かせるようにしたからこっち向けよ」
『む...っ、むむ無理です...っ』
「...俺、何かした?」
聞いた事のない声色に驚いて、思わず顔を上げてしまいました。
その顔は呟くような声と同じで、いつものような元気がありません。悲しげに眉を潜めていました。
...自分勝手な理由で逃げ出してしまったのが、今更ながら恥ずかしいです。
それは相手から拒絶されてしまったのと、同じなのに。
『...安藤先輩』
「ん、何だ?」
『あの...前に病院で、私をずっと見てたって、話』
「あー...アレな」
『まさか私、本当の事だと思わなくて...っ。その、わたじ...っ』
「なっ、ちょっと待てってば由香!何でいきなり泣くんだよ...っ」
『ぅ"...っ。嬉し、かったんです...っ。』
今の私、相当みっともないと思います。
涙はぼろぼろ止まらないし、しゃくり上げる声のせいで言葉は途切れ途切れです。
それでも、伝えなければならない。
ずっと私を見守っていてくれた安藤先輩に。
『何の見返りもなく、そうやって見守ってくれる存在がいるのは。そんな人がいてくれるんだって、分かっていれば。
どん底に落ちても、きっとそれは、心の支えになるからっ』
「由香...」
『だから、先輩。本当に、ありがとうございまず...っ。...ぐすっ』
「...そっか。そんな風に考えてくれてたんだな。逆に俺の方こそありがとな。勝手に決めてやってた事だから、ちっとウザがられてるかなーって思ってたんだ」
『そんな、こと、』
「でも一つ、お前勘違いしてる。見返りはちゃんと期待してるぜ?」
『へ...っ!?』
自分の意思とは関係なく、急に右手が動き出しました。影というテリトリー内にいる時は、意のままに操れるんですね...安藤先輩のアリスは。
上がった右手はそのまま安藤先輩の手のひらと重なり、指を絡み取られて...。
「由香。お前が笑っていてくれるなら、それで俺は満足」
『...っ』
だからそれが、見返りがないって言っているのにこの人は...っ。
いっそツッコミを入れたかったけど、あんまりにも安藤先輩が嬉しそうに笑うものだから。何も言えませんでした。
何一つ得をしそうもない見返りでも、嬉しそうに笑う先輩を見ていたら...何故か、胸の辺りが締め付けられました。
この感覚って、一体何なんでしょう。私には、分からなかったです。
「んじゃ、そろそろ閉会式に行こうぜ。ちょっと急がないと間に合わないかもな」
『...ところで、安藤先輩はどうしてここに?』
「ん?蜜柑からお前が寮で休んでるって聞いたから」
『それでどうして、初等部教室になるんですか?』
「お前開会式の時、間違えて教室に行ったらしいな?寝ぼけたお前なら、また同じマヌケやるって信じてたから」
どんな理屈ですか、それは。
よく分からない理由でお見通しにされてしまうのは、微妙にやるせなかったです。