act.13
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ご冗談を、と笑い飛ばせたらどんなに良かったか。
岬先生の顔は真剣そのもので、言葉に詰まってしまいました。
けおされてしまい思わず後ずさると、逃がさないとばかりに先生も距離を狭めてきます。その時でした。
『あ...っ!あぁのあのっ、せせ、せんせっ、ちょちょっ、待って!』
「待たない」
『ちっ、ちがっ!岬先生、ドレスのすそ踏んづけ...っ!』
「え...っ、うわっ!?」
『ふぎゃっ!?~~っ!い...ったぁー...っ!』
もうやだこのお約束過ぎる展開。
岬先生がドレス踏んづけて、すべって一緒に見事転倒しましたよ。してやりましたよどやぁ。
私って、一度立ったフラグからは逃れられない星の下で生まれてしまったんですね...。
というか、体が痛い。幸い頭は打たなかったのですが、背中を強打ですよ。
あまりに痛くて思わず痛いと言うのを溜めてしまいましたよ。痛い。
「す、すまない早瀬...」
『い、いえ...こちらこそすみません...。さっさと着替えれば良かったんですけど、なにぶんこの体の大きさのままじゃどうにも出来な...』
顔を上げると、思ったよりも視線が物凄く近くで交わったので。それに驚いた私は、不自然に言葉が途切れてしまいました。
驚いたせいか、それともさっきのキスがうんぬんの話を思い出してしまったせいでしょうか。
心臓が、うるさい。
でもこの音は、本当に私からなんでしょうか。ドキドキしてるのは、実は岬先生の方かもしれない。
どっちなのか分からない程に、今の私達の距離は近い...というより、これはもう体同士がくっついて、ますよね。
だって岬先生の体の重みとか温もりとか、息をしているだとか。全ての感覚が私の体に伝わってくるから。
本当は今すぐこの状態から逃げ出したい。なのに、どうして。
どうして私は、岬先生から目をそらせないでいるの。
「早瀬...」
『...っ!』
大きな手のひらが伸びてきたので、思わずギュッと目を閉じてしまいました。
何をされるのか分からない恐怖感があったけれど、岬先生は私の顔にかかった髪を優しくはらっただけでした。
そのままゆるゆると頬を撫でられたせいで、くすぐったくて思わず身動ぎしてしまいました。
そしてまるで壊れ物でもさわるかのように。けれど戸惑いがあるようなその指で、私の唇に、ふれて。
びっくりして目を開くと、岬先生は悲しげに私を見つめるものだから。
まるで視線に捕らわれたかのように、私はまた目をそらせないでいました。
「早瀬...。俺は、」
「あーっ!出来の良い生徒を持って助かっちゃったよー!おかげで片付けが思ったよりも早く...って。...何やってんの、二人とも」
『...っ!!』
「ごふっ!?」
「ちょっ!?岬先生!?大の大人を蹴り飛ばすとか、由香ちゃんどんな脚力して...って!何処行くの由香ちゃん!?一人じゃ...!」
突然やって来た鳴海先生が何か言っていたけれど、今の私にはそれを気にかける余裕なんてミジンコ程もありません。
鳴海先生に今のを見られてしまった事も。岬先生に事故とはいえ押し倒されてしまい、あんな事に至ってしまったのもっ。
全てが恥ずかしくて、頭の中はもう何もかもがぐちゃぐちゃです...っ!
...鳴海先生が来なかったら、私はどうなってしまったんでしょうか。
ふと、倒れ込む直前の話が頭によみがえりました。
確か、キスがどうとかという話をしていて...。
...。まさか。
岬先生は、本気で、キス...。
『(うあぁあぁぁぁーーっ!!!)』
駄目です無理ですこれ以上言葉にしたら、私の心臓は死んでしまいます!
今だに衣装のドレスを着たままですが、構いやしません。
とにかくこの体の火照りをおさめたくて、私は何処かへと全力疾走するのでした...。その先が逃げ道であると信じて。