A tesoro mio
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京子達が帰国して早々の3月某日。
「う”お”お”お”い”!」
綱吉とその守護者、CEDEF、暗殺部隊ヴァリアー、その他監査役に調査室から科学研究部、技術開発部などボンゴレ各機関を代表する幹部連と錚々たる顔触れの揃った会議室にて、スクアーロの空気を切り裂く怒声が防弾窓ガラスを震わせる。
「沢田ぁ!揃ったんならさっさと始めろぉ!ボスを待たせんじゃねぇ!!」
「ヒッ!はいぃーーーっっ!!」
来月末に行われるシチリア・コミッションに先駆けた、ボンゴレ内での意見を纏める重鎮会議が始まるのだ。
竦み上がる綱吉に傲慢に鼻を鳴らすXANXUS、監査役は眉を顰め入江正一は腹を抑える。其々が其々の反応を示す中、年に一度の重々しい会議が幕を開けた。進行役はリボーン。
「じゃ左端から頼む。まずは技術開発部からだな」
「え!?僕から…?わ、分かりましたよ。うっお腹痛い…」
「早くしろっつってんだろがぁ!!」
「ど、怒鳴らないでくれよ…!は、はい!えっとまず──…」
「へぇ~…じゃあ監査役にいじめられたんだ~」
会議終了後の午後八時過ぎ、キリキリ痛む胃を抱えた綱吉と正一は揃って第一医務室を訪れていた。にこにこ笑顔で胃薬とホットミルクを出してくれたルイは女神か何かか。
「そうなんだ。屋敷のリフォーム代金が高過ぎるってトコから始まって根掘り葉掘りネチネチネチネチ…全部オレの不始末みたいに言ってさ…オレ悪くないのに…」
ぶちぶち零れる愚痴にルイは思わず苦笑い。概ねの原因となった男達の様子など聞かなくても想像は付く。綱吉がどう場を切り抜けるのか薄笑いで観察している骸、しれっとそっぽを向いている雲雀、という所か。
一方の正一はごろりと患者用ベッドに寝転がり深呼吸を繰り返している。彼の胃が弱いのは常ではあるけれど今日の様子はちょっと酷い。
「はぁ~これで後一年はヴァリアーに会わずに済む。怖かったぁ…」
「成程ねぇ」
正一はボンゴレに籍を置く身と言えど根っこの部分は一般的感覚が強い人間。相当の理由でも無ければあの血の気の多い集団とは関わりたくないのだろう。当然だ。
ヴァリアーと言えば、ルイは会議前に何故か出席の必要のない金色の頭を確認していた。ベルフェゴールの事、面白半分で着いて来たのだと思われる。
お疲れ様、労りを掌に込めて正一の腹をさすってやっていると、
ガァンッ!!
「!?」
突如入り口のドアが吹っ飛び大きな黒い物体と共に凄まじい勢いで床に打ち付けられる。
「ぎゃっ!?ドア!?と、スクアーロ!!?」
綱吉の叫び声と黒い物体──スクアーロが身体を起こすのはほぼ同時。幾度か咳込みテメェ、悪態を吐きながらポッカリ空いた医務室の入り口を睨め付ける。そこに佇むは。
「ドカスが…」
憤怒のオーラを纏った暗殺部隊のボス。
「な、何なんだよもう~…」
泣きそうに顔を歪める正一を扉一枚で区切られた私室に退避させルイは吹き飛ばされたドアを確認する。幸い外れただけで壊れてはいないようだ。
「テメェいきなり殴るこたねぇだろがぁ!つーかこんなトコにいやがったのか沢田ぁ!」
「ヒッ!オレ!?」
「そもそもテメェがメシの手配してねぇのが問題なんだぁ!」
「はぁー!?」
会議後の夕食は事前に獄寺が各機関へ問い合わせを行っていた。綱吉の目の前で、直接通話でのやり取りでだ。ヴァリアー側からの返事はすぐに帰るから要らない、というものだった筈。手違いなど有り得ない。
二の句が告げずにぱくぱく口を開けたり閉じたりしているとひょこり現れる幾人かのシルエット。
「おやおや、騒がしいですね」
「楽しそうだね。まぜてよ」
「ししっ。 センパイみっともね~」
揉め事の匂いを敏感に嗅ぎ付け集結する厄介な面々。骸に雲雀に金髪の眩しいベルフェゴール。
面倒臭い人達集まって来たー!腹の中で絶叫する綱吉の視界に、外れたドアを持ち上げ然るべき位置に戻そうと入り口へ向かうルイが映る。
「おい。邪魔だ」
嵌めようとしたドアに目前を遮られたXANXUSが悪魔すら道を譲る眼差しでルイをギロリ睨んだ。ちょっと待ってと作業を続けるルイ。──これはまずい。咄嗟に割って入るより先に
ガシャン!
彼の逞しい腕が嵌り掛けたドアを薙ぎ払いルイの白衣の襟元を掴み上げた。
「かっ消すぞドカスが」
彼特有の激しい憤怒の波動が室内に充満し綱吉の毛穴という毛穴から汗が吹き出す。いつまで経っても慣れぬ、他の追随を許さぬ威圧感。暗殺部隊ボスのボスたる所以。
しかしそれを真っ向から受けて尚もルイに怯えの色は見られない。氷点下の眼で相対する男を鋭く見据えて。
「ここ私の場所だから」
立ち昇る絶対零度の殺気。
「荒らす人は出入り禁止。さようなら」
「ち、ちょっと…」
なんだこれは。助けに入る筈が横槍御免の空気ではないか。というかこれはルイ?いつもにこにこ笑っている女性が今目の前で禍々しい殺気を放つ女と同じ人?信じられない、信じたくない。
暫しの沈黙、響く低い声。
「何故貴様がここに居るのかは興味ねぇがボンゴレに属する以上この俺に楯突くんじゃねぇ。立場を弁えろ」
「立場」
顎をしゃくったせせら嗤いにいっそ清々しい程の侮蔑を乗せて。
「勘違い最高。私はどこに居たってフリーエージェントなの。…放せ」
バシッとXANXUSの腕を振り払う。おーおー相変わらず…。綱吉の傍、ベルフェゴールの茶化しが聞こえる。雲雀がニタリと笑い骸は頭痛がすると言わんばかりに額を抑えた。瞬間。
ガキッ!
耳をつんざく金属音が空間を切り裂きオレンジの炎が燃え上がる。ギリギリと競り合うXの文字の刻まれた銃と銀のメス。片や全てを飲み込み焼き尽くす灼熱を思わせる凄まじい橙、片や太陽をも凍て付かせる冷気を孕んだ橙。両者共に素晴らしく純度の高い大空の炎、だがその性質は全く違うもののように見えた。
「ちょ、」
双方引く気は皆無、だが何としても止めねば。“ここ私の場所だから”その表現の通り、契約上医務室の全権限はルイに有る。が、ボスとして流石にこの状況は見過ごすわけには行かない。
ポケットに忍ばせた死ぬ気弾を飲もうとして、
「そこまでだぞ」
割り込んだ鶴の一声。言葉だけでこの一触即発を止められるのは──