act.12
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*
『ひぃや…っ!』
「早瀬っ!ちゃんと足上げて歩いて…っ!」
暗闇では全く目が見えないという、最高にタイミングの悪い暴露話をした後。
現在私こと早瀬由香は、乃木君に支えられながら歩いております。
何も見えない真っ暗闇の中、歩くのは流石におっかないです。
今の私は多分、笑えるぐらいにへっぴり腰だと思います。
というか、端から見たら介護されてるような光景でしょうね。これ。
私が、あんたいつも悪いねぇー…なんて台詞を言ったら完璧じゃないですか。
「早瀬…。ちゃんと歩いて」
『申し訳ございません!承知しましたっ!』
乃木君の声がいつもより、ワントーン低くなりました。
うわ、私が呑気に下らない妄想してたの確実にバレましたねこれ…!
暗くて何にも見えないけれども。オーラが怖いんですってば!
最近の乃木君は、飴と時々鞭…いえ。
これ以上ふざけるのはよしましょう。
…今思ったんですけど。
こんなに大変な羽目になるなら、私は待ってた方が良かったんじゃぁ…?
…。
いや、この考えもよしましょう。
非常に疲れがどっと来てしまう気がする。
…。
いやいや、待てよ?
今からでも、まだ間に合うんじゃないでしょうか。
ここで私がリタイアすればいい話ですし。
『乃木君』
「どうかした?早瀬」
『ちょっと今更だけど。私、ここに残る…よ?』
「……」
私の言葉を聞いた途端、急に乃木君が一時停止してしまいました。
それに習って、私も止まります。今は支えてもらわないと、歩きようがないので。
『えーと…乃木君?』
「早瀬…」
呆れているような、ちょっと怒っているような。
そんな声が聞こえた、次の瞬間でした。
ペチッと、おでこを叩かれました。多分、限りなく手加減はしてくれたのでしょうけど。
ちょっといい音が鳴りました。
『へっ?』
「駄目に決まってるでしょ」
『え…でも乃木君、大変そうだし』
「でもじゃないの」
『だ、だって、うさぎんも…』
「でももだっても無し!」
『ぶにゅっ!?』
またパチンといい音が鳴りました。
今度は乃木君の両手で、私のお顔がサンドイッチ状態です。
否とは言わせないとばかりに、ほっぺたに触れている両手には力が入ってます。
「勿論、うさぎも心配だけど。でもそれよりも、こんな暗い中で早瀬を一人置いてくのが心配なの」
『ふぇ…っ?』
「分かった?」
『ひゃっ、ひゃいっ』
「じゃぁ、行こう」
そう言ってまた私を支えて歩き出すその腕は、何だか力強かったです。
…乃木君の容姿とか、アリス祭でのミュージカルの役柄を見ていると。
つい、乃木君=可愛いっていうイメージを連想しがちでした。
でも今の乃木君は。
私の為に怒ってくれて。私を迷い無く引っ張って行ってくれるその姿は、凛々しい、というか。
まるで、
『王子様みたい…』
「…えっ!?」
『はっ!?』
乃木君のびっくり声を聞いて、逆に私の方が超びっくりですよ!
まままさか、心の声が口に出ちゃってましたかこれ!?
『そそそうだっ、乃木君!ここまで来れば、きっと出口は近いですよ!
佐倉さん達も心配だし、い急ぎましょーかっ!?』
「そ、そうだね!うんっ。そうしようか!」
いやお前、鳥目なんだから何処まで来たか分かる訳ないだろ。
そんな冷静な突っ込みを入れてくれる人は、いる筈もなく。
やたら気恥ずかしくなってしまった空気を誤魔化すかのように、私達は先を急ぐのでした…。