A tesoro mio
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入院して早4日。医務室での生活は意外と快適だった。
「今のうちにお風呂行きます?」
「うん」
昨日の昼の検温後からようやく入浴許可が下りた。1Fの此処からわざわざ3Fの自室まで戻るのは億劫なので、入院中はこの医務室からドア一枚で仕切られているルイの部屋の風呂を借りる事にした。本来は仮眠室だった所を彼女は自分の私室として使用しているのだ。
患者専用のシャワー室も備え付けてはあるが、幾ら清掃を行っているとはいえどんな病人が使用したか知れぬ浴室は何と無く抵抗があったので。
「ねぇ、それ何の匂い?」
シャワーを済ませ再度点滴の管を付けられながらふと尋ねてみる。近付くとはっきり香る彼女の匂い。ふわり鼻腔を擽る清く柔らかな、えも言われぬ香り。
「?何か匂います?」
きょとんと小首を傾げるルイ。
「君の匂い」
「私の?」
「ボディソープもシャンプーも同じの使ったよ。けど君みたいな匂いはしない。何か付けてる?」
「特には…」
「ちょっと失礼」
匂いの元が気になって仕方が無く彼女の腕に顔を寄せ引き白衣を嗅いでみる。違う、これでもない。一体何なのだろう。
「それは…多分体臭としか……私臭いです?」
一歩後ずさったルイに臭くないとだけ返してベッドに寝転がる。
体臭か、成程…不安げに自らをくんくん嗅ぎ出したルイを見上げつつ脳が勝手に働き出す。微かに漂うだけのあの脳髄に染み込む香を思い切り吸い込めたらどれ程の快楽だろう。今すぐ目の前の白い白い首筋に顔を埋めてみたい衝動に駆られるけれど、流石にそれは憚られて。
「残念だな」
「はい?」
「何も」
「?」
未だ腕の関節部分を匂い首を捻りながら踵を返したルイの後ろ姿に思う。結局六道骸とはどんな関係なのだろうと。
リボーンの手前単なる顔見知りだと言っていたが、あの親密さでよもやそれだけでは無かろう。何かもっと特別な、例えば過去に恋人関係にあったとか、実は現在正にそうであるとか。でなくばあの骸があんな風に柔和に接する筈がない。
「……」
奴はあの香りを知っているのだろうか。あの華奢な身体を覆い隠す白衣もワンピースも取り去り、露わになった真白い胸に顔を沈め──
ハッと我に返る。何を考えているのだ。匂いで人を惑わすなんてとんでもない女だと慌てて思考の矛先を変える。僅かに、だが確かに感じた苛立ちは気付かなかった振りをして。
そんな時だったから余計だった。ノックと共に響いた声に、耳元で黒板を引っ掛かれたかの如き不快感が生じたのは。
「ルイ、忙しいですか?」
六道骸、視界に入れるのも忌々しい男の登場だ。