A tesoro mio
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すらりとした長身細身。驚く程長い脚。トップモデルも慄き道を譲るだろう抜群のスタイルに、しっかりと男性のそれで有りながら何処か女性的な美すら感じさせる流麗な顔立ち。
赤と青の不思議なオッドアイを持つ霧の守護者は、その頭頂部の不思議な形状さえも魅力に変える、類い稀なると表現して良い程の美貌の青年だった。
「む、骸…」
あまりのタイミングで現れた男に綱吉が二の句を継げずに居る内に、彼はクフフと奇妙な笑いを漏らしリボーンへと視線を遣る。
「その胡散臭い奴を守護者にまで仕立て上げたのは何処のどちら様でしたかねぇ」
病み上がりに扱き使っておきながら。
穏やかな声音にふんだんに盛り込まれる嫌味をリボーンがさらりと流すのは平常通り。
「ああ、多分に申し訳ねぇと思ってる。疲れてるとこ悪かったな。だがお前だって可愛い教え子がお前みたいなのと繋がってたら嫌だろーが」
「まぁ嫌ですね」
嫌なんかい。
スマートな突っ込みは心の中に留めて綱吉は骸に礼を述べるべく椅子から立ち上がる。彼は確かに冷酷狡猾な人間ではあるけれど、何だかんだで優しさも持ち合わせている。何も言わずとも綱吉の状況を見かねて手を貸してくれるなど日常茶飯事と化した事だ。
ボンゴレ10代目を襲名する少し前からだったか、この危険な男の態度が徐々に柔らかくなって来たと感じる様になったのは。それは綱吉の肉体の乗っ取り計画が月日と共に面倒になって来たのだろうと綱吉は軽く考えていたが、実はそうではない。
凄惨な生い立ち故にこの世に失望し切っていた骸が沢田綱吉という人間を知るにつれ、彼の愚かなまでに邪気の無い様と本人のキャパシティを超えて全てを包み込もうとする途方の無い優しさに、いつしか敵意も呆れも通り越して憐れみすら湧いて来てしまったのだ。
彼がてんでみっともなく馬鹿げた姿を晒す度、こんな男に尖って接する自分の方が愚かしいのでは…もう少しマフィアとして正しく憎める相手になっては貰えないものか…という、ある種のやるせなさが募って。
そのような思い、骸本人は決して口にする事は無いけれど。
「ごめんな骸。報告は口頭でいいから暫く休暇取ってゆっくり休んで」
誠意を込めた言葉を贈りながらふと思う。
「けどお前随分早かったよな。幾らお前でももう少しかかると思ってたけど…」
「そうですか?」
何でも無い事の様に言い骸が向き直った先には結局何をしに来たのか不明なままのルイ。
「お久しぶりです、ルイ」
君が赴任して来たと聞いて急いで仕事終わらせて来ましたよと、先日リボーンがそうした様に彼女の肩を抱き寄せ頬に軽く口付ける。
綱吉は再びリボーンの眉がピクリと動き、今度はこめかみに青筋まで浮かび上がるのを目撃してしまった。薄々感じてはいたがどうやらリボーン、ルイに対してかなり過保護な模様。幼少期に手ずから育てたからか、案外年頃の娘を持った父親のような感覚なのかも知れない。元来女性を大事に扱う男ではあるし。
ルイはそんなリボーンに気付いているのかいないのか、同じ様にキスを返すと小首を傾げながら問い掛ける。
「それはどうも。けどどうして私が来た事を?」
「君が来た後ロシアに入国して来た幹部とたまたますれ違いましてね。彼から」
「そう。タイミング良いね」
にこやかに会話する親密そうな二人の関係は気になるけれど、ルイが嫌がっている以上は骸にも聞かない方が良さそうだ。
ふと室内を見渡すとクロームは骸の向かい側のソファの隅にちょこんと腰掛けていたしその隣では雲雀がスペースをほぼ独占する形で寝転がり目を閉じている。皆疲れているのだ。
「あの、みんな本当にお疲れ様でした。報告お願いします。終わったらゆっくり休んで下さい」
目を閉じていただけで眠ってはいなかったのか雲雀がむくりと上体を起こし一度ぐっと伸びをする。何故かしなやかな黒猫の姿が綱吉の頭に浮かんだ。気まぐれで人に懐かない野良猫だ。
「じゃあ僕からさせて貰うよ。眠くて堪らない」
「分かりました。あ、その前に。ルイちゃん何か用だっけ?」
「あ、忙しい時にごめんね。時間空いたからちょっと外出たいなって」
特に問題も無いので快く頷いて、退室する彼女を視線で見送ろうとした。が。
「ルイ、待って」
引き止めるクロームの声。
「何?」
「雲雀さん、報告は私がする。腕診て貰わないと…」
クロームの言葉にあぁ忘れてたと雲雀。同時に綱吉の背を走るヒヤリとしたもの。
「怪我してるんですか!?」
「別に大した事ない。君、時間いいの?」
「大丈夫ですよ」
そうして出て行く雲雀とルイを今度こそ見送り、霧の二人からの報告を聞く為に目線を戻した。