A tesoro mio
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高い天井、大きなガラス張りの開放的な空間。本部上層階に設置されたボンゴレの広く美しい庭園を見渡せるガーデンビューのリストランテは、昼食時には未だ少し早いものの既に人で賑わっている。
「おーツナ!」
「10代目!」
数時間の睡眠後昼食を摂ろうと向かったそこで届いた聞き慣れた声。
「山本!獄寺くん!」
クラシカルなテーブルを囲んで座っている綱吉の旧友二人。沢山の構成員達で混雑する中でも彼らは良く目立つ。
すらりと伸びた長身にしっかりと筋肉のついた均整のとれた体躯。短い黒髪に陽に焼けた肌が眩しい山本武は黒いスーツに身を包んでも尚爽やかさを損なう事は無い。顎に引かれた一筋の傷跡が端正な顔立ちをより精悍に見せる。
向かいに座る獄寺隼人は山本程の背丈は無く幾分華奢には見えるものの、着崩したスーツの下には頑健な筋肉がある事を綱吉は知っている。学生時代よりは短くなった銀色の髪に白く滑らかな肌、澄んだ翡翠の瞳。当時から美しいと評判だった相貌は幼さが抜け、匂いたつ様な大人の男へと変貌し掛かっている。
見た目も中身も全くタイプの違う二人ではあるが歩けば女性が振り返る所は全く同じで、今も正にちらりちらりとこちらに目を向け何やら囁き合う黄色い声が聞こえてくる程。
「リボーンに聞いたぜ。新しいドクター来るんだってな」
身を乗り出しどんな奴なんだろうなと楽しそうな山本とは対照的に、獄寺は苦虫を噛み潰したような顔。
「あの女たらし…!何度繰り返しゃ気が済むんすかね!?」
噛み付きそうな勢いで声を荒げる。
元弟子として、誰よりトライデント・シャマルを尊敬している彼には何とも遣る瀬無い部分もあるのだろう。彼もまた『色々と割り切る』には潔癖過ぎる性分なのだ。
そういった意味では、向かいに座る山本は随分と受け流す事に長けている。受け流す、というよりはその人のそのままを受け入れるというべきか。
山本というのは、何かと器用な男なのだ。
「ははっオッサンいい歳して本当ブレねーのな。てか獄寺、お前の兄弟弟子って事だろ?面識無いのか?」
「聞いた事もねぇよ。碌でもねぇ奴じゃねーと良いが…男は診ねぇとか言いやがったら叩き出すからな」
不安を感じる場所は皆同じな模様。綱吉の顔が苦笑いに歪んだ時、ブブブ…手に持っていた端末から小さなバイブレーションが響く。リボーンからの電話。もう30分もせず着くと相手から連絡が入ったらしい。
「そっか、どうしよっか…とりあえずその人に迎えやってから俺達は会議室集合で…うん、来れる人だけでも集めて──」
紹介は早々に済ませておきたい。通話がてらチラリ目配せをすると察した獄寺がすぐに端末を取り出し連絡を回す体勢に入る。阿吽の呼吸。優秀な右腕の相変わらずスムーズな対応に心地良さを感じながら用件のみの短い話を終えた。
それからおよそ20分、会議室には十数名のファミリーが集まっていた。そこにはリボーンに笹川了平の姿も。
「沢田、極限に久しぶりだな!」
色素の薄い短髪にがっちりとした身体つき。背丈も長身の部類に入る晴れの守護者がそれでも大して厳つく見えないのは多分にその顔立ちあっての事だろう。成長しても変わらぬ目尻の下がった丸い目、心持ち柔らかな線を描く輪郭。守護者の中で一番愛らしい顔の人間といえば間違い無く彼だと綱吉は密かに思っている。
「お久しぶりですお兄さん。腕はどうですか?」
先の抗争で酷く負傷していた左腕を見遣ると、彼は実に晴れの守護者らしい快活さで豪快に笑って見せた。
「ああもうバッチリだ!Dr.シャマルのお陰だな。後任というのがどんな男なのか極限に楽しみだぞ」
パンッ!乾いた音を響かせ拳と手を打ち合わせる了平。少し離れた所でデスクに腰掛けていたリボーンが振り向きざま意味深に口角を上げたのが横目に入り、何だよ。言おうとした所でガチャリとドアが開いた。