A tesoro mio
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「えーツナまで。ひどいなぁ」
深夜一時半。呆れ半分面白半分に呟くルイに、骸が背負っていた綱吉の身体をベッドに降ろしながらすみませんねとぼやく。
「さて、これで全員ですね…全く情け無い」
第一医務室のベッドに横たえられた五名の男達。室内にはアルコールの匂いが充満している。
結局あの後霧の二人を除く全ての守護者と綱吉はべろべろに酔い潰れ眠りこけてしまい、何かあったら面倒だというリボーンの指示で此処に運び込まれたのだ。
「ね、ツナすごい幸せそうな顔してる。ふふっ可愛い〜」
ふにゃりと口元を緩めたまま眠っている綱吉の柔らかな頬をツンツンつつきながらルイがけらけら笑う。きっととても楽しかったのだろう。それはそれは良い夢をみているに違い無い。
隣のベッドでは獄寺がぐうぐう鼾をかき付き添っているハルがぷりぷり怒っている。
「もぉ、獄寺さんもツナさんもバカッ!明日はお出掛けって言ってたのに…」
「仕方ないよハルちゃん、きっと気が緩んじゃったんだよ。忙しかったみたいだし…ツッ君も、お兄ちゃんもみんな…」
労わるような、心配そうな。酔っ払い達を見渡す京子の優しげな横顔を見つめるルイ。パーティーの最中軽く紹介して貰った彼女は綱吉の想い人であり了平の実妹でもあるらしい。
おっオレの友達の笹川京子ちゃん!
挙動不審気味に紹介してくれた綱吉を思い出しククッと喉が鳴りそうになるのを慌てて堪える。ディーノがこっそり教えてくれたところに寄ると、綱吉は彼女を中学生の頃からずっと好きなのだとか。
もう一人膨れっ面の三浦ハルは綱吉に心底惚れ抜いていたけれど、今は彼の想いを察したのか、それでも変わらず良き友人として付き合っている模様。彼らは中々楽しい学生時代を送っていたようだ。
「忙しかったとはいえ久しぶりに会う友人との約束を破るまで酔い潰れるのはどうかと思いますがね」
面倒臭さを前面に押し出した表情で空いたベッドに腰を掛ける骸。何故僕が酔っ払いの後始末など。その顔が如実にそう語っている。
「そうですよね骸さん!ホントにもう男の人って…というかヒバリさんでも酔っ払っちゃったりするんですね…意外です」
何か恐ろしいものを見るかのようなハルの視線の先には泥のように眠りこける雲雀。何時もの鋭さは何処へやら、その表情は邪気が無くひどく幼い。
おぶってきた骸が憎しみを込め乱雑にベッドへ放り投げたせいで何も掛かっていない彼にそっと毛布を掛けてあげながら京子が微笑む。
「なんか可愛いね。こんなヒバリさんって貴重かも」
「か、可愛い…ですか?はひ…」
うんざりと骸がルイに目を向ける。
「本気のバトルを賭けてアルコバレーノと勝負したらしいですよ。この通り惨敗ですが。みっともない事この上無い」
「リボーンと?飲み比べ?」
いよいよ驚いたような可笑しそうなルイ。彼女の知るリボーンはとんでもない酒豪、あんな化物に勝てる訳が無い。
しかしふと思う。先程一瞬姿を見せたリボーン、何となく足元が覚束ない様子だった。先入観から気のにも止めなかったが、実はリボーン少し酔っていたのではないか。だとすれば…
「雲雀さん、やばくない?」
一体どれ程飲んだのか。呑気に笑っている場合ではない。足早に雲雀の枕元へ歩み寄り呼び掛ける。
「雲雀さん、雲雀さん」
うんともすんとも返っては来ない。顔色は特別に悪くはないがどうだろう。
「雲雀さん!生きてますー?」
やや声量を上げてみると、僅かに眉間に皺が寄りゆっくりと不機嫌そうに瞼が持ち上げられた。反応があるならば問題無かろう。分かれば今度は笑いが込み上げて来た。
「どんだけ飲んだんです?リボーン酔わせるって相当でしょ」
あなたもザルなの?言い掛けた言葉は不意に伸びてきた手に遮られる。ぐいっと後頭部を押さえられ彼の頭の隣に突っ伏せる形になった。むぐっと変な声が漏れる。何事だ。身動きが取れず、離してとシーツに埋まった声で訴えるが返事は無い。どうにか首を上向かせ視線で助けを求めるもその場の誰もがぽかんとするばかり。
すぅ、すぐ隣で雲雀が大きく息を吸い込んだ。そうしたら
「いっ!?」
噛み付かれた!首筋を思い切りがぶりと!この男一体何をしているのだろう!突然の奇行に思考が追い付く間も無く熱い舌の感触にぞくりと背筋が泡立つ。
「ちょ、雲雀さ…」
「何をしているんです君は!」
我に返った骸が慌てて引き剝がしに掛かると頭を押さえていた酔っ払いの手は存外呆気無く払われ、ぽふっと力無くシーツに投げ出される。
「何なの!」
声を張り上げるも当の雲雀はすやすやと穏やかな寝息を立て眠っている。
「…食料と間違えられたのでは?」
同情のような笑いを堪えているような骸の背後で女性陣がプフッと吹き出したのが聞こえて来た。
「さぁ、この酔っ払い達は僕達が見ておきますからあなた達はもう部屋に帰ると良い。明日は出掛けるんでしょう──彼らが起きられればですが」
折角イタリアに来たのだから滞在中は観光をするのだと意気込んでいた二人に声を掛け骸は部屋中の窓という窓を開けに掛かる。換気をしないとこの部屋は酒臭くて堪らないのだ。二つ置かれている空気清浄機でも追い付かない位には。
僕達が、という事はどうやら骸は一晩ルイを手伝ってくれる気らしい。いいの?問えば君一人では手に余るでしょうと。
「酔っ払いは何するか分かりませんからねぇ。先程のように」
苦々し気に雲雀を一瞥し、面倒が起こる前にシャワー借りますよとルイの部屋に入って行った。面倒、つまり嘔吐。眠る男達のベッドには既に使い捨ての防水シートを敷き枕元にはガーグルを置いて準備は万端だが、手間には違いない。
「じゃあルイ先生、お願いしますね」
少し申し訳無さそうな顔で退室するハルと京子を笑顔で見送ると改めて酔っ払い達を眺めてみる。
アルコールが得意で無いルイには倒れるまで飲む彼らの心境は理解出来ないけれど、綱吉の成人記念日である今日はきっと特別に楽しかったのだろう。無垢な顔で眠る男達に笑みが溢れる。
学校に行かなかったルイには旧友と呼べる存在が居ない。勿論行こうと思えば行かせて貰えたのだけれど、そうしない人生を選択したのは自らの意志で、それを後悔した事は一度も無い。ただ、ほんの少しだけ羨ましいと。彼らを繋ぐ絆に触れた今、そんな風に感じてしまった。